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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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96.黒死竜の復活

黒死竜が復活した。その事実に誰もが信じられないという表情だった。


「さて、かつて我を倒した貴様達がこの場にいるというのも、面白いものだ。もっとも、あ奴が貴様達に執着していたから、当然と言えば、当然ではあるか…」


 賢也は天喰、いや黒死竜に問い掛ける。


「お前は俺が倒した筈だ。復活したとはどういう事だ?」

「ふむ。良かろう。死ぬ前に教えてやろうではないか。貴様が我を倒した時、我の意識は、分身体の一体に移ったのだ」


 肉体は滅びても、分身体が補ったということか。

 黒死竜は話を続ける。


「だが、その分身体は弱く、我が復活するには不十分だった。その時、あの二人が我を裏切り、己等で我の代わりとなろうと力をつける為に、我を含めた生き延びた分身体を集め出した。一部の分身体は、あ奴らに合成され、一部は、あ奴ら自身が食い、力とした。そして、この体の持ち主、天喰が我を喰ったのだ」


 そういう事か。天喰は、力を付ける気で食べた筈が、黒死竜の意識に乗っ取られたということか。


「我は、肉体を再び失ったが、意識は消えず、逆に此奴、天喰の意識を喰ってやったのだ。そして、力を取り戻す為、黒神を使い、貴様ら人を集め、機を伺っておったのだ。だが、黒神の方が我より力を付けおった。故に貴様らと戦いに夢中になっている所を狙っておったのだ。そして、この通り我の思惑通り、事が成った。さあ、我の復活の祝いだ。遊んでくれよう!」


 本当に復活したのか。くそ、ここでこいつを逃したら、またあの怪物が往古する世に戻ってしまう。


「復活したというのなら、もう一度倒してやるまでだ!」


 ノッコが霧で黒死竜の顔を覆い視界を遮ると、賢也達は一斉に黒死竜へ攻撃を仕掛けた。黒死竜は、視界を遮られているにも関わらず、全員の攻撃を避ける。まるで、攻撃を受けるのを嫌うように。

 賢也は、黒死竜の懐に潜り込み、右手を突き出すと黒死竜は、右手を掴みにかかった。


「遅い!烈風!」


 黒死竜は後ろへと吹き飛ばされるが、地面を盛り上がらせ壁を作ると、その壁を足場に踏み止まり、壁を蹴り、賢也に向かって飛び掛かった。壁は、その衝撃で壊れる。


「この程度!我には効かぬ!」


 黒死竜が賢也の元へと届く直前に横からセンが割り込んできた。


「おらぁ!こっちも忘れるんじゃねぇよ」


 賢也に殴り掛かろうと伸ばしていた腕を引き、くるりとセンの方へと向きを変えた黒死竜が、回転の勢いのままセンに回し蹴りを当てる。


「くっそぉぉぉ!」


 まともに黒死竜の蹴りを受けたセンは吹き飛んで行く。その隙に賢也が下から斬り上げると、黒死竜は、バク転で避ける。


「ちっ!」


 だが、明らかに剣での攻撃を受けるのを嫌がっている。

 バク転から体勢を整えた黒死竜は、センの方へと右手を向ける。そして、センの前に一体の怪物が現れる。それは巨大なトカゲのような姿をしていた。


「そいつを殺せ」


 黒死竜が命令すると、その怪物が動き出す。トカゲ型が動き出すのを確認した黒死竜は、賢也以外の目の前に怪物を呼び出した。力也にスライム、ノッコに蝶、優に大蛇、大河に蜂。


「さあ、これで邪魔は入らなくなった。思う存分戦おうではないか!」

「こいつ。本当に黒死竜なのか?性格が以前と違う」

「我は我だ。だが、確かに我は変わったかもしれぬ。我を倒した貴様と思う存分戦いたいという気持ちが強い。このような事、今まで一度たりとも思った事は無い」

「力也さん、セン、大河さん。ノッコと優の援護お願いします」

「分かった。こいつを片付けたら援護に向かう。すまんが、それまで何とか耐えてくれ!」

「「はい!」」


 力也の言葉にノッコと優は返事をする。二人は互いに目配せすると、私達だって戦えると、それぞれの相手に先制攻撃を仕掛けた。二人の攻撃を合図に、各々の戦いが始まる。



 優の放った矢は、大蛇の胴に命中した。だが、矢は大蛇の体に弾かれてしまう。


「駄目。私の力じゃ矢は刺さらない」


 優は、弓を長剣へと変えると大蛇へと走り出す。


「やぁっ!」


 大蛇の体を突く。長剣は、大蛇の鱗に弾かれてしまった。


「硬いなぁ」


 優は、直ぐに大蛇から離れようとするが、体の大きさの割に素早い動きで、大蛇の体が優の周りを一周し、行く手を遮った。


「しまった」


 大蛇は少しずつ円を縮め、優に巻き付こうと近付いて来る。


「この。直ぐに攻めて来ないのは、私を嬲り殺すつもりね。私だって戦えるんだから!甘く見ないで!」


 とは、言ったものの、自分の力では長剣で傷を付ける事も、矢での攻撃も通用しないのは、分かった。これは、物言わぬ大蛇も気付いている。だからこそ、ゆっくりと獲物を狩る事を楽しもうと、すぐに噛み付いたりせず、巻き付いて絞め殺す事を選んだのだろう。


