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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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94.黒神の目的

五十嵐と轟を連れて最奥にある部屋へと戻って来た天喰と黒神。その部屋は賢也達が戦っていた大ホールとは違い、普通の個室であった。


「くそっ。轟!目を覚ましやがれ!」


 五十嵐の怒鳴り声で気絶していた轟が目を覚ます。


「痛ぅっ。喧しいぞ。五十嵐」

「何寝ぼけてやがる。周りをよく見ろ!」


 轟が周りを見ると、天喰、黒神の出した怪物に二人は囲まれていた。


「何だ!?」

「目が覚めたか。轟よ」

「リ、リーダー!」

「黒神よ。これで良いな」

「ああ。これでまた一歩近付いたな」

「俺達をどうするつもりだ?こいつらに食わせるのか?」


 五十嵐の問いに黒神は答えず、ただ微笑むだけだった。その顔は、非常に満足した満面の笑みだった…。


 賢也達は奥へと続く扉を開け先へと進んで行った。扉の先は、ただの通路だった。


「予想を反して、何もなかったな」

「ああ。てっきり、この先には怪物が大量に待っているものと思っていたが…」

「もう、そんなに怪物自体がいないとかじゃないんですか?」

「兎に角、先に進もう」


 皆、怪物の襲撃を警戒していたにも関わらず、一体も怪物が現れない事を不思議に思いながら進んで行った。


「この通路どこまで続くんだ?」


 10分程進んでも何も無く、センが呟く。確かにおかしい。いくら『黒の牙』のアジトが広いとはいえ、こんなに先が何も見えないものだろうか?


「そうだな。何かおかしい…。一旦、進むのをやめよう」


 賢也は通路を調べるために歩みを止めた。



「遅い。あいつらはいつになったら、ここにやって来るのだ?」


 黒神は、賢也達が自分の元へやって来るのを待っていたが、いくら待ってもやって来ない。

 そして天喰が何か仕掛けたと勘付いた黒神は、天喰に問い掛ける。


「天喰よ。お前、まさかあいつらに何か仕掛けたのか?」

「そうだな。まだ何もしていないさ。無限空間に閉じ込めた程度だ」

「そうか。ならいいが…。うん?無限空間だと?」

「そうだが。どうかしたか?」

「いつまで経ってもここに辿り着けないではないか」

「良いではないか。貴様が力を完全に取り込む迄の時間稼ぎだ」

「ふん。そういう事ならば良いわ。たが、この場には必ず連れて来い。あいつらには、私の力を見せつけてやるのだからな」


 黒神は自分達の主である賢也達にこれ迄に手に入れて来た力を使い、絶望を与え、殺し、喰らい、更に力をつけるため、この地球から離れるつもりだった。

 そんな黒神を冷たい目で天喰は見ていたのだった。

(さて、そろそろ頃合いか…)



 一方、天喰の力で無限空間に閉じ込められた事を知らない賢也達は、無限に続く通路を調べていた。


「なあ、この壁、さっきの部屋の壁と材質が何か違わないか」

「そう?よく分からないけど」


 センとノッコが壁を確認すると、確かに壁が違う。さっきの部屋は、コンクリート製の一般的な建物にも使用されている壁だった。だが、ここの壁は岩だ。表面を綺麗にして、見た目を似せてはいるが違う。


「岩だな。これ」

「どれどれ」


 力也が壁を殴り破壊する。壁は分厚いのか表面は砕けたが、穴は空かない。だが、岩で有ることは間違いないようだ。


「コンクリの壁がドアを通ったら岩に変わるなんてあるのか?」


 大河が不思議に感じ首を傾げている時、優がノッコに確認をする。


「ノッコさん。霧で通路の奥を確認出来ますか?」

「OK。やってみるわね」


 ノッコは、黒い霧を通路の前方へと展開する。霧は何処まで出しても全く行き止まりに当たる事が無い。


「え。どういう事?全然突き当たりに届かないんだけど」

「ノッコさん、後ろもお願いします」


 ノッコは頷くと、自分達がこれまで進んで来た後ろに霧を展開する。


「そんな…」


 ノッコは愕然としていた。そのノッコの様子を見た優がノッコに問い掛ける。


「後ろも、何も無いんですね」


 そう。自分達が進んで来た筈の後方には通った扉がある筈なのに、どれだけ距離を伸ばしても辿り着かない。歩いた時間からは、あり得ない位の距離を展開しているのに。


「えぇ。後ろも何も無いわ」

「やっぱり。賢也さん、私達、何処か別の空間に飛ばされたんじゃないですか?」

「どうやら、そうみたいだな」


 だが、それならあいつらの邪気を察知出来るのは何故だ?

