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『僕の研究室に来てほしい』

そんな旨の手紙を眺め、分かった情報を整理する。


何故かタブーな天外に関する研究を、アンシュさんが一般人かもしれないこの男にするとは思えない。

つまり彼も同じく天外への研究を秘密裏に行っている可能性が高い。

だから自ら来てくれたアンシュだけでなく、私も引き抜こうとしているのだろう。

そして私の特殊な状況を知っているような口ぶりだ。


例えば、天外から来た…とか_

慌てて首を振る。

最悪の想像だ。

男の元へとは絶対に行きたくない。

しかし、アンシュさんについては知っておきたいことが山ほどある。


教えてくれないかもしれないが、ミカルアさんには一度聞いておこう。


そう決めて紙を折りたたんでいると、数字の列を見つけた。


80-2164-31365


おそらく電話番号だろう。

思わず笑ってしまう。

どんだけ私を引き込みたいんだ、彼。


(そういえば…あの男の名前、私知らないなぁ。)


連絡先だけは交換することにした。

手紙を畳みきり、ポケットに仕舞うと午後の授業に向けて活を入れた。


+×+


「では、リリちゃん。ココ答えれるかしら?」


何故、この先生は私にこんなに質問攻めするのか。

50分間続いている授業に疲労をにじませる。

最後の授業である7限目は歴史の授業だ。


ちょうど、酒蒸戦争(しゅじょうせんそう)が起きたきっかけを答えろ、という問題を出されていた。

暗記問題を来たばっかりの生徒に出すなんて鬼畜だ。


「えぇっと、グラーニン家がエストア酒を薄めて輸出していたことを理由とし、ヴェスタリオ国がエストア国を侵攻したことがきっかけで始まりました。」

「正解よ。さすがね!」


必死に記憶を呼び起こして応えると、レスティール先生は機嫌良く頷く。

質問攻めに、完全下校時間ギリギリまでの部活勧誘、好みの押し付け、過度なボディダッチ。

とんでもない人に気に入られてしまった気がする。


「じゃあ、映像を見せるわ。」


そう言ってプロジェクターを開くと、映像が投影されて私達にも見える。

グラーニン家の酒造の内情に、ヴェスタリオ国のエストア酒への依存状況。

そして戦争を特攻機や戦闘機で上空から映した実際の映像。

それらは古く画質が悪かったがカラーだった。


「この頃の戦闘機としては、砲弾にようやく魔力を込められるGT21-Q6が多く使われて〜…」


レスティール先生は意気揚々と語り出す。

そう、どうやらこの先生は戦闘機や軍事史が好きなようだ。

テスト結果で詳しい人判定を下され、定期的に構われているのだろう状況だ。


「では、あと5分だし終わりにするわ。」


そう言って解散の合図が出されると、みんなが席を立つ。

私も例にもれず立ち上がろうとすると、先生に話しかけられた。


「レスティール先生、どうしました?」

「やはり、軍事史が好きなのでしょう?」

「いえ、この世界のことを知りたくて調べてたら知っただけで…。」


謙遜、でもあるが、予定があるために切り上げようとして否定する。


「まぁ分かるわよ?周りからの目が酷いわよね。もちろん私も好きな人間として弁えているわ。」


駄目だ、何を言っても意に介されなかった。

そうして、なにかまた言い出そうとしているので慌てて流れを切ろうとする。

そのために、もうちょっと考えておきますから、と言えば満足気に去っていった。


ようやく帰れる、とリュックを掴んで背負う。

今日の帰りは本屋さんに寄って帰る、という約束を取り付けていたため、足早に昇降口に向かった。


10分ほど歩き続けていると、駅前につく。

本屋は駅の隣に少し狭めに建っている。


木造で暖色で完結されたデザインに安心感を感じる。

看板にはジョルン駅前書店とあり、その看板の下を潜って店内に入る。

店に入って目の前が雑誌コーナー、左が専門書参考書、右が文学作品、奥にビジネスや自己啓発系の本が置いてある。


私は迷わず文芸作品のコーナーに一直線に向かう。

トレンドの新作小説のコーナーを眺める。

ライトノベルから、硬派ないわゆる自然主義文学が一面並べてある。


ライトノベル2冊、文学作品1冊を手に取る。

『死神美少女が俺の命を取ろうと迫ってくるんだが?』

『研究グループから追放された俺が目をつけられた天外の少女があざとすぎる』

『蠱毒の盛り方』


あまりにも俗っぽすぎるタイトルにクスッとする。

ライトノベルはどちらも男性向けだが、そもそもライトノベルの市場は非モテ男性なので仕方がない。

しかし、私の知ってるライトノベルと一緒なのか気になりすぎるのが悪い。

どこの世界も行き着くところは同じなのだ。

ふと、少し離れたところにある作品に目をつく。

法律に関する本だ。


「え、うっっす…。」


ペラペラすぎる法についての本に引いてしまう。

こんなに薄くてこの国は大丈夫なのか、思わず不安になる。


思わず手に取ろうとすると、誰かの手が触れる。


「あ、すみません。」


そう言って手を離して視線を逸らした先に居た人物に思わず眉をしかめた。

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