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メーデルさんが送信取り消しをして、流れから、ミカルアさんもそうするのだと分かる。
儀式的なソレを一部始終を見ながらも配慮されている本人として、どうするんだろう、そう考えていると、ミカルアさんもミカルアさんで白々しくスマホを返してきた。
「はい、どうぞ。返しますよ。」
そう言って渡されたので受け取って、スマホの画面を開くと、本当に綺麗さっぱり会話履歴は消えていた。
私は少し悩んで、ちょっとだけ質問してみた。
「…あれ。なんか文字打ってなかった?てっきりメーデルと会話してるのかな?って」
「いえ、してませんよ。メッセージアプリは使ってません。」
こいつ、白々しい。
まぁ、話したくないなら良いだろう、と考える。
私は返事送るから待ってて、と言うと少し眉をしかめながら了承される。
『なんか、今からミカルアさんと話すから無理そう。今日夜遅くからじゃ悪いし、明日がいいよね?』と送ると、どこかの誰かが嫉妬するからそれが良いよ、なんて返ってきた。
ごめんねスタンプを送信して、向き直ると、一応告げておく。
「あぁ、明日はメーデルさんところ行くから。」
「えぇ、良いですよ。分かりました。」
澄まし顔での返事は少し腹が立ったが、冷静さを保ちながら、流した。
暫く考えて、まず軽いジャブを打つ。
「そうだ、提出したハンドメイドのやつ、どうなりました?受理されたならもう合格かどうか聞いとこうかな、と思って」
「ああ、あれなら一発でOKですよ。どうやら、コンテストに出す学校代表の候補予定になっています。」
ミカルアさんもミカルアさんでなんともないように話題についてきた。
そして、嬉しい話を教えてくれた。
私のデザインセンスが世界に知らしめられる時が来た!なんて思ってみる。
他にも身近で起きた話を聞いてみる。
あの、例の狂った男だ。
「ヌンフタマリー・マスケリン…ってご存知です?」
「…えぇ、ネットでタイムラインに流れてきたんですか?」
意外そうにしたミカルアさんに小首を傾げる。
あいにく、この男をネットで見たことはないのだが…有名なインフルエンサーなのだろうか?
しかし、凡人の手厳しい印象を受けていた。
そんな人間の、自分で考えようとしない烏合の衆だらけなソーシャルメディアを使うとは思えない。
「どうやら違うようですね。…まさか、本人に会いました?妙なことを教えられたわけではありませんよね?」
「特には。不能だと判断したようで、毒を吐かれましたけどね。」
不審者みたいに自分の有益性を説き、新しい動物の求愛行動みたいに捻くれた味方表明をしてきた、例のヌンフタマリー。
私は会った当時の話と、ネットとはどういうことなのかを問う。
「貴方は…どこでも、メーデルと会ってません?」
ミカルアさんが少し眉を顰める。
しかし、すぐにそれを堪えると、ヌンフタマリーに話を戻した。
「まぁ…そうですね、彼は研究会に属さずジャンル問わず研究成果を上げています。昔はレランクェス研究所のコーディウ部門の下で働いていたようですが、数年前に辞めているようで。今世間では彼はレランクェスに報復をしようとしているなんて噂もあります。」
リアリィスの攻撃を受けた今、コーディウさんとも会ったことある私としては邪推してしまう。
もしかしたら、能力者の流出を恐れたコーディウさんが敢えてデマを流しただけかもしれない。
そして、その可能性のほうが高いだろう、と何処か私はそう思っている。
「その実、彼は…ただ人生を謳歌しているだけですけどね。彼の敵はもっと…」
「知ってますよ、私と同じ境遇なのもあって、ミカルアさんと同じのを敵にしてるんでしょう?私の想像でしかないですけど、彼がその激情を向ける相手といえばその資格があるのは、それだけじゃないですか?」
言い淀むミカルアさんに、知っていると伝えるため、食い気味にそう言い込むと、ミカルアさんは黙った。
「だから、メーデルさんと仲良くなるの嫌なんですよ。知りすぎてます。貴方はもっと楽に生きていいのに…」
「それで、ヌンフタマリーってどうなんです?研究者として、の話ですよ〜。」
メーデルさんから情報を仕入れていることに苦言を刺されたので、話を入れ替える。
ミカルアさんはちょっと考えたあと、話し出してくれる。
「口が上手くなりましたね、はぁ…。彼は孤立しているだけで至って普通の研究者ですよ。まぁ、強いて言うなら、貴方と同じように見た目から転生者って分かるんですよ。つまりそれくらい核が力を注いでるんですよ。」
それでも、その魔力も活用しながら研究していたようで、身近で人々が転用できる魔力を使った便利なシステムや、天外から受けている自然環境の究明。人の生存システムから病気を治す方法。よく居る虫の生態構造。
多くの文明は彼により生み出されたようだ。
「彼が独立して研究し始めてから7年経ちますが、俺も彼とは面識があります。お話をしたことも共同研究したことも」
「…っ、もういいでしょう。話を変えてください」
私が沈黙を貫いたまま、眺めて話を聞いていたのに堪えたのか、ミカルアさんは音を上げた。
そう言われても、と思いながら、今度はメーデルさんとミカルアさんの会話に触れてみる。
「時々話を逸らしたりするのに、それでも現実に触れさせてきますよね。ミカルアさんってちゃんと私のこと好き?大事にしてくれてます?」
半分くらいは、メッセージを見ていたことを自白するようなものなので、目を逸らしながら聞くと、思わぬ音が目の前から聞こえてくる。
なに、と思いながら、目の前に視線を戻すと、動揺で喉を痛めながら、大事ですよ、と返ってくる。
「えぇ、安心してください。きちんと好き、で…娘のように、好ましく思っています。えぇ、大事です」
動揺と平静を繰り返しながらミカルアさんはそう答えてくれた。
んふ、と堪えながら笑えば、おい、と睨まれた。
あぁ、あとこの前一緒にいた女性は誰ですか?
「…え、あ、なんです。別に」
想定外の動揺をされて、思わず何が、と声を零してしまえが、ミカルアさんが悪態をついてきた。
「貴方はぁ…はあ、そうですよね。情操教育もしたほうがよいのでしょうか…。えぇっと、それでどの人でしょう?仕事柄、女性とだけ言われたってピンときませんよ」
「そっか。えっと、なんかピンクの髪の毛で毛先が白い人。えぇっと、確か真っ赤なヒール履いてたかな?」
「ああ、アレですか。ちょっと、ですね…」
「お金を渡していましたよね。ここの公序良俗交接制限条例で17時半から3時までは繁華街でのお金を渡す時点で駄目ですよね。」
そう詰めるとミカルアさんは黙ってしまった。
聞き方を間違えてしまったかもしれない。
かなり拘束力の強い条例なので守ってほしい限りなのだが…。
「確かに配慮が足りませんでした。…いや、おい、なんで貴方あの時間に!」




