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瞬く間のスピードでアリアーコルは地位を失い、パルオピアが全責任を取る形になった。
エレナさんに感謝を告げると、もっと攻めても良かったんだけど、と返されたのは面白かった。
つまり、二度と復帰できないレベルにすることも可能ではあったそうだ。
怖いな、と思いながら、私は教室でスマホを触る。
ふと、スマホから顔をあげると、メーデルが誰かを堰き止めていた。
どうやら、私に話しかけようとするのを止めてくれていたみたいだ。
本調子じゃない私に気づいて、気を使ってくれていたようだ。
感謝して、スマホに目を落とす。
エレナさんからは『SNSで色々調べて自分の状況見てみなよ』とメッセージが来る。
嫌だ、と返せば、『自分に向けられてる視線を知らなければ、自分が燃える可能性もある』と正論を向けられた。
そうは言われれど、もう既に昨日の誰だったか、薄緑の目の女の子のせいで少し理解はせざるを得なかったのだ。
現実からは目をそらしたい。
実を言うと、私、あんまり人から注目を、特に期待を向けられるのが得意じゃないのだ。
そんなわけで『少しだけね』と返事をすれば、一番平和なSNSで「アリアーコル イジメ」と検索をかける。
アリアーコルに怨みを持つ人物からの感謝。
私を強く貴族制に抗った英雄だと称える声。
私を知っていると、見た目も良くて賢くて勇気がある素晴らしい存在だと推す人間。
同時に、私への批判もあったが、それに安心してしまうくらいに、有象無象の”私”に対する賞賛に羨望が渦巻いていた。
だめだ、おかしくなる、と慌ててスマホを閉じる。
「メーデル、HRは学年集会だっけ?」
「そうそう、もしかして批判とか賞賛に精神やられた?あんな盲信か拒絶しかしない馬鹿たちを真に受けないほうがいいよ」
「そう言われたって感情は伝播するからねぇ」
だから見ないようにしとくの、と言われたがそう言われても一度見てしまったら沼だ。
ずっと考え続けてしまう。
「リリさん!!俺リアリィス・アリアーコルにいじめられてて、今回の件ですっごく清々しました!リリさんもあのゴミヤバいと思うっすよね??だからこそ、今回コテンパンにやってくれたんでしょうし!」
誰かが話しかけてきた。
メーデルが横で、あっ…と言っている。
この人には見覚えがある。
私へのイジメを率先だってやっていた気がするのだが…、と目尻を下げる。
メーデルはどおりでこの人を必死に堰き止めていたわけだ。
何も言えなかった。
一瞬の笑顔と、真顔とそして、不快感。
表情が行き来して、最終的に声が出なかった。
「ね?今、リリあんま調子良くなくて。だから、ごめんけど二度と来ないでね〜」
メーデルが溜め息を吐きながら、笑顔で説明すると、急に面白くなさそうな表情をするとその人は去っていった。
シンプルに効いた。
はぁー、と大きく息を吐いて、机に突っ伏す。
むしゃくしゃしながら数を数える。
精神統一を図った。
「231,232,233,234…」
「凄いね、まだイライラ収まらない?珍しい」
「んぁ?うん、そうだね。なんかそれもだし、しんどい。精神的に滅びそう」
「あはは、クッキーいる?甘いもん食べると楽になるって言うじゃん」
200の途中でメーデルに声を掛けられ、クッキーを差し出された。
個包装を開いて、口に入れながら文句をつける。
「ケーキはないの?」
「持ってこれないし、悪くなるよ!」
「ちぇ、ケチ。次、5限目だよね。あー、帰りたい。不登校になりたい」
「いいんじゃない?」
メーデルもクッキーに手を付けながら、適当に返事をしてくる。
こっちが一生懸命矛盾を大事に抱えてるってのに、呑気な人間だ。
「うわー、私、性根がまともだから、学校休むなんて出来ないよー」
「うわ、ミカルアさんみたい。社畜の才能あるよそれ。」
「ありがとう。褒めないでよ、照れる」
「褒めてない。壊れるよ?」
「望むところだぁー」
覇気がない、なんてツッコまれる。
先生が入ってきたので、メーデルがクッキーの箱をしまった。
私も慌てて、残りを噛んで飲み込んでしまう。
授業は、注目が集まらない。
いつも通りが、少し心地よかった。
たまに当てられるときも、視線はいつも通りのだるそうな視線。
僅かな休息にぼんやりしていたら、チャイムが鳴った。
「HRと明日の学校は休む。伝えといて。頭痛い」
「分かった。先に保健室に行ったほうがいいかも。連れて行く。じゃないと早退もしにくいでしょ」
メーデルがそう言って、席を立つ。
私も一緒に立って、他の生徒に体調不良を伝えて保健室に向かった。
メーデルに帰れるかな、と聞くと、いじめの件もあるし帰れるでしょ、と軽く返される。
しばらく階段を降りて歩いてダルいため、メーデルに凭れる。
「メーデルおぶって。疲れた。そのほうが仮病のリアリティが増すでしょ?」
「仮病って…めんどいから嫌」
「メーデル様ぁ、お願いします。今度なんか奢る」
「はぁ、仕方ないな」
おぶってもらって頭をメーデルの肩に全部押し付ける。
重さが減って少し頭痛が楽だ。
保健室に到着すると、養護教諭はぎょっとした顔をしている。
「あの…すっごい、頭痛くて…帰りたくて…」
私がメーデルの上からそう言うと、しばらくオロオロされたあと、熱を測ることになった。
ピピピと小気味よい音がなると、35.8℃という平熱具合だ。
「少し体温が低い、魔力量を考えると、ちょっと低すぎるかもといった感じですー。帰ったほうが良いんじゃないですかー」
自分で鞄取ってくる、とそう言って保健室を出る。
再びメーデルに私を運ばせてクラスに戻れば注目された。
数人に引かれている。
なんなら、荷物のまとめもメーデルが殆どやってくれていたので、先生が気を利かせて、メーデル送ってあげて、と言い始めた。
「いや、大丈夫です。帰れます…一人で」
そう言って、メーデルを押しのけて、一人で教室を出て家に帰った。
メーデルは追ってこなかった。




