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エレナさんはメーデルが差し出したタクシー代を受け取って帰ったが、私は少し驚いた。
あまりにもスマートで、やはりヤリチンなのかもしれないとちょっと思う。
「ヤリチンじゃないって。…こう言った後でアレだけど、タクシーで一人で帰れる?一応、家までは着いていこうと思ってるんだけど」
そう言われて、外を見ると、とても暗い。
思わずギョッとして、スマホを開くと、とてもたっくさんのメッセージが送られてきていた。
ミカルアさんが何個も連投してきているので、時間を確認してみる。
現在20時、もうあと数十分で明日というところだった。
メッセージとしては最初は心配。
泊まるなら早く言え。
最終的には、襲われました?合意の上ですか?メーデルさんも男ですからね?という、性交渉済みのような内容になっていた。
「うわぁ、相変わらず束縛激しいね。送ってったら睨まれそ〜。んー、でも一人で返すのもなぁ。ミカルアさんまだ起きてるなら迎えに来てもらえないかな」
メーデルは私のスマホを覗き込んできて、呟いている。
メーデルがそう言うのに対して、私の感情は斜め上に言っていた。
「メーデル、助けて…」
「……えっと、どういう事?」
「このままじゃ、怒られる。あと、夜帰るのが流石に不安だから今日家止めてくれない?ミカルアさんには連絡は入れる」
「絶対にそれ、もっとミカルアさんに怒られるよ」
「それでもいい!夜帰るのは不安だから!でも、怒られるの嫌…」
そう言いながら、でもミカルアさんにメッセージは入れる。
問題は出来る限り先延ばしにしたい。
そうして送ったメッセージには、またミカルアさんが長文で送り返してくる。
男の家に行くのはなんちゃら〜と。
「メーデルは襲わないでしょ」
そう言いながら、同じ内容のメッセージを送っていると、頭上からため息を溢された。
「はぁ、襲わないけどさぁ…。僕は悲しいよ」
「あ、もう連絡は入れちゃったから。行こ」
「めっちゃお怒りのメッセージ連投されてるみたいだけどね?」
「大丈夫。今から移動だから返事できないって入れた。」
「大丈夫かな、次会った時僕刺されない?」
「下着常備してて良かった〜」
「一応聞くけどさ…、その、けっこう男の家渡り歩いてる、とかいうわけじゃないよね?」
お風呂を上がって、服を貸してもらい忘れて、下着のまま出てくると、慌てて止められた。
そして、服も貸してもらえたのだが、早速怒られの不穏な気配を察知する。
「違うよ。野宿になった時用」
「野宿になった時用!?ちょっと分かんないけど…そっか。その、だいぶ、うーん、」
「うーん、うん。もし男の家に泊まるんだったらもっとエロい下着なんじゃないかな」
「言葉も選んでもらえないかな?」
先ほどまで何故か、言葉に悩みまくっていたメーデルがキレキレでツッコミを入れてくる。
「私、メーデルのツッコミ好きだよ。」
「反省してもらえないかな??」
「まぁ、いいや。そこのソファ貸してね。」
私はそう言って、ソファに寝転がる。
ちょうどいい、寝る位置を探すために、身体を曲げたり向きを変えたりしていると、メーデルがまた頭を抱えていらっしゃるようだ。
「はぁー、まさかさ、そこで寝る気?」
「うん、そのまさかだよ。ベッド1個しか無いでしょ?」
「そうだけど、君がベッドで寝ればいい。僕はいつもソファで寝てるし」
今度は私が驚く番だった。
急遽の客人のために譲るならまだしも、いつもそこで寝てるとは、と首を傾げる。
「えっと、気を使ったが故の、発言じゃなさそうだけど…なんでベッドあるの?」
「両親が買ってくれたんだけど、使うのめんどくさくて…一回も使ったこと無いんだよね。あ、一応定期的に洗ってるよ」
そう言われて、じゃあ、と頷くと、ベッドのある部屋に案内される。
確かにメーデルが、1回も使ったこと無い、と言ったように、その部屋だけはモデルルームのように綺麗だった。
「じゃあ、ここね。おやすみ〜」
そう言って、足早に去っていこうとしたメーデルの腕を思わず掴む。
なぜ、ダブルベッドなのか。
「ヤリチン??」
「何が!?あっ…、あ〜、あっ…」
その一言だけで、納得がいったのか、上擦った声を残す。
「うーん、違う、違うんだけど…」
「両親が僕が模範的な人の暮らしをすると思ってて、恋人ができたときのためにとか、言う…」
メーデルが少し言いづらそうにそう告げる。
恥ずかしがっているのか、両親への申し訳なさで気まずいのか。
「そうなんだ。じゃあいったん、一緒に寝とく?」
「意味分かって言ってる?いや、分かってるからか…はぁ、こいつ」
「あははっ、…うわあっ!」
笑っていると、急に視界が天井に大きく移動し、メーデルの顔が近づく。
背後のフカフカはベッド、つまり押し倒されたのか。
流石に少し焦ったが、メーデルの様子を見て、理解した。
「…どうぞ?私は、いいよ、メーデル」
そう誂ってみせると、メーデルは上に思いっきり乗っかると、何度目かのため息を吐く。
「もしかして、人の心を読む能力でも持ってる?」
「しらない。おもい。退いて欲しい」
そう言うと、メーデルは上から退いてベッドの横に立った。
流石に、ベッドに座るのも不味い、という認識なのだろうか。
「メーデルって紳士的だし倫理観あるよねー」
「一緒にしないでよ。まぁ、僕は向こうに行くから、余計なことしないで寝てね。おやすみ」
メーデルはそう言うと、部屋を凄い勢いで出ていった。




