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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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95.誤算

かつての黒死竜よりも強い邪気を放つ黒神との戦いは、力也の攻撃で始まった。


「いけぇぇぇ!」


 力也は、手に持っていた二本のブーメランを黒神に向け投げつけた。黒神は気にも留めず、ブーメランを体で受け止める。


「馬鹿な」


 二本のブーメランは、黒神の胸に突き刺さった。突き刺さったが、どう見てもダメージを受けているようには見えない。

 黒神は、ブーメランを掴み抜くと、力也に向け投げ返した。賢也とセンが弾き、力也はブーメランを拾い上げる。


「つまらん。こんな物が私に通用すると思っているのか?」


 ブーメランが突き刺さった筈の胸は、何事も無かったように傷一つ無い。


「刺さったんじゃないのか?痕も残っていないぞ?」

「回復力が半端ないのか?」


 力也は、武器を鎌に変え、賢也達3人が同時に黒神に飛燕を放つ。力也とセンの飛燕は、黒神の体に命中するが、皮を切るだけに終わり、賢也の飛燕は、左腕の肉まで食い込むが、瞬時に傷が癒えてしまう。


「何だ。この回復力。黒死竜の時でももっと通用していたぞ」

「防御力も上がってやがる」

「何だ?この程度か…。よく主を倒す事が出来たものだ。では、今度はこちらから行くぞ。この一撃で死ぬなどつまらん事にはなるでないぞ」


 黒神の右腕に黒い雷が現れる。その黒い雷を大河達に向ける。


「動かん奴は先に死んでおけ」

「言動が一致していないだろうが!」


 賢也はすぐに優達の前へと移動すると、黒神の放った黒い雷に雷を当てる。だが、黒い雷の威力に掻き消され、黒い雷は真っすぐ向かって来た。


「くっ。だったら、爆雷!」

 

 蒼い雷と黒い雷がぶつかり激しい爆発を起こす。


「お前達!動けるな」

「「「は、はい!」」」

「よし、一箇所に固まるな!ノッコは、霧であいつの視界を遮るんだ」

「優と大河さんは、遠距離から攻撃。優は、状況に応じて負傷した者の治療だ!」

「分かったわ」

「「分かりました」」


 ノッコはすぐに黒神の顔を黒い霧で包み視界を遮る。大河は飛燕を、優は弓を走りながら黒神に向けて放った。


「小癪な真似を。無駄だ」


 黒神は、霧を吹き飛ばし、大河の飛燕と優の矢は、手で払った。その隙に賢也達3人は黒神の元へと詰め寄ると、それぞれが別の部位を斬り付けた。賢也は右腕を、力也は左腕、センは首から袈裟斬りに腰迄を。

 だが、全員の攻撃が黒神の体に触れた所で止まる。


「なっ!」

「硬い!」

「斬れねぇ!」

「ふふっ。無駄だ!」


 動きの止まった3人に黒神は、風圧で吹き飛ばす。そして、黒い炎の玉を複数作り出し、全員に向け放った。

 賢也は、黒い炎に飛燕・氷を当て防ぐ。その間にもそれぞれが居た場所で大爆発が起きていた。


「皆、大丈夫か!?」


 賢也は皆の無事を確認する為叫んだ。


「人の心配をしている場合では無い筈だが?」


 黒神が賢也の目の前に現れ、右手の手刀を賢也に振り降ろす。賢也は手刀を紙一重で躱すと反撃で下から斬り上げる。


「無駄…、何!」


 賢也の斬り上げを左腕で受け止めた黒神だったが、先程と違い、賢也の攻撃は、黒神の左腕を斬り飛ばした。


「まだだ!鳴神・爆雷!」


 蒼い雷を纏った剣での高速斬り降ろしが、黒神の頭に直撃する。爆雷による爆発を推進力に使った鳴神が、黒神の体を真っ二つに斬り裂いた。


「やったか!?」


 鳴神で体が真っ二つになった黒神の邪気が膨れ上がるのを感じた賢也は、後ろに飛び退いた。賢也が離れるのと同時にさっきまで賢也の立っていた場所に黒い雷が落ちる。


「何故だ。私の体はお前達の刃を通す事も無い程に強化されている筈、何故、斬り裂けた?」


 真っ二つとなった体が元に戻り始めている黒神を見て、賢也は愕然とする。


「化け物が…」


 黒死竜は、【屠龍】で攻撃した傷は残っていた。だが、黒神は黒死竜の骨で作った【滅】で斬った傷すら残っていない。どうすればこいつを倒せる?


