50
引きこもり生活を堪能し、2日間寝続けていると、3日目ノックがなった。
「…はい」
「我じゃが?お主、端末の通知が凄いことになっておるぞ。既読無視、とやら言われているが。」
「あんたが勝手に既読つけるから。貸して」
スマホを受け取って、スマホを開く。
連絡を交換しているのは、せいぜいエルヴィアとメーデルくらいだが…。
と、スマホを見ると、20件ちょうどのメッセージが溜まっている。
最初の方は、大丈夫かという心配。
後半は既読無視への嫌味。
エルヴィアとメーデルのメッセージはほぼ同じだった。
ただ、メーデルはアリアーコルのちょっとした話を教えてくれていた。
最後の悪あがきにと、リアリィスが他の貴族の嫁にされたそうだ。
ピンクの瞳で有名なミアルディン家の若い当主の下に置かれたらしく、SMの趣味を持つ彼の夜の付き合いをしなければならない考えると、可哀想だった。
パルオピアが総じて逃げ延びて、田舎で使用人一人と生活しているらしい。
「ダメじゃん。」
「どうしたのだ?」
「なんでもない」
へー、という簡素な返信を見たメーデルが電話をかけてきた。
びっくりして電話を取ってしまった。
「ね、カルキュルコアって知ってる?まぁ、知らなくてもいいけど。僕は君にコアから選ばれてるって伝えたけど、君がすっごいショックを受けたおかげで今コアの動きが活発になってる。」
「で、そんだけの感情でここまで動くなら…君さ、自分にしか見えない存在とか、見たりしたでしょ?今一緒にいるとか」
メーデルさんが淡々と、しかし確実に私を追い詰めていた。
ノヴェーヌは嬉しそうに笑って感心している。
「情報だけでそこまで読み解くとは素晴らしい。」
へー、と感心を漏らしそうになるのを堪え、メーデルには素直に白状する。
答えを既に知っているか勝手に導き出しそうなので諦めることにした。
「カルキュルコアは知ってるよ。コアが活発なのはなんか聞いたことある。…で、一応、なんか陽気で初代観測者を名乗る女が目の前にいる、かな。」
そう返事する間もノヴェーヌは独り言をつぶやいている。
正直話が耳を滑っていきそうなので静かにしてほしい。
「しかし、この小僧も多めのコアの入れられているようだな。もし会うことがあれば、我を見ることが出来るかもしれん。」
「えっ」
声が漏れてしまい、電話越しにメーデルが不思議そうにする。
慌てて誤魔化し方を考えていると、どうしたのと心配される。
「さっき言った自称初代観測者が驚かしてきただけ。」
「そうなんだ。何されたの?」
メーデルにしては珍しい純粋な質問が、私の答えの穴を探すように刺していく。
なんて答えようと考えていると、電話越しに再び呼びかけられた。
「えっと…、メーデルにも自称初代観測者が見えるかもって。」
「そうなの?というか、そいつってリリに似た見た目してない?」
「……、…まぁ、うん。」
「だよね。初代観測者じゃん。研究者として凄い人だよその人。」
悩みに悩んで同意するとメーデルがそう言った。
ノヴェーヌが喜んでいて頭が痛くなった。
「そうだ、じゃあ、会ってみない?しばらく顔合わせてなかったし。リリの家行っていい?」
「え〜…うーん、うん。いいよ」
少し考えて同意すると、お礼とともに電話が切れた。
客人を上げるならと、ザッと自室を綺麗にして、ため息を吐いた。
「はーー…」
「ため息を吐くのは、ストレス解消にいいらしいな」
そんな言葉を聞きながらリビングに移動し、しばらく待っているとインターホンがなった。
メーデルだったので、ドアを開けて、自室に案内した。
「うわ、思ったよりも部屋きれい。意外。というか、ノヴェーヌと並ぶと身長差大きいんだね。30cmくらい?」
「やはり見えるのだな。メーデルだろう?名前は小娘から聞いている。」
私も人のことを言えないとはいえ、初っ端からノヴェーヌを呼び捨てにしたメーデルは早速といったように、ノヴェーヌと話し出す。
知性あるトークをしているようだった。
私は息を吐きながらお茶を用意して、メーデルとノヴェーヌに差し出す。
メーデルはノヴェーヌがコップを持つ様子に驚いたようだった。
「物持てるんだ。人には見えないみたいだからてっきり物を持てないものかと。」
「だから、端から見ると、物が浮いて見えてまるでポルターガイストなわけ。」
ふぅん、とお茶片手にまた2人の話が進む。
私も間に入ろうにも、2人の話は、最先端の研究技術の話のようで、私には詳しく知らない話だった。
しばらく話して落ち着いたようで、ノヴェーヌが面白い提案をした。
「お主のカルキュルコアの量を測ってやろう。」
そう言ってメーデルの意見も聞かず胸に手を突っ込んだ。
「え??…っあ、は…っ?」
「0.68mg…珍しい。普通は0.5前後だから多い方だ。ここに異端者も居るけどな。」
メーデルがぼんやりとしたまま話を流す。
私の量をノヴェーヌが言うと、急にメーデルは目を見開いた。
「え、0.87mg…?死んでる??まさか0.9mg近いとは…」
「お主は、小娘の量をどれくらいだと思っていた?」
ノヴェーヌが私の頭を撫でながらそう聞く。
「0.8mg行くか行かないかと思ってました。0.9mg近いのは…、初めてでは?」
「あぁ、元々コアも限界に近かったのだろう」
「…限界ってなにそれ?」
私の質問にノヴェーヌが説明してくれる。
コアは蓄積させたエネルギーを使って、定期的に天災を起こすらしい。
これを起こすことで銀河系まるごと破壊するシュミレーションが繰り返されていて、次の天災が銀河系を巻き込むレベルになるらしい。
しかし、そのためのエネルギー量は、銀河破壊するには足りないが、天災を起こすには多い量だったため、私に多めに詰め込んで解決しようとしている。
…ように見えるらしい。
これはあくまで絶対とは言えないが、今までの計算からほぼ確実に近いという。
「なるほど。今回が最後ってことですね。」
「あぁ、そうだな。」
「どおりで、ここ最近は転生者の人数が多かったわけだね。」
私たちの時に銀河破壊レベルの天災が起こるというのにやけに冷静なやりとりだった。
メーデルさんは納得しながら、ノートをしまった。
もうそろそろ帰るらしい。
「メーデル、帰るの?」
「うん、じゃあまたね」




