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「ミカルアさん、行ってきますから。」
メーデルさんとの待ち合わせ場所は駅近なため、バスで行く。
そのため、ミカルアさんの車の運転はいらないので、研究してもらってても構わないのだが…。
「ミカルアさん。何でついてくるんです??」
「送りますよ。駅まで見送ります」
「束縛が強い男は嫌われますよ」
「嫌いですか?」
「どうでもいいですね。」
なんともいえない、うざ絡みに嫌味を返すような、そんな応酬が続くが、ミカルアさんは一歩も引かない。
もうそろそろだと、時間を見れば、家を出たほうがいい頃合いだろう。
「メーデルが待ってるんで。」
「いつの間に呼び捨てに?」
「クラスメートで友達なんで」
「友だちに会うにはやけにお洒落ですね?それで相手に自宅に?」
「まぁ」
ミカルアさんはどんどん不機嫌になっていく。
このなんともいえない返答はメーデルさんからの悪知恵だ。
折角だから、メーデルさんを呼び捨てにして、家に行くって誤解させたままを突き通せ、と。
メーデルさんはそんな要望を言った。
どうして、そんな捻くれたことを思いつくのか、私には想像もつかないが確かに面白そうなことには違いがないので協力することにした。
増々不機嫌になるミカルアさんに笑いを堪えるのがしんどくなってくるので、顔を背けて玄関に向かう。
「いつ帰ります?」
「さぁ?」
「さぁ、とは。」
扉に手をかけると、それを制される。
ミカルアさんに筋力で勝てるわけはない。
「お昼ご飯は食べてきますから。もしかしたら、少し早めの夕食を取ってくる、かも〜?ぐらいで」
「ずいぶん、長居するんですね。」
「そうです?普通であれば友だちとこれくらい過ごすことありますよ」
普通であればではないだろうけど、なんて声には出さない。
そりゃあ、練りに練った情報の交換と会議のあと、少し遊んで帰るから。
これほど予定を詰め込めば、こんなもんだろう。
「で、もう行っていいですかね?」
「待ちなさい。迎えに行くので、終わったら連絡を」
「いっつも過保護そうだよね。了解。連絡は入れる。」
「前科があるじゃないです?過保護で結構。」
「束縛してちゃモテないよ。」
「そうであれば、喜んで束縛しますが」
「うわ、モテ自慢?」
ついには口を噤んでしまったミカルアさんを数秒眺めて、家を今度こそ出た。
思ったよりも反応してくれたなー、なんて考えながら、徒歩で駅まで向かい、電車を待つ。
恐ろしいほど均等な速度で進み、正確な時間に着く、そんな電車に揺られれば、眠くはなってくる。
眠気覚ましにスマホをして過ごすと、なんとか寝過ごさずに目的の駅に着いた。
「チッ、メーデルさんまだいないじゃん。」
歩いて、待ち合わせ場所の店の前に着いたが、メーデルさんらしき人はいない。
人でごった返している隙間を通って店の中に入ると、窓際の席を選んで座った。
何を頼もうか、メニュー表を眺めながら考える。
メーデルさんにツケるのが前提だから、限定を頼もう、そう決める。
チョコ蜜フラッペと称される糖分爆弾のラーズサイズと、チーズパンとカヌレを頼む。
流石にチーズパンとカヌレは小さいが、メーデルさんが見たら渋い顔をしそうだ。
食べれなかったら分けてあげよう、と考えて、店員さんが去っていったところで、メッセージを送っておく。
着いたから近くのカフェにいるよ、と送れば、4秒も経たず「そっちに向かうね」と返事が来た。
スマホをカバンに戻して、外を眺める。
しばらく待っていると、先に飲み物が来た。
受け取ると、思ったよりも大きく、400mlはあるだろう。
少し顔が引きつってしまったが、気を取り直して口をつけると、味は美味しかった。
ついでに、ちょうど到着したパンも美味しい。
しかし、そうして堪能していると、味がまずくなる出来事が起きてしまった。
「ねぇねぇ、お姉さん。相席していい?」
「…あ、私か。いや、ちょっと人を待ってるんで。」
大して顔の良くない男がナンパしてきた。
いや、これは語弊があって、私が顔がいい男に囲まれて感覚が麻痺してきただけなのだが…。
にしてもファッションがダサすぎる。
ドクロのネックレスこそないが、平静初期のギャル男のような幼稚な黒くてゴテゴテとしたファッションだ。
こう見ると、メーデルさんも顔がいいのかもしれない。
「でも、まだ来てないんでしょ?いいじゃん、それ一人で飲める?」
「飲めないからなんですか?」
「アハハ〜、カワイ。張り切ったら多すぎちゃった?ちょっともらってあげる。」
張り倒してやろうか、という言葉は飲み込む。
勝てない相手に勝負は挑まないのが鉄則だ。
でも、ここで法紋を放てば勝てるだろうな。
(だって弱そう)
黙って睨んでいると、横に座ってきた。
はぁ、と力なくため息をつくことしかできない。
スマホを取り出し、メーデルさんにSOSを入れる。
この手の男は、彼氏っぽい連れが居れば逃げるだろう。
と、入力しているが、メーデルさんは既に居た。
何故気づいたかというと、隣でなにか大きな音がしたから。
「遅れてごめんね。まさか、君が断れないタイプとは思わな…あ、違うね。断っても無視してきたのか」
顔をあげると床に拘束されるナンパ男と_そのナンパ男を拘束しているメーデルさんがいたからだ。
私の睨みを受けてか、言い換えたメーデルに、お礼をいう。
ナンパ男は目を白黒させながら、床に力なく身を任せている。
「いや〜、危なかったです。あとちょっとで法紋放つところだった…」
「だよね。やっぱり、君黙ってタイプじゃないもん。一瞬、僕あれ、誰だろうって思っちゃったから、あはは」
なんとも不快な物言いをするメーデルさんを隣に座らせると、解放された男は逃げるように去っていった。




