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売店で買ったご飯を持って、ミカルアさん改めミカルア先生のもとに向かう。
本日のお昼ご飯は、グラダス肉と茄子の串煮、連続バター炎の2点だ。
最初は名前に恐れ慄いた連続バター炎だが、これが案外美味しい。
樢麺という薄緑色の粘りのあるような麺に、肉、バターが入っていて、形容し難い、塩味と辛味のある料理だ。
そして、そんなご飯は今私のカバンの中で揺れて、ミカルアさんのいるであろう第4理科準備室に向かっている。
ミカルアさんは最近律儀にずっと理科準備室で待ってくれているのだ。
人目を気にしつつも、私に必ず合流できる場所という特徴に当てはまった場所はそこしかない。
そんなわけで理科準備室に行ったわけだが今日は先約がいた。
扉を開けずともガラスから見える頭は2つだ。
小紫色と、もう一つ、見覚えがあるといえばある…ピンクラベンダーが見えた。
それは私が苦手なリアリィスさんで、思わず音を立ててしまう。
手に持っていたお昼ご飯を落とした。
慌てて拾って逃げようとすると、去り際の振り返りで、こちらを見る2人が見えた気がした。
その確認すらできず走ったが、どこに行くかにすら迷ってしまい、結局は不機嫌そうなミカルアさんに拘束されてしまった。
場所は階段、生徒が教師に壁ドンされるというアウトな光景なわけだが、ミカルアさんはどう思っているのだろう。
流石に気を使ってもらいたいところだけれど。
「ミカルアさん〜?えっと」
「面倒くさい人を私だけに押し付けて逃げるだなんて卑怯じゃありませんか?貴方を待ってた俺を助けず置いて逃げた挙句、俺と話すのを嫌がらないでください」
「は、はい、確かに助けなかったことは悪いと思っています…。しかし、本人が近くにいるのですがぁ…」
掴まれた方じゃない片方の手の置き場を探し彷徨いながら返事をすると、もう一方の手も拘束されてしまった。
とても近い距離なせいで、僅かに髪が顔にかかる。
これを見られているのがリアリィスさんだというのが更に胃が痛む。
「だからなんですか?少しは強く拒否をしたほうがいいでしょう。一芝居打てませんか?」
「打ちたくないっていうのは…」
「それなら、俺が勝手にやりましょう」
そう言いながら、背中に手を回される。
角度的にはリアリィスさんが見えなくなり、多分リアリィスさんからも見えないだろう。
先程までスマホを触りながらこちらを見ていたリアリィスさんは、今どんな顔をしているのだろう。
そう思っていると、急激な動きが来た。
ぐっ、と藻掻こうが、ミカルアさんは全速力をやめず、視界は定まらない。
ふわふわしながら、私が今度、正常に戻ったのは個人室に来てからだった。
ミカルアさんに状況確認をすると、リアリィスさんの隙をついて、法紋でここまで来たそうだった。
「安心していいです。鍵はかけてますから。」
「よかった、のか?まぁ、ありがとうございます」
「実験の話はしづらいですが、まぁ十分ですか」
そう言うと、私のお昼ご飯を差し出してくる。
は?と思っていると、どうやら移動でぐちゃぐちゃになるのを心配して持ってくれていたようだ。
マッチポンプのような感じは否めないが、一応感謝して受け取る。
「にしても、その程度の量で大丈夫ですか?」
「全然大丈夫ですけど…というかまだ環境に適応できてないんですけどね」
そう嫌味をいうと申し訳なさそうにされるので、そこで黙る。
ミカルアさんは既に丁寧に食事を摂っていて、なんというか不公平を感じた。
「はぁ、残念な話がありますが、聞きます?」
ミカルアさんは箸を置き、珈琲に手を付けていた。
すでに、半分ほど、減っている。
まぁ、と適当に頷けば、ミカルアさんは先程のリアリィスさんの話をし始めた。
不快ながら、飲み物を啜りながら黙って聞き続ける。
「数日前のアリアーコル妹のほうの事件、あったでしょう?」
「はぁ、嫌な予感がしますよ」
「パルオピアを通じてリアリィスに伝わりました。」
そりゃあそうでしょう、と流すと、まだ分かりませんかと睨まれる。
狂人のやることなんて理解できない、というのは言い過ぎだが、少なくとも何故かそれで私にヘイトが向くのか。
一向に思いつかない。
「物分かりが悪くてすみませんねぇ」
なんて、睨み返せば、ため息をつかれた。
ミカルアさんはもう食べ終わったようで、片付け始める。
「あの事件、あなたも関わっていたでしょう?証言が権力で全部漏れたようで、あなたの発言もバレたようです。」
「特に何も言ってないですが」
「えぇ、そうですね。『バイトを辞めるよう言われたから反抗して家を出たくて気絶させた、と本人に聞きました。』他には…『以前から家族仲は良くないと聞いてたし、父親がいるのに気づいた時点で調子が良くなさそうだった。』個別の事情聴取は問題ないです。」
「しかし、ヘルナーヴィさんとの会話がバレていたようです」
そう言われて、思い出す。
ヘルナーヴィさんに、事情を話していた。
いや、しかし、特に問題があるようにはやっぱり思えなかった。
「事件についての会話ではありません。事前の会話が険悪だったでしょう?そのせいで、愛人であるヘルナーヴィを陥れるため、パルオピアの失脚を狙ったなんて、そんな意見も生まれてます」
考えもしなかった視点に思わず黙る。
黙っていても気まずいので、箸を進めながら、視線は机に落としていた。
ミカルアさんの表情を見ても、特に何か怒ってるようには見えなくて余計に頭痛がする。
「もう良いんですよ、そこは。全部どうにかしておいたんで。それがリアリィスにバレたからの先程の出来事につながるんですが」
何も良くないですよ、と伝えようとしてタイミングを一瞬逃がした。
まぁ、ミカルアさんが露骨にため息をついたので、私はすかさず一言だけ言わせてもらう。
「どうやったのかだけ聞いといてもいいですか。その火消しが怖いんですけど」
「いえ、貴方は何も悪くないので、事実を伝えただけですよ。俺が言えば、だいたい黙ります。例えアリアーコルでも」
貴方は悪くない、と言っておきながら、やはり脅しでどうにかしたようだった。
かえって、私の心証が悪くなっているが気するが、もうここは妥協するしかないのだろうか。
「ただ、学生間のは何か起こるまでどうにもできないので。リアリィスが『教えろ、退学にできないのか、なぜ寵愛しているのか』と押し入って詰めてきたんですよ。猫撫声が多いのに、珍しく怒ってましたね」
「だいたい、ミカルアさんの露骨さも原因だと思いますよ?ヘルナーヴィさんだって、ミカルアさんのマウントをずっとされていただけですし」
そう言うと、すでに知っていると平然と返される。
この人は、もしかしたら平然と自分がモテている話をしたのかもしれない。
時に恥や外聞を気にしない様子が目立つが、ほんとうに際限がない。
「ミカルアさん?いや、やっぱいいです。」
「まぁ、俺は適当にフォローしておきましたよ。貴方、朝に会ったアリアーコル妹…名前はもう知ってましたっけ。エルヴィアと話していましたし、アリィスがそれを知ったら機嫌悪くなるでしょうね」
「そうですね…、交流会が怖い。」




