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「メーデル???」
放課後、何故かエルヴィアに連れてこられた空き教室では、どうやら付き合いたい校内の男ティアを作っているようだった。
知らない生徒もいる中、ランキング候補のメーデルが出てきた瞬間、私に話が振られる。
それで、何のために私が呼び出されたのかを理解した。
どうやら、仲の良い人間として情報を提供してほしいらしい。
そして、話を聞いている限り分かったのが、今集まっているのは、リアリィスの被害者たちのようだ。
どおりで、私がいても何の反応もないわけだ。
何ならこの人たちは、私をリアリィスにより貶められた人、と知っている。
「メーデルくんのメロいエピソードを聞いてるの!」
「えぇ、分かんない。そもそも私が一々メロついてたら関係成り立ってなくない?」
食い気味の追撃に困惑しながら返すと、メンバー全員が噛み締め始める。
「確かに!うぅ、言ってみたい言葉過ぎる。」
「えぇ…?あー、でも、けっこうエスコート慣れてるみたい?」
ふと思い出してそう言うと、またドッと沸いた。
なんでこんなに色恋に溺れてる人が集まっているんだ。
「エルヴィア〜…、この人たちなに?」
「恋愛に関する好みが歪んだリアリィスの被害者たち。ほら、なんか少しはリリも青春を味わいたいかなーって」
そう言われるが、流石にテンションが違いすぎる。
以前なら、楽しめたかもしれないが、何故か色恋への関心が薄れてしまった。
「そんな、リリちゃんに初恋の人は居ますか!」
「うん、まぁ。」
どんな人?とテンション高く聞かれるので、先生とだけ返しておいた。
すると、今度はミカルアさんかと、質問攻めに合う。
違うよ、と返せば、今度は誰だろうという考察になる。
あまりにも収集がつかないので、前の学校と伝えれば黙った。
前世の学校とはいえ、前の学校なので間違えてはいない。
「メーデルって、顔は良いと思うでしょ?流石に」
エルヴィアが話をメーデルに戻して、質問を投げかけてくる。
「うーん、確かに。顔も可愛いし、あと仕草が可愛いよ。」
「え、仕草?まぁ、言われてみれば…よく見てるんですね」
「敬語に戻ってるよ、エルヴィア。なんか一口がちっちゃかったり女の子っぽい」
エルヴィアが指摘に軽くゴメン!と返すと、それをかき消すようにまた場が沸いた。
どうやら、相手の食事をマジマジと見る関係、という判断をしたらしい。
それほど珍しいものだろうか。
「もー、普通はない!普段からリリちゃんが距離感バグってるのはあるんだろうけど!」
カーキの髪のカレンちゃんが、そう言って私の肩を叩いてくる。
力がやけに強いが嫉妬なのか。
「ちょっと力強い。嫉妬?メーデルが好きなの?」
「違う!!どう足掻いても恋愛にならないリリちゃんに怒ってる!」
「あはは、恋愛にならないから、いわゆる崇拝の対象が寄ってくるのでは?」
カレンちゃんに言い返すと、お手上げとでも言うように私に返事をせずジュースを飲んだ。
それに対して、エルヴィアが「ミカルア先生と比べて冷静だよねぇ」なんてニヤニヤしながら見てくる。
「ミカルアさんは、心配性なんだよ。面倒だけど、アレと私を比べないで欲しいかな〜。」
「あと、ミカルアさんよりメーデルの方が良い。私を尊重した上での冷静に注意してくれるし、どんだけ近づいても怒らないし」
「お熱いですね〜〜、良いじゃん良いじゃん」
「でも、お互いに恋愛感情がないからこそ成立する関係でしょ?」
話を流しながら、試しに燃料を投下してみると、また喜ばれた。
そして、今度こそ、また恋愛に成り得ないことを示すが、それでも盛り上がり続ける。
「メーデルくんがリリちゃんを好きな可能性は全然あるよね!」