 完全に閉じ込めるつもりは無い?時間稼ぎということか?五十嵐と轟を連れて行った。つまりは、二人の力を吸収するまでの時間が欲しいということか。


「あいつらは、時間稼ぎをしているのかもしれない」

「どういう事だ?」

「五十嵐と轟を連れて行った。そして、あいつらは、人型の怪物だ」

「成程。そういう事か」

「力也さんも賢也も二人で納得してないで、どういう事か説明してくれ」

「あいつらの狙いは、二人を食って、力が自分の物になる迄の時間稼ぎだ」


 その時、賢也達を挟むように怪物の気配が強くなり、何かが現れる。


「い、いやぁぁぁ!」

「また、こいつらかよ!」


 現れたのは、富士の樹海で天喰が出現させたゴキ○リ型が、前後にそれぞれ5匹。通路を塞ぐ形だ。以前同様、賢也以外のメンバーはパニック状態だった。


「あの時は、櫻翔さんと二人で片付けたけど、大河さんも駄目な人だったか…」


 しょうがない。一人で対処するしかない。幸いにも、狭い通路のおかげで、あいつらも密集している。一気に蹴散らせるだろう。


「爆雷瞬炎!」


 後方にいる集団の中央にいるG型に蒼い雷が落ち、周りのG型も一瞬で燃やし尽くす。


「もう一丁!」


 直ぐに前方の集団を同じように片付ける。漸くパニックが治まった。


「龍崎、すまない…」

「大丈夫ですよ」

「それにしても、賢也。あなた、また一段と強くなったんじゃない。あれをあんな一瞬で片付けるなんて」

「まあ、それなりに実戦も積んできているしな」


 G型が片付いて、安堵していると突然周辺の景色が崩れ、天喰達の邪気が強くなっていく。


「何だ!?」

「空間が崩れる!?」


 数秒も経たないうちに、賢也達は、別の部屋に移動していた。

 そして、目の前には不敵に笑う黒神、その奥に静かに天喰が立っていた。五十嵐と轟の姿は見当たらない。


「貴様ら、五十嵐と轟はどうした!?」

「あの二人なら、私の糧となったよ」


 黒神の顔が更にニヤける。

 やはり、予想通りだったか。だが、黒神一人で二人を喰ったのか?何故、天喰は喰わなかった?


「何だ?貴様。その不思議そうな顔は?」


 黒神が、賢也に問い掛ける。疑問が顔に出ていたらしい。


「黒神、お前だけが何故二人を喰ったのか気になっただけだ」

「それは、私が主に代わってお前達を殺すからだ」

「主?」

「そう、お前達が黒死竜と呼んでいた私達を産み出した主だ。お前達を殺す事で私が新たな黒死竜(喰らう者)となるのだ!」

「それが、お前の目的か!?」

「ふふっ。そうだ。お前達人間を喰らい、同胞を喰らい、力を能力を取り戻した。今から、主を倒したお前達を倒す。そして、私が主よりも強大な存在となった事を証明してやる。天喰!さあ、戦いの場を。ここは、狭過ぎる」


 黒神が話している間、不服そうな顔をしていた天喰が、右手をサッと上に上げると、周りの壁が音を立てながら下がっていく。天井も上へ上へと上昇したかと思ったら無くなった。先程戦っていた部屋と一体になったのか、先程の倍以上の空間が出来た。


「さあ、始めようじゃないか。私の糧となるが良い!」


 黒神からかつての黒死竜以上の邪気が放たれ、賢也達を威圧する。大河やノッコ、優は、この邪気に当てられ、後退りするが、賢也、力也、センの三人は直ぐに自分の武器を手に取り、構える。

 

 遂に因縁である黒神との戦いの火蓋を切ったのだった。

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