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視線を逸らした先に居た人物に思わず眉をしかめた。

本を取るときに手が重なってしまった彼などお構いなしになってしまった。


「げっ…、お昼の人がいる。」


なんなら、声が漏れた。


「あはは、ひどいなぁ〜。そうだ、どう?前向きに検討してくれる?」


そう笑顔を崩さずに聞いてきた。


「まだ決まってませんが、連絡先は交換しときましょうか。」


こちらも動揺がばれないようにと気を引き締めて返事する。

連れの人_手が触れた方の人をちらりと盗み見るが、ニヤニヤとしている。


スマホを取り出して登録を完了する、と名前が見えた。


「ふーん、コーディウさんね。」

「あれ、名前まだ言ってなかったっけ?」


意外そうな顔で聞き返される。

忘れたの?と聞き返すと悪びれない表情で謝られた。


「お前の名前知らない子いるんだ?もしかしてナンパか?」


その割には制服だしなぁ…とぶつぶつと言っている。

無礼な人間だと思う。       

ちょっと考えてひとまず名前を聞いてみる。


「…誰ですか?」

「あ〜あたし?クレジェル。こいつの悪友だな」


どこか誇らしげにそういう様子にようやく気づく。

この人って女の子だ!

まぁ一般的な女の子なら誇らしいだろう。

あの男が倫理観のかけらもないことに気づきさえしなければ。


「なるほど、ご友人。えっと…引っ越してきばかりでここのことあまり詳しくないんですよね。学校は同じところに通ってます。」

「あ、じゃあ学校で会った感じか。」


頷くと、クレジェルさんはウンウンと唸った。

何に悩んでいるのだろうか。


「だから法律の本なのか。テイロン地方の外から来たのかな?」


タムテイロンとロルテイロン、マンテイロンの3国を合わせてテイロンというらしい。

これは以前、本で読んだ。

そして最初は本を買おうとしていたことを思い出す。


「いや、そういうわけじゃないんですけど…。ロルテイロンの辺鄙なところです。」


そう綿密に練られた設定を話すと、ますますクレジェルさんは疑問をにじませた。

なにが理解できないのか、私にも分からなかった。

少し嘘がバレたか不安になる。


「…じゃあなんで今さら勉強なんてするんだ?」


その発言に、息をつく。

単純に、理解されてないだけだった。


「後学のためじゃ駄目ですかね?」


至って普通だし、9割は事実だ。

一応知っておいたほうがいいだろう。

覚えなくてもなんとなくはラインを知っていたほうが、安全に生きられる。


「なるほど…真面目だな。じゃ、これはお前が買っていけば良い。あたしは法のスレスレを探すという誇れない理由だしな。」


そう言って本を渡される。


「ありがとうございます。」

と、告げて受け取ると、レジに向かった。


慌てて買い物を済ませて店を出ると少し日が落ちかけていた。

焦る。

なんて言ったって、約束の時間を過ぎてる。

スマホを取り出すと、メッセージが入っていた。

慌ててメッセージアプリを開くと、11件ほどが詰まっていた。


(心配されてる…やばい)


スーッと青ざめた。

そんなに倒れるほどではないが確実に血の気は引いた。

どうやって帰ろうか、緊張で溢れた頭で考える。


と、後ろから会計を終えた二人が出てきていた。


「どうした?帰んねぇの?」


クレジェルさんが気さくに聞いてくる。

どうやって帰ればいいのか、バスは時間がない。

タクシー的なものはあるのか。

しかし、無かった時に私の所在が怪しまれる。


「いや…えっと交通手段って何がありますかね?」


そう聞くと、コーディウさんがニヤッとする。

なんとなく何を考えたかは察せられる。

その手には乗るわけがない。


「ん〜、バスはしばらくないし…あ、タクシーとかじゃね?」


クレジェルさんがそう言ってくれた。

これだけで安心だ。


「それより、俺が送ろうか?早いよ?」

「いや、いいです…」


そう言い切る前に、クレジェルさんが提案に乗った。


「それいいじゃん!あたしの車乗っていきな」


クレジェルさんに言われると断りづらい。

しかし、確固たる意思でもう一度断る。


「いや、悪いんで大丈夫です。」

「タクシー、最低1000円、1kmで400円よ?」


そう言われて思わず表情が動く。

高い、いや無いことはないけど…。

しかし、ここでタクシーって言っても変な人だ。


(うぅ、仕方ない…)


「わ…かりました。お言葉に甘えて」


そう言って、クレジェルさんの車の乗り込む。

如何にも不良といった感じの車だ。

帰れるよね?と不安になりながらも道を案内しながら帰路をたどる。

心には、ミカルアさんごめん、なんて罪悪感もあったので500m手前で降りようと心に決めて。

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