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「君、一番デカいサイズ頼んだんだね…」
「エヘヘ〜…まぁ、一緒に飲んでくれるかなって」
座らせたメーデルさんに半分に分けたパンを差し出しながら、少しフラッペを差し出す。
メーデルさんは不満を垂れながらも、ストローを口に含んだ。
ちょっとは飲んでくれたようで、また、カップを返される。
「僕、甘いの嫌いじゃないけど、ここまで甘いのは得意じゃないから。このパンは食べるね。」
「そうなんだ、意外。なんか甘いの好きそうなイメージだった」
どういうイメージ、と言いながら、パンは食べてくれる。
私は飲み物を全部飲むなら、食べるはずだった残りも差し出す。
どっちも少しずつは食べているので、もういいや。
口をつけた食べかけで申し訳ないが、メーデルさんは少し表情を動かしたが受け取ってくれた。
「君さー、ちょっと高慢?」
「…メーデルって結構面倒見いいよね」
「今そういう話じゃなかったよね?確かに食べるけど。はぁ~、ミカルアさんの気持ち少し分かったかも。」
私は残りのフラッペをごくごく飲み進める。
メーデルさんは食べ終わったようでこちらをじーっと見つめている。
飲みづらいな、と思うけど、今の私に文句を言う資格はない。
あまり我儘言っていると、ヘッドロックを決められる可能性もある。
ミカルアさんと比べて、かなり武力行使を厭わない人だから。
あと、少しというところでお腹いっぱいになる。
これくらいなら、いいよね?と思って、メーデルさんの口にストローを入れた。
「んむ、ちょ…」
慌てて吸い込んでくれたメーデルがムッと咎めるような視線を送ってくれる。
そんな可愛げのある声が出るんだ、と思って笑ってしまう。
「ちょっと?僕無理やり飲まされたんだけど?何笑ってんの。」
「ごめん、なんかリアクションが可愛かったから」
「はー、お会計してくるから、出る準備してて」
ちょっと嫌そうにしながら席を立たれる。
やはり、男の人って可愛いって言われるの嫌いなのかもしれない。
「え、良いよ。私が頼んだんだし、自分で出すよ」
「僕が誘ったんだし、女の子に払わせるわけには行かないよ」
「メーデルは何も頼んでないでしょ?」
「いや、そうだけど……、…え、今呼び捨てにした?」
しばらくの言い合いの後に、メーデルさんがとても動揺した。
そんなに驚くことだろうか、と考えてしまう。
しかも、一応最初は、メーデルさんから言い出したことだろう。
「え、うん。ミカルアさんに伝えるときにそうしていいって言われたし」
「良いけど…もういいや。早く行こう。」
何故か呆れたメーデルさんに手を引かれて店を出る。
しまった、あまりにもスムーズに奢られてしまった。
あまりにもどよーんとした空気が醸し出されていたからだろうか、目的地に着く寸前、メーデルさんにツッコまれてしまった。
「そんなにおごられるの嫌だった?あはは、ほとんどの女の子喜んでくれたのに」
「そんな遊び人のメーデルに伝えとくけど、私そういう形式上の優しさあんま好きじゃない」
「遊び人って…別に彼女出来たことすらないよ。あ、ここね」
そう言って、建物に案内される。
家に行くわけじゃない、とは聞いてるけど、ちょっと外観ラブホ気味なの辞めて欲しいかもしれない。
「彼女が居ないってことは、恋人にせずヤりまくってるってこと?」
「ちょっと、人をヤリチンにしないでよ」
内観は…、内観も、ラブホテルみたいな見た目を
してる。
メーデルさんがフロントで何かを言って、そしてこちらに戻ってくる。
「よし、行くよ。」
そう言って、手を引かれて連れて行かれる。
ミカルアさんにああは言ったが急に不安になってくる。
「え、今から私喰われるわけじゃないよね」
「違うって」
そうして、部屋に着くと、どうやら”もう一人”の人が既にいた。
そうして、そのインフルエンサーには何故か見覚えがある。
「メーデル、えっと。」
「こちら、エレナさん。ネットでカフェ巡りで有名なインフルエンサーだよ」
そう紹介された女性にはほんとに聞き覚えもあった。
しばらく考えていると、相手が自己紹介をしてくれた。
「私はエレナ。最初に、私はアリアーコル家が大っきらいなんだけど、エルヴィアさんは応援してるの。彼女は特別だから、エルヴィアを罵倒したら許せないからね」
そのピリピリとした警告をされる。
一応、わかった、と返事しておく。
だって、私はエルヴィアさんに恩があるくらいで、怒りなんて1ミリもない。
「えっと、エレナさんよろしくね。私はリリ。エルヴィアとは仲いいから大丈夫」
「…待って。リリちゃん。気づかなかった。私だよ、ほら、バイト先に居たでしょ?」
急に、エレナさんが動揺するので、私も驚いて、顔をじっと見る。
バイト先、と言われて、先ほどまでの見覚えが繋がった。
「あぁ!えぇっ…、エレナさん?詳しいんですか?」
「まぁ、そう、ね。うん、ちょっと変な感じするけど。」
エレナさんも少し歯がゆそうにしている。
お互いに初見で気づかなかったからこその、この微妙な距離感が心地悪い。
そう感じていると、エレナさんが何か話題を投じてくれた。
「てか、少し前からバイト来てないけど…どうしたの?」
「…ん?あぁ、ミカルアさんにあれからセクハラ騒ぎあったじゃん?それで強制的にバイト辞めさせられた」
そう言うと、とエレナさんはどこか乙女の顔をした。
「えぇ、ミカルアさまにそんなに愛されてるの!?ツーコメルじゃ、恋してる人で溢れかえってるんだよ」
私は思わず苦い顔をする。
大抵の人がこういうリアクションをするのだ。
メーデルに目を向けると同じような表情をしていて安心する。
「はぁ、ミカルアさんにほんといっつも束縛されてない?まぁ、君はちょっと変な輩寄り付けがちだけどさ」
フォローされるかと思いきや、エレナさんへの餌と私への扱き下ろししかされなかった。
さっきのやり返しだろうか。
「メーデル、私さっき、残りのご飯押し付けたのそんなにやだった?」
「違うって。いや、まぁ、そういうことだけど。そういう距離感の近さがヤバい人を寄り付けてるんだよ」
僕じゃなかったら危ないよ、なんて言われるのをエレナさんがすごい顔して見ている。
「エレナさん、なぁに?なにか?」
「…なるほど。ちょっとびっくりしただけ。見てられないのではやく本題に入りましょう。」
そう言って、エレナさんの講義が始まった。




