47
ノヴェーヌの質問でコーディウを見つけて、更に加速して逃げようとする。
しかし、先にコーディウに話しかけられてしまった。
隣にはおめかしをしたクレジェルさんが立っている。
顔を引きつらせている私を見たクレジェルさんは、先程までの幸せそうな顔を取り消して居た堪れなそうにした。
「やぁ、リリちゃん。ショッピング?荷物持とうか?」
「げ、コーディウさん…いえ、大丈夫です。もう帰るだけなので」
適当に断って足早に去ろうとする。
ノヴェーヌは色々喋りながら、私の後ろを優雅についてくる。
「なぁ、お主。あやつに何かされたのか?我にかかればチョチョイの…」
「絶対やめてね!?余計なことになるから」
聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、慌てて小声で否定しているとコーディウに追いつかれた。
「なんで逃げるんだいつも?面白い話があるんだ。良かったらそこのカフェで話そうか」
「いえ、大丈夫です。」
「なぁ、あたしたちと話そうぜ。こいつなんか凄いの見つけたとか興奮しててさ!」
コーディウとクレジェルさんに詰められて、私は黙ってしまった。
身長差による圧が強い。
あと、後ろでノヴェーヌが、聞くだけ聞きたいと催促している。
1つため息を吐いて受け入れた。
カフェに行くには、手が汚れているので、先にお手洗いで手を洗ってから向かうことにした。
そして、先にコーディウさんたちに席に付いててもらって今は洗面台の前で手を洗っている。
「最悪、連れ去られそうになったら、私はメーデルに貰った道具使って文字通り光速で移動する。」
「そんなものがあるのか。それは、今度見せてくれぬか?」
今すぐ見せろと催促されるので宥める。
この人が持つと、物が宙に浮くことを忘れているのだろうか。
…いや、意図的な気がする。
「それは今度話し合おう…。とりあえず私の速さに追いつける?」
「バカにしておるだろう、この小娘が。安心しろ。一定距離、お主と離れたら瞬間移動するから気にするな。」
いや怖いし、とツッコミを入れてから化粧室を出た。
覚悟を決めてコーディウさんたちのもとに向かう。
私たちが戻ってきてから注文をするようで、戻ってきて早々、店員を呼ばれた。
私が選ぶ時間は!と言うこともできず、じゃあキャラメルマキアートで…と伝えた。
まずは雑談というようにクレジェルさんがコーディウに話しかけていると、5分も経たず店員が注文を持って戻ってくる。
では失礼しまーす、と言いながら店員さんが去っていくと、本題を切り出された。
「実は文献を色々調べてたら、転生システムに関われてがありそうな創世神話と資料を見つけたんだ!」
そう言って、ページのコピーと思われる紙の束を渡してきた。
秩序なき昔には50年に一度大災害があったそうで、それをノヴェーヌという転生者が、観測者というコアを操縦する存在になることで食い止めたそうだ。
思わず自分の右側を見る。
端から見たら誰も居ない、が…横ではノヴェーヌ得意げに頷いていた。
そしてその核は元々この世界を作った人本人で、自身を土台にこの醜い世界を作った悪神らしい。
それを今はノヴェーヌが討伐した、と書いてあるが、横で眉をしかめる本人がいる限り嘘らしい。
今の観測者と核に見初められ、戴冠の儀式をすれば新たな観測者になれる、なんてホラを吹いてる。
神話だ、あまりにも。
「それで、俺にかかれば、貴方を特別な、観測者にすることができる。良かったら研究所に来ないか?」
やっぱり使い捨てのモルモットじゃないか!
「いえ、行きません」
「行くよな???」
あああ、恫喝!とスムーズにツッコむとコーディウがこちらを睨んだ。
なぜそこまで切羽づまっているのか。
「お主の先日のショックで寝込んだ事件があっただろう?それによって、核の生命活動が活発になったのだ。向こうもそれを観測したのだろうが、お主は行かないほうがいいぞ。死んでおしまいだ。」
ノヴェーヌがいつのまにか机の上に座っていて、そう忠告をしてくる。
こっちだって帰りたいのは山々だ。
じーっと周囲を観察していると、コーディウさんが勝手にお会計をしていた。
隙を探すが、クレジェルさんはニコニコとこちらを見ているので、脱走は不可能だ。
周囲にも客が多くて、移動が難しい。
はぁ、と1つため息を吐いていると、会計を終えたコーディウさんが私を掴んで連行しようとする。
一応、メーデルから貰ったシールを携帯しておく。
ひとまず付いていこうとすると、ノヴェーヌが流石にオロオロしている。
外に出ると、まるで当然のように抱えられた。
抵抗しにくいようにか、抱っこされている。
恥も倫理観も罪悪感も何も持ってないんだな、と改めてため息が出た。
クレジェルは機嫌を悪くしている。
「はは、抱っことかガキみたい!だよな?コーディウ!」
そう言いながらクレジェルはコーディウに寄りかかって恋人繋ぎをしている。
コーディウはそうだねーとスルースキルを発揮していた。
早くこのバカの空間から逃げたい、と思いながら、抱っこから逃げ出す方法を考える。
身長の問題があって、流石にこの拘束方法は対処が難しい。
そう考えていると、研究所に近づいてきた。
とりあえずまだ、ノヴェーヌは何もしようとしていない。
ただ、機嫌が悪いので、早くどうにかしないと皆殺しを始めてしまいそうだ。
私はここまで来て思いついてしまった。
資料を取って帰ってやろうと。
そう考えてニヤリとするのを堪える。
ノヴェーヌの許可を取ろうと、ちらりと視線を向けると、不機嫌は一瞬で消え去りワクワクとしていた。
こちらも研究者の血、ノヴェーヌは同意を示してくれた。
頷いて、私はクレジェルに研究所のモデルルームのようにきれいな部屋まで連れてこられた。
建物自体が檻のようになっていて、他の建物は外観しか見れなかった。




