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それよりも、店長が今にも強硬手段に出そうだった。
まるで、戦闘の準備だというように周辺のカウンター周りを整理しだした。
思わずヒヤッとしていると、それを見かねたかのように、アリアーコルさんが出てくる。
まるで、攻撃をする気のように魔力を凝華させ、そのエフェクトのように綺麗な法紋を構えていた。
法紋は人によって異なるが、アリアーコルさんのものは一流ゲームの演出並みに綺麗で見入った。
パルオピアさんは一瞬怯む。その後すぐに目を丸めた。
「店長さん、その…絶対に暴力振るわないでくださいね。」
アリアーコルさんは店長さんが強硬手段に出ることは望んでいないようだった。
パルオピアさんに近づいていき、話しかける。
「バイトは辞めません。名字はもう、捨てましょう。決して殺さないけど、攻撃を食らってください」
「どういう…だめに決まっているだろう!」
再び激昂し始めたパルオピアさんだったが、一撃で気絶する。
アリアーコルさんが結局、攻撃しちゃったわけだが、冷静に店長に警治を呼んでくださいと指示をし、私のとこまで来た。
この前、法の本に載っていた警治のことだろうか。
3つある実力組織の内の一つらしいが、身近な犯罪者逮捕をしているという。
ネットで俗称としてケジと言われているのを見た。
「父がバイトを辞めるように呼び出したことに怒って癇癪を起こした娘が父を気絶させた、と伝えてください。横の、父の愛人候補さんも事実であればひどく言っても良いので。」
その目の様子を伺っても、内心は探れないが、一種諦めのようなものも感じた。
憎しみよりも束縛からの解放を感じてそうなのは、なにも実の父に執着を感じていないからだろうか。
元が平和な家庭環境を持っていた私には分かり得ないことだ。
理屈としては理解しても、感情が音を上げている。
しばらく、呆然としていると警治と救急が来た。
救急がパルオピアさんの様態を測ると不思議そうにする。
「眠っているだけのようですが…。」
「通報されたのはあなたで間違いないですか?店長さんですね」
「はい、この店の店長です。従業員が法紋をお客様に放ちましたので」
「しかし、パルオピア様がなぜ」と救急員は言いながら、警治が拘束している例の特徴を持つ従業員を見て驚くと同時に頷く。
出来が悪くて言うこと聞かない娘か、なんて嘲笑しながら作業し始めたようだ。
魔力の込める量の調節が上手いのに、出来が悪いわけがないと思うが、どういうことなのだろう。
「寝ているだけならば罪は重くならないだろうが、今の立場はなくなっちゃうと思うよ。覚悟しときな、お嬢さん」
可哀想な子供を見るような目で、アリアーコルさんに話しかける警治官に、なんだかんだアリアーコルさんが気が楽そうにしているように見えた。
はぁ、でも…なんて呟いているが、先程の絶望に満ちた声よりもいくらでも軽く、今であれば演技だと悠々にわかった。
そのまま、パルオピアさんが救急に、アリアーコルさんは警治官に連れて行かれた。
ほかの客はその場で事情を聞かれ、私たち他の従業員は個別で少し質問された。
店長はあとから、警治署に行かなければいけないようだったので、今日は仕事を終えて帰るように指示が出た。
私はミカルアさんにメッセージを送る。
単刀直入に、事件が起きたから帰らなきゃいけなくなった、と送れば光の速度で返信が帰ってきた。
すぐにこちらに向かうとのことで、10分程度で到着予定らしい。
私は後片付けのお手伝いをすることにした。
店長さん自らお客様への返金対応をしているようなので、それが終わったお客様のお皿を下げて、食洗機に選別して入れていく。
店長さんがお客様に謝罪を入れているのが見える。
どんどんお客様が退店していっていたが、流石にもうそろそろ着替えたほうが良い時間なので、店長さんに断りを入れて、お先に更衣室に戻る。
荷物を持って、裏口を確認すると、ちょうどよかった。
「ミカルアさん、急遽ですみません。」
「いえ、それより、さっさと帰りますよ。客に見つかって先程は面倒なことになったので。」
ちょうど、息を荒げて立っていたミカルアさんは足早に車まで向かう。
その間、数人が遠巻きに見ていたのは少し気になったが、ミカルアさんのファンなんだろう。
無事、車内に乗って、起動されると、安心感が凄かった。




