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まず保守メディアの中でも昔ながらの貴族を重んじるメディアに情報を流した。
エレナさんがいつもと同じように、しかし普段より扇動するような動画を投稿する。
放課後に、学生2人とインフルエンサー1人が集まって、ささやかな反抗をしているのだ。
「ミカルアさんは、私を守るためにリアリィスだけを追放する形を望んでいる。ミカルアさんがどこまで動いてるのか分からないけど、ある程度動いてるのであれば…。私の匿名性を守って情報を出すことは出来る…。だよね?」
「大丈夫?早速今からリモートインタビューがあるけど。」
エレナさんがそう言って心配してくれる。
最後に台本だけもう一度確認させてもらうと、再び深呼吸する。
「いや〜、せっかくだし、盛大にやり返したい。それでいいよね?」
「ずっと質問してくるけど、本当にこれでいいの?」
メーデルも聞いてくる。
先ほどから、私が質問する口調になっているところから、メーデルたちは心情を察してくれているんだろう。
当たり前だろう、緊張はすれど、私が面白そうって、思っちゃったから。
それに、ここまで来たなら戻れない。
インタビューには、心の底から怯えたように、私だなんて気付かないくらいにか弱く…。
そして会話にはさり気なく、邪推できるような事実を伝える。
30分くらいだろうか、記者が礼を言って、ビデオ通話アプリを退出していった。
そうして、アプリの電源を切ってから、息を付く。
知らず知らずの内に伸びていた背が緩んで、メーデルに凭れた。
「メーデルぅ……こういうの初めてでほんと気が可笑しくなるかと思ったね!」
「音声データ提出したけど、大丈夫だよね?『ちょ!ピンポイント!』とか言ってるけど…」
私がメーデルに抱きつきながらそう言うと、エレナさんが笑った。
「大丈夫。メディアに告発できる人なんて、どちらにしろ胆力の凄い化物だから」
「ひどい!私こんなに繊細なのに!」
「ちょ、リリ苦しい!!」
私がエレナさんにふざけてそう言うと、誤って力を強めてしまったようで、メーデルに叩かれる。
ごめん、と軽く謝って退くと、溜め息を疲れる。
「君のやることは終わったから、帰りも送るね」
「お熱いね〜。じゃあ、残りは私の仕事だから、任せといて。」
そう言われて、メーデルとともに建物を出た。
歩いて帰るか、疲れたからタクシーでもいいけれど。
そう思って、左に曲がろうとすると、メーデルに止められた。
「どうしたの?」
「帰り道は右だよ。」
「えぇ、どっか寄らないの?お腹空いたんだけど」
そう言うと、メーデルはしばらく悩んでいた。
そして、まだ悩むように、了承してくれた。
「あぁ、良い店知ってるよ。美味しそうなカフェがあるんだよね〜」
「ほんと甘いもの好きだよね。」
メーデルが呆れたように言う様子から、拒否はしてないのだと理解する。
じゃあ行こっか、と連行する。
「限定のミントケーキとクッキーベリーケーキをお願いします。あと、コーヒーのブラック」
「そういうこと…。あ、カプチーノのをお願いします」
店員さんにケーキを2個注文すると、横でメーデルが嫌そうにした。
一緒に来た理由を察したようで飲み物だけ頼んだので、私は笑いを堪えるのに必死だ。
「ねぇ、笑ってるよね?…まぁ、いいや。ちょっと聞きたいこともあったし」
注文が届くまで、という制限付きで質問を許可した。
「なんでそんな厳格な…。まぁ、いいけど。提案したのは僕だけどさ、なんでそんなにメディア慣れしてるの?」
一番、聞きたくないところから始まった…と目を逸らす。
この人、記者上手いんじゃないかな、なんて軽口を叩くと、言いたくないなら良いとあっさり引かれてしまう。
「まーぁ、天才だから??」
結局、言ってみたおふざけは無視されてしまった。
そして今度は別角度からの質問が投げかけられる。
「じゃあ、いいよ。次ね。リアリィスはともかく、ほんとにそんなにアリアーコルに恨みがあるの?」
「ううん、そこまで。でも、リアリィスへの恨みはちっともない。それだったらアリアーコルの方が憎いかな。」
「それは…リアリィスへの同情?」
「うーん、それはちょっと違うかも?罪は罪として裁かれるべきなだけで、リアリィスからの攻撃は痛くも痒くもない。まぁ、流石に不便なときもあったけどね〜」
私にも時々自分の感情が分からないことがある。
いや、当時は本当に色々思ってた記憶はあるけれど、まるで又聞きのように、時間が経つことに現実味が薄れていく。
「エルヴィアの件は?」
これまた痛いところを突いてくる。
「逆になんだと思う?」
「リアリィスについて、巻き込まれたことで、エルヴィアに怒ってる?」
「そんなわけ」
メーデルは意図的にズラして聞いてくる。
どうやら、自分の口で答えてほしいようだ。
「強くて自分で立ち上がれる人なんだから、私なんかの助け、要らないでしょ?」
「うーん、無力なのが嫌?」
「違うって!可哀想、だとは思う。けど…救う人は私であるべきだとは思わない。ただ、出来るって思ったからやってみた…?そんな感じ」
慌てて、否定するけど、言い切ることは出来なかった。
今、私の過去は言うべきじゃない。
そう思って、困っていると、店員さんが注文の品を持ってきた。
「あぁ…!ありがとうございます。メーデル、カプチーノちょっとちょーだい」
そう言って、メーデルのもとに置かれたストローに口をつけて話を誤魔化した。
クリームの濃厚さと珈琲の苦みが最高に良い。
「僕がブラックもらおうか?」
「私、珈琲が美味しい店の珈琲は、ブラックで飲みたいの!」
そう言いながら、自分のもとにあるブラック珈琲にも手を付ける。
それぞれブレンドが違うようで、ブラック珈琲は酸味が強めでこれまた美味しい。
ケーキも…、うん、美味しい。
ミントの方もベリーの方もきちんと味が際立っていた。
メーデルにあーんと口に突っ込むと、うざがりながらも受け取ってくれる。
「あ、けっこう美味しいね。」
「でしょ?半分いる?」
ミントケーキの方なら、と受け取ってくれた。
「私ねー、もうちょい小さいサイズなら良いのになぁ、っていつも思う。」
「そう?」
いつも落ち着きのある空気で食事が進む。
手元のケーキを食べ終わったところでメーデルに呼びかけられた。
「何ー?んみっ」
口に残ったケーキを突っ込まれる。
ちょっと、と咎めようとすると、先に謝られながら口に付いたケーキを手で拭われた。
「な、な…なんかセクハラじゃない?」
「僕もうお腹いっぱいだから。ほら、帰るよ」
そう言って、勝手にお支払いをされて、流れるように帰宅させられてしまった。




