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では、と出ると、ヘルナーヴィさんからの視線を感じた。
動向を監視されているみたいで嫌に感じる。
それを無視して、アリアーコルさんと休憩室に入る。
「ありがとうございます。姉が最初に生まれて、そのあと私は、兄と双子で生まれてきたんです。男子供ができたら…それ以降の子供って邪魔じゃないですか、煙たがられてるんです。それでも1人だけ扱いが違ったら外聞良くないので、それで、妙な束縛されてるんですよねぇ」
緩く説明をされてなるほど、と頷く。
本人は特に憤りも感じないが、大変だというようで、まさに教育の賜物だったのかと思う。
アリアーコルについて気になっていたが、この様子だと聞いたら不快に思われるだろうと止めた。
私は水分を補給だけして、休憩室を出る。
戻ると、キッチンじゃなくホールメンバーから呼ばれた。
女性客が私を出せと言っていると。
妙な指名過ぎて、一瞬で誰なのかわかった。
一応、黄色の目で、ライムグリーンのワンピースの人かと聞いておくと、無言の頷きが帰ってくる。
居なくなったもう一人の在り処を聞いて、
心を押し殺して、ヘルナーヴィさんのもとに向かう。
「どうしましたか?お客様」
「ついに、ミカルアさんに見放されたって感じ?こんなところでバイトなんて。」
「はい、2ヶ月だけですが、契約させてもらっています。」
先ほどまで同席していたはずのパルオピアさんが一時的に席を立ったのか、そう嬉しそうに聞かれる。
最低限の内容しか答えずスルーすると、ヘルナーヴィさんは更につけあがった。
「ふふん、貴方みたいなガキはミカルアさんはやっぱ興奮できないのよ!」
「そうですね。お客様、すみませんが、お食事後の長時間の滞在はご遠慮ください。」
「なに、負け惜しみ?私は今、アリアーコル家の嫡子の愛人なのよ?」
その発言に、先ほどのその嫡子の娘の言葉を思い出す。
愛人まだあと一歩、らしくまだ愛人ではないようだった。
「はい、そうですね。アリアーコル家とは先程の、お客様のお連れの方ですか?」
「もしかして興味あるの?そうよ、3代前から高速鍊車の発明をしたゴードン・アリアーコルの直系なの。今も行政に関係深いんだからエリートもエリートよ。」
本人でもないというのに、ヘルナーヴィさんはペラペラと喋っている。
発明家、というならば、元々貴族ではなかったのだろう。
そして、アリアーコルは貴族廃止のギリギリに栄誉を使って貴族になった、と推測した。
「そうなんですね、凄い方なんですか。高速鍊車ってどのようなものなんですか?」
「そ、っれは…、私も詳しくは知らないけどぉ…鉱物の不純物を減らすことで、軽量化でより早く走るようになった自家用車でしょ?というか、…あんたほんとに現代を生きてるのに知らないの?」
ヘルナーヴィさんは、凄いという割には、あまり知識に自信がないようだった。
確か、SNSでは、ようやく買って改造した、みたいな投稿を見たような気もするが。
転生してきたばかりで知らないのは当然だろう、と心の中で毒づく。
あまり乗り物に詳しくなくて、と誤魔化すと、ヘルナーヴィさんは得意げになる。
「まぁ、そんな!ミカルアさんに捨てられるのも当然といった感じ。」
「はぁ、そういえば、ミカルアさんと、そのアリアーコルさん、どちらが本め_」
「親なんだから、早く娘を出すんだ!」
客の怒鳴り声が耳に届いて、私の質問は掻き消された。
パルオピアさんが店長、というよりキッチン全体に文句をつけていた。
薄っすらと、何があったのかわかる。
「すみませんが、本人が拒否しております。本当にご両親かの事実確認ができかねない以上、難しいです。」
店長さんが出てきて平謝りをしている。
私がチラッと、ヘルナーヴィさんを覗くと、不快そうに顔を歪めていた。
なんとなく、パルオピアさんの味方をして、さらに混乱を招きそうな、そんな嫌な予感がして、僅かに気が遠くなる。
「娘に、会えないってどういうこと?というか、別にわざわざ呼ばなくてもいいんじゃない…」
「外に出さずに隠してる、という話を聞きましたが…。」
ヘルナーヴィさんも加勢しだすと堪らないので、同情を誘う。
しかし、ヘルナーヴィさんは更に不愉快だというように眉を上げた。
「なに、その程度でその娘とやらはパルオピアさんの邪魔する気?」
「邪魔…」
思わず強く文句をつけそうになり抑える。
事情を知らないのか、知ったうえで軽んじているのか、それを知らないのだから今は何も言えない。
「というわけじゃないと思いますが。したいことをしてるだけでしょう」
「でも、それが邪魔になってるわけじゃない!」
「私もすべての事情は知りませんが、そうなのかもしれませんね。」
すべての感情を飲み込んで頷くと、ヘルナーヴィさんも特に何か言う必要を持たなかったのか、黙った。




