56
あと最低でも30分は座って待たなければいけない。
というのに、もうすぐ観測者はこちらに来そうだった。
息を潜めて、様子を伺う。
ここを通り過ぎてくれなければ、30分以上もかかる待ち時間のうちに気づかれてしまう。
そう思っていると、観測者はこちらに曲がってきた。
迷いなどなさそうで、初めから気づいていそうだった。
カルキュルコアを壊した時点で、ある程度は通達でも行くのだろうか。
と、想像する時間もなく、目が合った。
こっちに走ってくるのを見て、武器を構える。
椅子を立ち上がって、目の前の観測者に立ち向かうはめになってしまった。
「我は観戦しておるぞ〜」
そうコンビニに行く感覚で言ってきたノヴェーヌを、軽く睨みながら法紋も準備する。
操縦席に座るのが間に合うようにしなければいけない。
向こうは法紋は一切使わず魔杖を使って戦うようで、直接魔杖から光が舞ってこちらに迫ってくる。
奇妙な細かい動きに、追尾してくる光は厄介だった。
合間を縫って、観測者に近づいては魔槍で突く、を繰り返す。
少しずつ動きが鈍くなることから、辛うじて攻撃は通じている、ということだけわかる。
ただ、この調子じゃあ、時間に間に合わない。
法紋でも戦うことにした。
魔槍は一旦しまっておいた。
一通りの法紋を試して、炎魔法に弱いことはわかっている。
相手はシングルタスクなのは、攻撃する瞬間は動かない。
つまり、その瞬間に、炎魔法を相手に放つ。
これを繰り返していく。
しかし、私も相手の攻撃を全部避けきることもできなくて辛くなってきた。
向こうがそれを見抜いたようで、拘束魔法を放とうとしてきた。
咄嗟に避けるのを失敗してしまい、謎の結界に縛られてしまった。
その拘束のおかげで、私も今、炎の仕切りで拘束することを思いついたのだが。
ひとまずは抜け出す方法を考えなければいけない。
結界はそれなりの強度で指で押しても、凹みやしない。
そして、槍で突いてもそこまで意味がない。
つまりに、なんらかの法紋で逃げ出すしかないのだろう。
磁石の棒を組み立てる玩具のような枠組みになっており、表面は薄い膜で覆われているが、膜は破れそうにはない。
つまり、棒の部分をどうにかするのだろうが……
「痛い。これ外からの攻撃は届くやんけ」
悪態を突きながら、ひとまずは材質解析の法紋を使ってみる。
と、材質の解析は失敗した。
万事休す、とでも言って降参したいが、現実問題無理だ。
ひとまず、拘束範囲内でなんとなく避けながら、棒の部分を触ったり、色々な角度から押して力を加えたりしてみる。
「ふぐっ、いたぁ…。ちょっと、あと10分しかない気がする!!」
視界の端に映った文字に焦る。
最後のダウンロードと思わしきものが、もうあと17%しか残っていない。
再び、目の前の拘束装置に向き直る。
棒自体は完璧で私の能力だと壊せないだろう。
しかし、一部、結界の下の方に歪みを感じた。
ここからならどうにかできるかもしれない。
しかし、目の前では、もっと大きな形態になろうとする観測者が見える。
触る限りだが、多分、強い勢いがあれば崩落しそうだ。
しかし、強い衝撃を与えても、それは結界全体に当たるため反発してしまい、脱出は難しいだろう。
頭を働かせながら、一旦は法紋でできる限りの攻撃をする。
また1%が、残りのロード割合が減っている。
炎や水は論外。氷や電気も無関係で、物理もダメそうだった。
反転と…風は割とあり得そうだ。
ひとまず、反転属性の法紋を展開してみた。
それを結界の歪みに適用してみた、が、前進も悪化もない。
ただ、また、相手の巨大変身化が進んでいるだけだ。
今度こそ、と風属性魔法を使ってみる。
あと14%、2%も一気に減っていること、気付いて、慌てて法紋を放った。
無事に脱出は出来た。
しかし、相手は完全に巨大化している。
大きな手をこっちに払ってくる。
完全な物理攻撃だった。




