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「骨が折れたりとかはないと思いますねー。これで冷やしておいて、あとは安静にしておいてください。3日程度で回復していくと思うけど、全然青みが引かなかったら、病院に行くといいですよ」
保健室で様々な処置が施されたあと、そう言われる。
元の世界じゃ、この程度じゃ済まなかっただろう。
改めて、異世界を感じる。
「しかし、魔力が多いと思われる。リアリィスさんの力とはいえこれだけ殴られてこの程度で済むのも珍しい。」
そう言われて、更に理解した。
なるほど、魔力が回復を助けているのか。
「人より多いみたいなのは、義父に言われましたね。」
「ふぅん、ミカルア先生か?」
「そんな感じです。戻ってもいいですか」
あまりにもズケズケと聞いてくるので、不快感を感じてそう強く言う。
しかし、養護教諭は理由は理解してくれないようで、不思議そうにしながら頷いた。
メーデルに支えられながら、保健室を出て早々、私は文句をこぼした。
「メーデル、あの養護教諭の男さ、なんか態度悪くない?」
「あー、あの人だいぶズケズケと聞いてくるし、口が軽いで有名だからね。何も話さないのが正解だよ」
どうやら過去にも、書類や生徒からの相談を含めた様々な情報を流出させてきたそうだ。
家庭の事情や、恋愛事情、持病などなど…本来は守られるべきな情報こそあの男は嬉々として話すそうで。
「そのクソ野郎はなんでクビにならないの?」
「ちょ、ちょっと…ここまで保健室近いし、移動してから話そうか」
メーデルに止められて、私はしかたなく黙る。
そして、学校に来るようになって、初めて、エレベーターを使って教室に戻った。
「メーデル、私置きっぱにしてたスイーツ、どこ?」
戻ってきて早々、私は食事に戻ろうと、机にある筈だったスイーツを探していた。
机には見当たらずメーデルの机に置いているわけでもなかった。
ついには、机の中にもなかったのでメーデルに聞いてみたのだ。
「はぁ、鞄になおした。僕、刃物とか取り出された時のこと考えて、慌てて追いかけたんだから。引きこもりには本気で逃げるなんて無理でしょ?」
「失礼な。引きこもりじゃないし、インドア派だ、し……お、あった〜」
スイーツの事情を聞いただけで、リアリィスさんの件で小言を言われる。
正論だったので論点をずらして言い換えして、その後は、スイーツの話で押し切ろうとする。
「ねぇ、新作なんだよこれ!ザラメだんごの桃茶サブレサンドっていう、美味しそうでしょ?」
そう見せたお菓子は、有名なケーキ屋さんとコンビニのスイーツのコラボ商品だ。
その見た目から分かる、挟まれているジャリジャリした団子に惹かれて買ったのだ。
「うん、カロリー凄そう。甘すぎないの、それ?」
「分かんない。」
そう言いながら、口に入れる。
甘すぎないか、と聞かれたせいで少し身構えていたが、確かに甘みは強いが、でも甘ったるさはなくて美味しい。
ピーチティーが桃の風味がするだけで、不用意な甘さがないため、ザラメの甘さメインでそこまでカオスな味でもない。
「いや、コレ美味しいよ。流石、有名店監修だね。あ、これあげる」
そう言って、買っていたもう1種類の方をを差し出す。
帰って自分食べるようだったが、迷惑料だ。
「いや、要らない。…なにこれ、さっきのと違くない?」
「うん、こっちは桃茶スコーン。甘さ控えめでしょ?あげる。」
そう言って、押し付けるが、やんわりと、それなりの力で、押し返される。
受け取る気は無さそうな勢いだったのが、少し緩んだ。
「え?1個しか買ってないんでしょ?なのに貰うのは悪いからいい。」
「別に私、元々スコーン好きなわけじゃ無いし、貰ってくれて良いよ」
「ちょっと、ならなんで買ったの。勿体なくない?」
「今回のコラボ商品だから、悪い?別に甘さ控えめなのはあんまりだしいいの。貰って」
そう言って押し付けると、メーデルが深い溜め息と同時に受け取った。
食べてみて、と言うと、渋々食べてくれる。
眺めていると、食べづらいんだけど、と言われた。
変わらず見続けていると、結局折れたメーデルが口を開けた。
「美味しいよ。食べなくてよかったの?」
「うん、口にあったなら良かった。てか、一口ちっちゃいね、女子みたい」
「ちょっと?はい、半分返すよ」
「大丈夫だって。別に元々、スコーンそんなに好きじゃないの。」
本当なのに、一向に信じてもらえない。
試しに買っただけで、少し食べたらメーデルに押し付けようとしてたくらいなのに。
メーデルがスコーンを好きなことも、事前調査済だ。
「メーデルってスコーン嫌い?」
「…え。いや、好きだけど。…どこで聞いた?」
「いや、他の生徒が話してるの聞いた。」
「分かった、分かった。理解した、素直に受け取っとく」
そう言うので、なんとなく腑に落ちなさを感じながらも、お礼を言っておいた。
そして、前を向くと……、ミカルアさんが居た。




