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「ミカルアさん、似合ってるでしょ?」
私はポーズを決めてみてミカルアさんを覗き込む。
届いた制服を着るのは2回目だ。
1度目は届いた直後、サイズ確認の時だ。
「えぇ、そうですね。ちなみに急がないと遅刻しますよ。」
美少女がこんなにも可愛く制服に身を包んでいると言うのに、ミカルアさんは無愛想に返事する。
「私は遅刻じゃないよ?遅刻するのはミカルアさん。」
1週間ほどともに生活したからか、初日に比べて大分打ち解けた。
ミカルアさんが持ってくれてるかばんを手にとって玄関を出た。
ローファーか、スニーカーか。
迷ってローファーにしたが、正解だった。
チャコールグレーがワインレッドのスカートに映えた。
「スニーカーじゃなくてよかったんですか。」
「可愛いほうが良いじゃないですか!」
ミカルアさんの疑問に、浮かれて答えるとため息をつかれた。
返答はなく、無言で運転を開始したことが、呆れを雄弁に語っていた。
「着きました、スマホを止めなさい。」
ミカルアさんの声で頭を上げる。
早速、こちらの世界のスマホにもハマっていた。
SNSもゲームもある。ネット小説もある。
極楽という言葉があまりにも適切だ。
スマホを鞄に入れて降りると、慌てて付いていく。
廊下を通り、職員室で用事を済ませると、教室に向かう。
ミカルアさんの教室にして貰えたおかげで不安も少ない。
教室の扉の前で待機する。
少ししてミカルアさんに呼ばれて教室に入った。
「はじめまして、リリ・ヴァーグです。よろしくおねがいします。」
極めて簡素に自己紹介すると、いらない気を利かせたミカルアさんが質問コーナーを開催する。
「なにか聞きたいことがある方いますか?」
「どうしてミカルア先生と同じ名字なんですか?」
ミカルアさんの一言に間髪入れずに質問した子がいた。
聞き方にわずかに棘を感じたのでミカルアさんファンクラブの方かもしれない。
どうやらミカルアさんは人気がすごいようで、女生徒の恋バナではたいてい名前が出ているようだ。
因みにこれは盗み聞きから入手した情報だ。
「答えられないのー!?」
女の子がキャーキャーと騒ぐ。
なにか勘違いされそうだ。
つい脳内にあった意識を浮上させて質問に答える。
「あぁ、私もともと離れたところで名字を持たず生活していて、ミカルアさんに引き取られたので。そういうわけで、ミカルアさんの名字を受けています。」
淡々とヘイトが向かない言葉選びを心がけて離す。
すると場の空気が静まり返った。
どうやらある意味は成功したみたいだった。
ミカルアさんが仕切り直したことで再びポツポツと質問が出てくる。
好きな食べ物、趣味など・・・当たり障りのないことを答えていく。
5分ほどの時間が経つと質問コーナーは切り上げられた。
どうやらこれからは授業みたいで、ミカルア先生は切り上げていった。
私は説明を受けた席に座る。
教材を取り出しながら、隣の人に話しかけてみた。
「おはよう。リリっていうんだけど、きみは何ていうの?」
「メーデル・ノルディス。リリさん、これから2年間よろしくね。」
2年間、予想外の言葉に思わず復唱する。
メーデルさんも私の反応に驚いて声を上げた。
しばらくの沈黙を破るように私は質問する。
「1年じゃないんですか?」
「この学校のこと、あんまり知らない感じか。最初に成績確認したらそれに依ってクラスを振り分けられて、卒業するまで過ごすんだよ。」
「ちなみにね?君は成績が学年1の僕より席が右だから、今んとこ君が成績1位かな。」
と、メーデルさんは爆弾発言を仕込んできた。
確かに心当たりはある。
最初数日でこの世界の一般教養と歴史と魔法についてを詰め込んだのだ。
テストは計算教科は思ったより簡単なのもあって、詰まることなく解けてしまった。
というより、ミカルアさんは実力確認みたいな雰囲気でテストを渡してきたというのに、実際は超重要だったじゃないか。
「気になることあったら言ってね。教えれることは教えるし。」
これはなんと心強い。
全力でお礼を言って嬉しさを表現する。
よし、頑張るぞ!と活を入れようとする。
と、隣からそういえば、と声が聞こえてきた。
「君の金色?檸檬みたいな色の瞳珍らしいね。どこの人?」
思わずギクッとなる一言が届く。
自分にもわからない且、聞かれちゃ不味い質問だ。
「瞳?私も不思議だなって思ってる。あと記憶が所々失ってるみたいでどこ出身かとか分からないの。」
濁しながら説明した。
今色々試したり知識を蓄えているんだと誤魔化す。
それにすべてが嘘なわけではないのだ。
ただ、後でミカルアさんに情報共有しとかなければ、と脳にメモする。
「ふーん、なんか過去にもそんな瞳の人いたみたいな話聞いたことある。うーん、何だっけ?」
まさか天外から来たと言う古人の話かと、最悪の想像をする。
「まぁでも見たことないだけの可能性もあるもんね。有り得なくはない瞳だし気の所為ってことにしとくね。」
そう言われて思わず息をつく。
しかしそれも束の間、ドキッとする一言を言われた。
「君は確かに知らないんだろうけど焦ってるよ」、と小さく囁かれる。
ヒッ、と声が漏れてしまった。
しかし先生の号令により、言及は出来なかった。




