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「ねぇねぇ、知ってる?ドリンクバーの中身ぜーんぶ混ぜんの。」
「…僕に余ったのくれないなら、飲んでもいいけど。ここそういう価格帯の店じゃないんだよ。」
「冗談、流石にやらない。…ジュース飲んでいいかな?」
「ガキじゃん、誰も止めないよ」
メーデルが変な表情をするので、ちょっとムカつきながらドリンクディスペンサーのボタンを押すと、オレンジジュースが出てくる。
カップを取り出して、移動しようとすると、誰かにカップを取り上げられた。
メーデル、ではない、だって距離が違う。
恐る恐る目を向けると知らない人だった。
とても図体がデカい。
「ミカルアの女、思ったより可愛いな。にしても、まさか幼女趣味とは…はッ」
またまたチビ呼ばわりをされている。
こいつ、私の胸見えてねぇのか。
さすがに12歳以上の胸はあるだろう。
「あの、ミカルアさんがどうしたんです?私別に…」
「あぁ?甘い蜜吸っときながらしらばっくれんのかよ。あいつ公私混合してるんだよ」
正直言っておっしゃる通りです、としか言いようがない。
しかし、ミカルアさん、と聞こえたからか、メーデルさんがトラブルを感じ取ってこっちに来てくれた。
これからは常に手でも繋いでおこうかな、さっきガキじゃない、って否定したけど。
「何してるの?なんで、他の男といんの。」
メーデルさんがそう怒りながら、横に放り出されていたカップを取り返してくれていた。
「わかんない、この人がっ…うっ…」
ちょっとグスッと鳴き真似をすれば、周りがぎょっとしだした。
このガキみたいな見た目が思わぬところで役に立つ。
しかし、メーデルさんは何故かそれ以上にぎょっとした様子で、私を引っ張って移動する。
そして、少し人が少ないところまで一旦撤退させられると、何故か焦ったように怒られた。
「僕が一人で迎えに行ってんのに、子供みたいに泣かないでよ。成人が未成年に手を出してるみたいじゃん…!」
「…え、なんで?」
「はー…ほんっと。一応ここ宿泊できる店だからさ、そういう目的で来る人もいるんだよ。そして、ここじゃ相手が来たって思わせたほうが早いから、僕その体で行ったのに…」
メーデルさんが大きくため息を何度も吐く。
どうやら相当焦らせてしまったようだった。
「あー…、そっか。ごめん。でも、別に学生同士に見えるんじゃない?」
「あのねぇ、ああいうところに来るのは大抵下世話な人だからさ。ちょっと言いにくいけど、君が思ってるより君は幼い見た目をしてるんだよ。」
「そして、正直僕も細身とは言え身長は高いほうだからさ、大人と子供として周囲の人は見たがるの。分かった?」
「納得はいかないけど理解した。」
そう言うと、メーデルさんは、うぅん、と唸ったあと諦めてしまったのか、私を連れて部屋に戻った。
流石に手は繋がれた。
「ずいぶん遅かったね。お楽しみかな?」
「いや、まったく、てかそうは見えないでしょ。寧ろトラブルが起きたよ。」
戻ってくると、エレナさんがリップを塗り直して待っていた。
揶揄われたので、露骨にため息を吐いて否定してみせると、となりでメーデルさんがもっとため息を吐いた。
ため息を吐きたいのは僕だ、と暗に言われているのだろうか。失礼な!
「なに?何か起きたの?」
「リリがミカルアさんのアンチに襲われそうになってたから止めてきた。はぁ」
「溜め息めっちゃつくじゃん。そんなに厄介なやつだったの?」
「いえ、味方が敵だったってやつだね」
今ものすごく、メーデルさんから刺された。
「僕が彼氏として行けば一番早いのに、リリが子供みたいに泣き始めたから、僕が成人済みで未成年に手を出してるみたいになるところだった。というか、なったかも…」
「あはは〜、お疲れ様。てか、なんでリリちゃん相手に彼氏で行こうとしたの」
メーデルさんが黙った。
エレナさんがしばらく黙ったあとそのまま焦って驚きで声を零した。
「え、なに?えっ、メーデルさん…」
「もしかして、メーデル、下心?…痛い痛いっ!!ちょ、ごめんって!」
「効率を重視しただけ。ああいう身体目当ての人は、相手がいるって思わせた方がすぐに身を引くからね。」
君ら面倒臭い、とメーデルさんが一括りにしてくる。
私はともかく、エレナさんは別におかしくないだろう。
そして、エレナさんが軌道修正をして、アリアーコルの話の続きに戻る。
アリアーコルは、ゴードンさん以降に研究者は賢い人間が居ないため、今は権力も貴族というカタチしか残ってなく弱いだろう、とのことだった。
ゴードンさんは年がもう140超えているというのに、今も研究所での研究はしているようだった。
それと、ダジリアさんは比較的しっかりとしていて勤勉なため、その2人でどうやら何とか補っているようだった。
リアリィスさんは以前、古株貴族の婚約者に手を出そうとして、酷い目にあったこともあったなど、案の定の能力だ。
それて、アリアーコルの経済は既に弱っているので、証拠を押さえて提出さえすれば手こずらずどうにか出来るだろう、ということだ。
逆に言うと、やはり証拠を集めるしか無いようだが。
そして、ついでに教えてもらったが、研究所では他にも禁忌の天外の研究をしているそうだ。
「ふと、思ったんだけど、ほんとに禁忌なの?」
「あぁ、多くの人が捕まってはいるよ。ただ、権力ある人だけが生き残ってるだけで。ミカルアさんも大標者を助けたから許されてる。」
へぇ、と頷くと、エレナさんが急に席を立った。
「私、この後打ち合わせあるから、急がなきゃ!ごめん、帰るね!」
多分ここまで粘って一緒に居てくれたんだろう。
エレナさんはそう言うと、メーデルさんがサラッと差し出したタクシー代を受け取り、慌てて出ていった。




