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「ミカルアさん、次の授業で戻ってくるよね??」
「僕に聞かれても…」
私にせいだろうか、今日のミカルアさんは溜め息が多く、疲れた顔で書類をたくさん抱えていた。
まぁ、すでに週刊の雑誌になったり、SNSの動画も再生回数が3000万再生を超え始めていた。
エレナさんは収益たくさんでウハウハだと、すでに教えてくれている。
「多分、私のせいだよね?」
「リリだけのせいではないけど…まぁ、そうだね」
「フォローできないなら、一瞬フォローしようとするの、やめてちょっと。」
笑いながら文句をつけると、リリのせいではあるじゃん、と返される。
実際、次の時間は科学。
授業だから、ミカルアさんは戻ってこないといけないのだが。
あと、予鈴まで1分、生徒が教材を出し始めてもミカルアさんはやってこない。
「はい!ミカルア先生は予定があるので、本日はキーナ先生の授業になりまーす!喋るのやめて~」
そう言って、グラマラスな、もう一人のほうの科学教師が金髪を揺らしながら入ってきた。
思わず吹き出す、と、キーナ先生にポンッと叩かれ。
「笑わない。てか、なにかおかしいことあった?私が入室してきただけじゃない!」
キーナ先生は苦笑しながらそう言う。
私は笑いをこらえながらそれとなくごまかそうとして、ひとつ、目に付いた。
「その…スカートのファスナーが開きっぱですよ」
「…ほんとだ。ありがとう。でも、笑わないで頂戴」
頷くと、キーナ先生は満足そうに教壇に戻っていって授業を進めた。
私は僅かに安堵していると、メーデルさんが隣でなんとも言えない目線を向けていたので、スルーした。
教師が変わっても授業は淡々と進んでいき、ついには終礼のチャイムがなった。
私はいの一番にキーナ先生のもとに向かった。
「キーナ先生、ミカルア先生ってどうしたんですか?」
「あぁ、…いや、貴方も関係者でしょ!リアリィス虐めがネットで話題になっちゃってて、アリアーコル家の体質問題も今メディアで話題なのよ…。虐めの件で学校が大量の問い合わせを受けてて、ミカルア先生が対応中よ。」
「なるほど…なんで、流出したんですか?」
「えぇ、なにか、遠くから取られたっぽい録音音声だったから、その場に居合わせた誰かがインフルエンサーに共有したのだと思われるわ。…あ、言っちゃだめだった。」
「聞いたのは私ですけど、先生口軽くないです
か!…にしても私録音されてたんだ」
白々しくそう言いながら机に戻ると、メーデルさんにも小突かれた。
「演技上手いね」
「でっしょ〜?」
「速攻『でしょ』なんて言う辺り、詰めは甘いけどね〜」
あの先生にはバレないよ、と笑うと、メーデルさんは何故か一頻り大爆笑したあと息を吐かれた。
「君ほんとちょっとズレてるよね、普通じゃない!」
流石に面白い、とメーデルさんはそう言ってくる。
どこがなんだ、と聞き返せば、その『理解出来ないところも面白い』らしい。
メーデルさんは笑いが落ち着くと、荷物の整理をし始める。
もうすぐHRだから、帰りの準備をしているのだろうか。
HRでは、今後の提出物の説明がされて、すみやかに解散を言われた。
私は鞄片手に教室を去ろうとすると、ふと話が耳に入ってきた。
珍しい、私に同情する声。
メディアの効果だろうか、と耳を傾けると、同情ともちょっと違う話だった。
凄いよね、という賛辞だった。
「あんだけ虐められても意に介せずって感じでかっこよくない!?」
「リアリィスにいじめられるだけあって、やっぱそういう強さとか特別さみたいなのがあるんだよ!ほら、リアリィスってちょっと…アレじゃん?」
「でも、羨ましいよね。それってミカルアさんに気にかけられてて、魔力も強くて…みたいな余裕から生まれる感じ!!」
その中には、羨望も入っているのだと、ストンと理解する。
ミカルアさん関係ないだろ!と言いたくなったが、余計なことになるのも面倒くさいのでスルーする。
そうして、視線を鞄に戻して去ろうとすると声をかけられた。
先ほど、会話をしていた女子の中の一人みたいだった。
薄緑色の瞳を伏せがちにしていて、思わず見ていたことがバレていたのかと胸が跳ねた。
「その…ネットで見て…リリちゃんのこと凄いなって思ってたんです。」
「きっとリリちゃんなら大丈夫なんだって分かってるし、リリちゃんみたいな特別な人に私なんかが言うべきじゃない事はわかってるんですけど…。できれば、力になりたいなって思って!何でも言ってください…!」
弾幕のように、神格化された私を見て、助けたいと言ってくれる。
一瞬、何故か言葉に詰まった。
見たことがあるこの感覚に違和感を覚えながらも、曖昧に頷くのが精一杯だった。
「ううん、全然嬉しい!私なんかなんて言わないでよ。今、オパールちゃんがそう言ってくれただけでとても気持ちの支えになったし。」
目を逸らしながら言う言葉は、この子が求めるものなのだろうけど、僅かに私っぽくなかったかもしれない。
しかし、目の前で目を輝かせてくれているあたり、問題はなかったっぽい。
にこにこで去っていたのを見届けると、なんか、ドッと、疲れた。
ちょっと驚いたからかもしれない。
そう思って、早く休むために、家に急いで帰った。