「龍崎、大丈夫か?」


 力也が賢也の元へと駆け付けて来た。周りを見てみれば、さっきの黒い炎の玉は全員躱していたらしく、皆無事だった。


「大丈夫です」

「本当か?傷は深そうだが?」

「傷?」


 力也に言われ、初めて自分が傷付いている事に気が付く。


「あれ?あいつの攻撃なんて当たってないのに?」


 胸から腰の当たりまで、バッサリと切れていたが、傷による痛み自身無かった。だが、傷口からは、大量の血が流れている。


「ともかく、お前は傷を癒やしてもらえ。その間は俺があいつの相手をする」


 そう言うと、力也は、黒神に向かって突っ込んで行く。鎌を、双剣に変え両手で休む間も無く連続斬りを繰り出している。賢也の傷を癒やす時間を稼ぐつもりだろう。


「賢也さん!」

「優、すまない」

「いえ、それより傷の手当てを」


 優が賢也の傷を癒やしている間に、賢也は自身の傷について考えていた。

 あいつの攻撃はいつ当たった。いや、間違い無い。さっきの手刀も紙一重だったとはいえ、確実に躱した。一切当たっていない。なのに、何故、傷付いたんだ。

 優が治療している傷を見る。

 胸から腰に掛けて真っすぐ切れている。黒神の手刀は、斜めに入って来た。手刀による攻撃なら、こんな真っすぐには切れない。この切り口は、そう。まるで鳴神のような垂直斬りでないと付かない。あいつの攻撃であったのは、さっきの雷くらいだ。そして、いつ付いた。この傷は。何故、痛みを感じない。傷口、そして、真っ二つにしても全く血を流す事もなく、元に戻った黒神。今は、力也の攻撃を受け続ける黒神。あいつが傷付かないのは、まさか…。


「…さん、賢也さん!」


 優の呼び掛けに意識が現実に戻った。


「大丈夫ですか?傷はもう塞がりましたよ」

「ああ。すまない。考え事をしていた。大丈夫だ。それより、今度は力也さんの傷を癒やしてもらわないといけないかもしれない。俺の考えが正しければ…」

「え、力也さんは攻撃されていませんけど?」


 力也の猛攻に手が出ないと思っていた黒神だが、力也が鬱陶しくなったのか、力也を暴風で吹き飛ばす。


「ちっ。全く効いちゃいない」


 着地し、再び黒神に突っ込もうとする力也を、賢也が引き止める。


「力也さん!ちょっと待って下さい」

「何だ?傷は癒やしてもらったみたいだな」


 賢也は力也を見て、確信した。


「今度は力也さんが傷を癒やしてもらわないといけないです」

「何を言ってる?あいつに攻撃なんてされていないぞ。今吹き飛ばされたくらいだ」

「いえ、自分の体を見てください」


 力也は賢也に言われ、自分の体を見る。傷自体は、深くないが無数の切り傷が上半身に付いていた。


「何だ?どういう事だ?いつ、あいつに攻撃された?」


 賢也は首を横に振る。そして、自分の考え付いた結論を言葉にした。


「いえ、攻撃されてません。その傷は、力也さんが付けた傷です。あいつは、自分の受けた傷を相手に返す能力を持っているんだ」


 賢也の言葉に力也は呆然とする。確かにそう考えれば、この無数の傷が自分に付いていてもおかしくない。


「だが、飛燕の時は俺達に傷は付かなかったぞ」

「多分、距離が離れていると傷を返せないのか、複数同時に攻撃されると返せないかのどちらかでしょう」


 黒神が、賢也と力也の会話に加わって来た。


「ほう。私の能力に気付いたのか。なかなか洞察力のある奴だ。そう、私を傷付ければ傷付けるだけ、お前達が傷付くのだ。もっとも、ここまで傷を負うとは思っていなかったが。私の想像以上の攻撃力を持っていたようだ」


 賢也の予想通り、受けた傷を相手に返すというとんでもない能力だった。どう対応するか、悩む間も無く、黒神の攻撃が始まる。


「遠距離攻撃じゃ通じず、近距離攻撃だと傷を返される。どうすればいいんだ」


 賢也は黒神の攻撃を躱しながら、対策を考えていた。あれを使うか?だが、あれは一度きり。使えば、まだ動きを見せない天喰との戦いが不利になる可能性も。だが、ここで黒神に殺られては元も子もない。


「使うしかないのか…」


 賢也が切り札を使うしかないと決心した時、黒神が悲鳴を上げた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!天喰ぃぃぃぃぃ!貴様、何をするぅぅぅ!」


 見れば今まで全く動く気配のなかった天喰が、亜希に使った能力奪取の黒い光を黒神に放っていた。それだけなら、悲鳴を上げる事は無いと思ったが、更によく見ると、黒神の腹を何かが貫いている。


「何をすると?何か勘違いをしているようだから、言っておいてやる。貴様は我に代わると言っていたが、それは無理な話しだ。何故なら、我はこうして、生きている。これ迄我の為に働きご苦労だったな」

「ば、馬鹿な…。天喰は?」

「天喰?ああ、この体の分身体か。我がとうの昔に意識を喰っていた。気付かなかったか?だが、貴様達のおかげでこうして復活出来た。礼を言うぞ」

「おのれぇぇぇ…」


 黒神が天喰に黒い炎を放とうと作り出すが、時既に遅く、放つ前に天喰に能力を吸収され、放つ前に消える。そして、天喰は一瞬で黒神を平らげた。


「さあ、今こそ復活の時!」


 黒死竜の復活。誰も想定していなかった事が起きたのだった。

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