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「貴方は誰ですか?」
「ふはは、私ですね。私はレランクェスの下で、アンシュさんと1時期、一緒に働いていたのですよ。」
メーデルさんの最悪な予言を思い出す。
実際、メーデルさんの言ったとおりになってしまったのだが、この男は本当に誰だろう。
学生…には、見えないが。
しかし、制服からは学生であるのだと理解できる。
見た目も十分若く見える。
しかし、こう…貫禄?のようなものを感じさせた。
「はは、意外と要領が悪いようで。そう周囲の状況に鈍いようで良くそんな役が務まりますね?」
腕を組みながら厳しく言う。
どうやら味方でなく敵かもしれない。
困惑以外の処理ができていない脳が必死に危険を探す。
「えぇ、貴方、挙句には優しければ味方なんて単純な思考回路なようで」
「自分で言うのもナンセンスですが、私は貴方に役立つと思いますけどね。」
恐ろしいくらいに全ての思考を読めば、鋭い言葉のナイフで刺してくる。
そして、さっきまでの無礼が嘘かのように、利用価値をアピールしてくる。
正直な性格ともいえるが、幾らか都合が良すぎる気もする。
まぁ、最悪な性格ほど信用できるとも言えるが。
気を許せない関係であれば、信用しないかわりに対等な関係が築ける。
そういう話は聞いた。
「ちょっと。何か言ったらどうです?連絡先は交換しておきましたら、何かあったらどうぞ」
どうやってやった?と聞くまでもなく男は去っていった。
でも、私には一周回って、メーデルさんの”可哀想なことに”には共感できなかった。
こんなおかしいやつに目をつけられて…的な意味じゃないと、騙してこようとしているようには見えなかった。
どちらかというと、不審者です、と自己紹介しているようなものだから。
そう思っていると、スマホから通知がなる。
メッセージ通知らしく、先程の男からメッセージが来ていた。
『いくら正直っぽく見えてもいくつかは嘘が混ざっている、なんて詐欺師のよくある手口ですよ。音質育ちには理解できないでしょうが』
文章でもこのテンションなんだと、半分くらい引きながら、返信しようと指を動かす。
そして、名前が見れるので名乗らない男の代わりについでに確認しておいた。
ヌンフタマリー・マスケリン、と律儀でシンプルにフルネームで載っている。
先程の印象通りのアカウント名に思わず嬉しさを覚える。
クスッと笑っていると、横から人が急に近づいてくる。
動揺して叫ぶ間もなく、背後に回られてスマホを取られた。
ようやく、平静を取り戻し、背後の人を振り向いて確認するとメーデルさんだった。
「ん?あぁ、そろそろ動くかなーみたいな思ったら。やっぱりもう絆されてる。ほんとあの男の言うとおりもうちょっと人を疑いなよ」
君は今、世界を壊す権利も救う権利も持っている、なんて夢物語のようなことを言われる。
メーデルさんは口酸っぱくこの事をいうので、もはやそうなのかもしれないけど、でもその選択の時期は訪れていないから現実味はない。
でも、きっと訪れたら既に手遅れなのだろうけど。
そう考えて1つ気づく。
もしかしたら、既にその選択が始まっているのでは?
なんとも恐ろしい想像に身震いしていると、メーデルさんのぼんやりした声が今度は脳を支配する。
「なに?考え事?まぁ、僕を疑ってくれてたらいいんだけど、君のことだからそうじゃないんだろうね」
「僕もね、人間だから、影響を受けるんだ。実は、ちょっと君をこの世界から救い出したいって思ってる。少なくとも、僕にはそれができる、ほんの少しの犠牲で」
大きな世界から見た時のサイズ感だけど、という小さく付け加えられた言葉には、何人もに鈍いと言われた私にも察せられた。
それはおそらく、この国、いや星を犠牲とした成り立ちなのだと。
詰まるところ、ミカルアさんも言っていたように、転生者である私やアンシャさん、メーデルさんには現地の人にはない特殊な権利がある。
すべてを投げ出すという。
メーデルさんはまだ私のスマホを弄りながら、何かを紙にメモしていた。
何をしているのか、問う前にメーデルさんが口を開く。
「てか、このスマホ、最新型だよね?こんな高いもの珍しい。ミカルアさんからもらった?」
結局私の聞きたいことは聞けず、メーデルさんからの質疑応答になる。
まぁ、ちょっと色々あって…そう。
なんて濁せば、別に興味なさそうにふーん、なんて返される。
「ねぇ、何し…」
「あ、あの男は面倒くさいし、だるいけど悪いやつじゃないよ。転生者システムについて、一通り理解してる。教えてくれないんだけどねー」
そう言われて、ふと先程の男の容姿を思い出す。
瞳こそ、最初にメーデルさんに言われた金色じゃないものの、私と同じ特殊な模様が入っていた。
あれは、何か特殊な転生者の構造なのだろうか。
「あー、あまり確信に近づきすぎても、かえって危険だよ。いつどこで、何が見てるかなんてわかんないんだから。」
そう言いながら、メーデルさんはスマホをようやく返してくれた。
あぁ、なんて意味のない返事をすると笑われる。
「人にスマホを貸して、抵抗しないなんて…もっと警戒しなよ。それとも僕のこと、とっても信頼してくれてる感じ?」
そう言いながら予定があるらしく、どこかに向かっていった。
そして、少しして通知音がなった。
メーデルさんから、今度家にでもおいで、と住所が送られてきていた。