そして、この選択が大蛇の誤りであった。すぐに噛み付き、優を丸呑みにしていれば、大蛇は勝っていたであろう。


 大蛇は逃げ場の無い優に巻き付く為に、頭を優へと近付ける。その瞬間、優の放った矢が、大蛇の左眼を貫く。


「シャァァァァッ!」


 大蛇の声にならない悲鳴が轟く。


「いくら硬くても、眼はやっぱり弱点ね」


 大蛇は、巻き付くのを止め、尻尾で薙ぎ払う。


「ゴフッ」


 大蛇の薙ぎ払いをまともに受けた優は吹き飛ばされ、床に倒れたまま、血を吐いた。


「こ、こんな傷…、すぐに癒やして…」


 大蛇は、傷を癒そうとしている優に追い打ちを掛けるように、口から毒液を飛ばした。だが、片目を潰された大蛇は、距離感がズレていた為に、優まで届かず、手前の床に落ちる。それでも毒が強く、空気中に毒素が漂い、優は、毒に侵されてしまった。


「ど、毒まで…。早くここから離れないと…」


 優は、解毒と治癒を自身に施しながら、毒液の傍から離れようと立ち上がり、歩き出す。

 ヨロヨロと歩く優に向かって、大蛇は突進し、頭から齧り付こうと、大きく口を開いた。


「まだやられません。負けない!」


 大蛇が、噛み付いて来る寸前に解毒、治癒が終わった優は、前転しながら、噛み付きを躱すと、大蛇の後ろへ走り出した。

 走りながら、長剣の持ち手にあるスイッチを半分だけ押し込む。長剣が弓へと変わろうとギミックが動き出すが、押していたスイッチを離し、元の長剣へと戻る瞬間、剣の先から現れた弦を掴み、引き伸ばした。


「久しぶりに使うけど、訓練を続けていたんだから!」


 噛み付きを躱された大蛇は、すぐに頭を優のいる方へと向けると、飛び掛かった。


「しつこいです!」


 優は、飛び掛かってくる大蛇の方に向きを変えると、再び前転し、大蛇を躱す。だが、飛び掛かった大蛇は、空中から優に向かって、尾を叩き付ける。


「シャァァァァッ!!!」


 攻撃をした筈の大蛇が、激痛に叫び声を上げる。見れば、叩き付けた尾が、床に転がっている。その横には、優が平然と立っていた。


「いける!あなたを倒します!」


 大蛇は、何が起きたのか理解出来なかった。あの人間の攻撃は、自分の体を傷付ける事など出来なかった。それが、尾を切り落としたのだ。左眼を潰され、尾を切り落とされ、大蛇の怒りはピークに達していた。


「シャァァァァ!」


 怒りの叫び声と共に、優に突撃をする。優は、落ち着いた様子で、長剣を振りかぶる。そして、大蛇が剣の間合いに入る前に、思いっ切り振り降ろす。

 大蛇は、愚か者め、勝った。と、自分の勝ちを確信した時、頭が縦に真っ二つに切られてしまう。二つに頭を割られながらも、まだ意識の残っていた大蛇が、目にしたものは、優の長剣の先に滴る自分の血。更に良く見れば、剣の先には、糸のような物が垂れている。


「シャァァ…」


 優は、大蛇の命が尽きかけているのを感じると、首元まで歩き、再び剣を思いっ切り振り下ろす。剣の先から伸びている、弓の弦が撓り、大蛇の首めがけ振り降ろされる。剣十郎の元で修行した優の振り下ろしは、賢也達程では無いにしろ、素人の域は超えている。その高速の振り下ろしにより、弦が鞭のように撓り、振り下ろされる弦の先は、音速並の速度になっている。その速度で叩かれれば、大蛇の首など豆腐を切るように、軽く切断した。


「か、勝ったぁ!」


 首を切断された大蛇は、事切れ、6人の中で最も勝利が危ぶまれていた非戦闘員である優が、最も早く敵を倒したのだった。


「皆を手伝わないと!」


 優は、まだ戦闘をしているノッコの下へと向かうのだった。

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