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「あー、どうしました?先生」
目の前に来てまだ黙っているミカルアさんは、ピキピキと、間違いなく怒った顔をしている。
というより、怒ってる、ということを伝えようとしている。
私は心を落ち着かせようと、もう一度、メーデルの方に向き直って、逃げないように腕を拘束しながら、ミカルアさんをもう一度見る。
「メーデル、どうしたら…ここからどうにか…」
「出来るわけ無いでしょ。」
小声でメーデルに助けを求めると、ピシャリと言い渡された。
絶対にどっか行かないでね!と念を押して、腕の拘束を更に強めた後、ミカルアさんを見る。
「話は回ってきてます。なんで勝手にリアリィスの呼び出しに応じたんですか?貴方のことだから、何が起こるかどうせ理解した上で向かったんでしょうけど。メーデルさんもなんで止めないんですか」
いつもの小言が飛んでくる。
学校ですべての溜飲を下げきらないと、家に帰ってからもネチネチ言われる可能性があるので、必死に頭を働かせる。
「えっと、早く証拠集まったほうが良いな!って思って。ちゃんと監視カメラの写りがいい位置を選びましたよ。」
「違うんですけど。俺は貴方を助けるための準備をしていました。敢えて最も危険な行動をしなくても、イジメの証拠は集めていましたよね?」
「一泡吹かせてやりたかったんですよ。」
どんどん機嫌が悪くなるミカルアさんに、私はそう告げる。
横でメーデルがはぁ、とため息を吐いた。
私はそれを見逃さなかった。
「ミカルアさんのやり方もありがたいですが、もう一つ、いい方法を見つけたんです。」
「私が情報を提供し、演じて操って、メーデルがインフルエンサーだと教えてくれた友達に頼んで、アリアーコルごと壊してやるんですよ」
実際、思った以上に、リアリィスは教えてくれた。
全部の情報が合わさって、それが広まれば、連想ゲームとなって、面白い破壊になると、そう踏んだ。
どうなるかは分からなくても、破滅はするだろう。
ミカルアさんのやり方じゃ、リアリィスしか裁かれない。
そう思ったことを伝えるため、と。
あとは、メーデルにヘイトを向けるため。
「どういうことです?メーデルさん、リリに何を唆したんですか。」
「ちょっと、違いますけど。元から彼女はこんなものじゃない?」
「まず、そのインフルエンサーってなんです?」
「ミカルア先生、落ち着いてよ。エレナっていう、カフェ巡りがメインコンテンツだけど、昔の政界関係のニュースに詳しいで有名な人。」
ヘイトを全部引き受けてくれたメーデルが必死に、自分自身を擁護している。
ありがたい限りだが、流石にここまで焦っているメーデルを見れるのは新鮮で、少し面白い。
「はぁ、聞いたことはあります。そのインフルエンサーをリリに紹介したんです?で、余計なことをしようと…」
「違うんだけど?そもそも、2人は元々バイト先が一緒で知り合いなの。」
「じゃあ、なぜ、こんな急にアリアーコル自体にヘイトを向けているんです?以前まではこのようなことはなかったのですが!」
さっきから、ずっとメーデルは『違う』と連呼している。
こう聞くと、やはりミカルアさんは怒ると、想像力が豊かになる。
メーデルは助けを求めるようにこちらを時々見てきていた。
「えぇっと、それは…エルヴィアさん関係で。その、エレナさんからの話を聞いて、エルヴィアさんのためにも報いたい、のでは…?」
メーデルが、細かいところは僕もよく分からない、と私にバトンパスしてきた。
最悪!と心のなかで悲鳴をあげる。
「エルヴィアのことは、私もまぁ納得行ってなくて…、そもそもそんな環境を作った場所自体をどうにか自分の手で破壊したくて…。あと、きっとこうして破壊したら面白いかな、みたいな〜…」
「あと、エルヴィアの件はもちろん許してないけど」
そう、濁しながら、最後だけはっきりと、そう言うと、ミカルアさんはため息を吐いた。
言い方が悪いが、コレは降参の合図だ。
「分かりました。貴女のことを止められないのは分かってますが、相談はしてください。そもそも、何故、俺よりもメーデルさんに相談するんですかね。この男は心配しないんですから」
ミカルアさんのその一言で、また混沌のアクセルが踏まれた。
メーデルが一瞬で、気を悪くした。
「ちょっと、止めたし、心配しましたよ。だからこそ、僕、すぐに行けるように待ってたんだから。」
「なんで、痕の付くぐらいに鳩尾を殴られても止めに行かなかったんですか!?」
「はぁ、僕はミカルアさんと違って、リリを尊重してるからね。それにどうせ止まらないし、やりたいことを理解したんで、折角自分を痛めてまでやろうとしてるなら、アフターフォローを徹底することにしたの。」
事実とはいえ、貶しの言葉が聞こえてきた。
しかし、とてつもなく理解してくれた上で、配慮もしてくれてるという事が伝わってきて、とてもありがたかった。
しかし、売り言葉に買い言葉と発せられた『ミカルアさんと違って』という言葉に、ミカルアさんも気を悪くする。
「…俺と違って、リリに一度相談されるくらいなんですから、リリを止めれるでしょう?」
「そうやって、過保護にやることなすことを制限するから心開いてくれないんじゃないかな」
メーデルのその一言が思ったよりも深く刺さったようで、ミカルアさんの目が変わった。
「いや、ミカルアさんは心配して止めるから言わなかっただけだよ。絶対にやりたいからこそ、多分上手いことやってくれるメーデルに言ってみただけで。」
そう言うと、ミカルアさんが落ち着いた。
姉の件があって、こうやって敏感になっているのだろうけど、自分で言うのもだが私自身が野生児なのだ。
だから、制限されたくはない。
それに、多少の自分の犠牲を元に、自己満でも助けれるなら助けたい、と自尊心が言ってる。
こっちのほうが真実を公開するため、エルヴィアも、名前しか知らないダジリアも、リアリィスも、まだ被害を受けづらいだろう。
それでも、リアリィスは裁かれるだろう、とはいえ、そんな環境にしてしまった空間に報いを与えたほうが、私は救われると思うし。
「まぁ、確かに止めますね…。」
「でしょ、まぁ、強行して心配を掛けたことは悪かったです。反省はしてます。」
この環境における仕組みが最悪だった!と告げれば、パルオピアとゴードンが全てを背負ってくれる、はず。
本来はそこにも理由はあるが、人々は耳障りの良いことしか聞かないだろうし。
と、考えていると、チャイムがなった。
「ミカルア先生っ、授業いってら〜」
「はぁ、まあいいでしょう。では」