「あったら、私が抱きついたら劣化の如く怒るでしょ。」
「まって??その話詳しく」
詳しく、と言われても特に何かあるわけではない。
どうやって、説明すれば…、と思いながら、ノリと勢いの話の流れを説明する。
「休日に一緒にカフェでお茶したんだけど、待ち合わせでナンパされてたから後ろから抱きついた。メーデルをナンパしてた女の子たちそれで逃げていったよ」
「ちょっ…と待って??メーデルくん、ナンパされてたの?」
「うん、私が抱きついたので、彼女持ちだと勘違いして去っていった」
「正直言って私、学年TOP2のカップルっていいと思うの。」
「エルヴィア??なに言ってんの?」
「いじめられたことで発展する、天才との恋愛関係!」
「カリンちゃん、私その前からメーデルと仲いいよ」
何を言っても馬鹿騒ぎなのでため息を付く。
もっと、騒いでも良い場所なら素直に盛り上がれるけど、完全下校時刻が近いためあまり騒ぐと教師にバレた時に怒られるだろう。
「はぁ、先生にバレたら困るから、声の大きさどうにかして欲しい。まだ不良にはなりたくないよぉ…」
「ぶっちゃけ、メーデルくんとリリちゃんのカプとか最高じゃん!」
私がバレたら怖いと話すと、カリンちゃんのガヤと同時にドアが開いた。
いささか、フラグ回収が早過ぎるだろう。
「はぁ、声がすると思ったら…。早くしないとミカルアさんに先越されるよ」
メーデルが来ていた。
声からここに居るとバレたんだろうけど。
「もしかしてわざわざ探した?忘れてた…メッセージ送ってくれれば」
適当に謝ろうとすると、言い切る前に詰められる。
どやされる3秒前みたいな声音が、耳に直で届く。
「メッセージは入れてる。確認してみたら良い。僕、君に合わせてるんだよ。何のためにミカルアさんに怒られたと思ってんの。」
メーデルの発言からは、ミカルアさんから限界まで怒号を飛ばされたようだ。
「あ、ごめんなさい…。」
「はー、いいけど。大層、ミカルアさんから愛されてるようで。」
「ほんっとうにごめんって…!悪かったと思ってる。」
ねちねちと怒られながら、荷物を持って、エルヴィアたちに暇を告げると、空気を読まない誰かが声を上げた。
思わず、自分の眉が、無意識に顰められるのを感じた。
「これ、嫉妬ってこと?はぁー、尊い!!」
「これはっ…、違うくて…」
「は?なんっ、の話?」
メーデルが困惑の声を上げる。
余計なことで怒られたらどうすんの!という不満が込み上げてくる。
「あぅ゙ー、ほんとコイツら…」
「リリ、落ち着いて落ち着いて。分かった分かった」
アンガーマネジメントをしていると、それより先に冷静になっているメーデルに慌てて止められる。
「こいつらが悪い、よね?怒るなら私じゃない…私は何も恋愛と誤解されるような行いに一切心当たりはない」
「まず、そこまで、怒ってないから。リリ、聞こえる?それに、連絡を見忘れてただけでしょ?」
どっちかというと保護者?いや、彼氏でしょ。
と、外野のやり取りが聞こえてくる。
「…今、ガキって言われた。」
「リリ?そういうことじゃないと思うけど…、ミカルアさんこんな大変なことしてるの!?」
「ミカルアさんだとめんどいから普段こんな事しない!」
「メーデルくんにしかしないんだって。カップルじゃん!」
世知辛いことに世は一度カップル認定すると、何をしてもカップルだと認識し続ける。
涙が出てきそうだ。
というか、昔を思い出して、ちょっとさみしくなってくる。
「分かった。ねえ、帰ろう!とりあえず落ち着ける?」
「うん、大丈夫。落ち着いた、じゃあ、また明日」
そう言うと、メーデルに何故か向かい合わせで抱えられた。
そのまま教室を出て、学校内を連行された。
きっと、私が帰ったあとも、ネタにされているのだろう。




