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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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87.掃討作戦・開戦

SACの『黒の牙』掃討作戦開始当日の朝、強襲メンバーは『黒の牙』のアジト周辺まで移動を開始していた。

 その中には上層部の指示の通り五十嵐と轟の二人も加わっていた。


「轟、お前もこっちに来るとは思っていなかったぜ」

「五月蝿い。あいつらの話を聞いて、リーダー達の元に帰ろうなんて、普通思わないだろ」

「はっ。違いない。まぁ、俺は実際に狙われたしな。借りは返さねえと」


 二人は五十嵐が賢也のチーム、轟が力也のチームに加わっていた。流石に二人を同じチームに編成し、裏切られても面倒な為、分けたのだ。

 だが、二人共既に自分達のいた『黒の牙』に戻る気も無く、逃げ出した所で、すぐに捕まる可能性の方が高いため、裏切る気も逃げる気も更々無かった。寧ろ、ここで活躍して、罪を軽くしようという考えがあった。


 いよいよ突入開始の時間が近付いて来た。


「五十嵐、轟、お前達は妙な気は起こすなよ。出来るなら、お前達はメンバーの説得を頼む」


 賢也は二人の元々の立場が高かった事を踏まえ、無駄な争いは無くし、天喰達との戦いに備えたかった。


「変な気なんか起こさねぇよ。説得出来るかは分からんが、まあ、お前達の足手まといにだけはならねぇよ。俺は」


 五十嵐は、轟の方を向きながら答える。


「五十嵐、お前、俺に喧嘩を売ってんのか?俺だって変な気なんざ起こさねぇ。まぁ、ただ、説得は出来るかは俺にも分からんがな」


 二人の言い争いを鬱陶しく思った力也が二人の言葉を遮るように答えた。


「時間だ。兎に角、お前達が変な気を起こしたら、その時は俺達がお前達を処理する。行くぞ」


 力也の合図と共に全員行動を開始した。


 

「何やら五月蝿い蝿が現れたようだな」

「そのようだな。私達が気付かないとでも思っているのだろうか?」


 天喰と黒神は、アジトの周辺に隠れているSACのメンバーに気が付いていた。


「だが、向こうから攻めて来るとは」

「当然だろう。向こうには、奴らがいる。ここの餌共が我らの餌食になる前にとでも考えたのだろうよ」

「まあ良い。好きにさせておくさ」

「餌共には、どうする?」

「放っておいて良かろう」

「そうだな」


 SACの襲撃に気付いておきながら、天喰と黒神はその事を誰にも言わず、様子を伺うだけだった。


 

 アジトは広くエリアを幾つかに分け、グループ毎にそのエリアにいる『黒の牙』メンバーの逮捕、もしくは説得をするようにしていた。そして、最初のエリアに先陣を切って到達したのは、出雲兄妹だった。


「兄さん!前に出過ぎ!」

「大丈夫だ。楓。左腕が動かなくても今の俺は問題無い事は、お前もよく知っているだろう」

「それはそうだけど」


 出雲の左腕は、以前に黒神によって怪物化された時に負った傷が元でもう動かす事は出来なかった。ハンターとして、働けなくなり、忍者としても印が結べず隠居していたが、SACが出来、諜報部で楓と共に活動して来た。


「何だ!?お前達!」

「兄さん!」


 『黒の牙』の男が出雲兄妹に気が付く。出雲は、すぐに印を結ぶ。左腕は動かない。その代わりに新たな力が出雲の左腕を担っている。


「雷迅!」


 雷を纏った右手で出雲は、男を殴る。

 

「痺れ…」

「先に進む。こいつは後続の奴に任せるぞ」

「分かりました」


 出雲と楓はすぐに別の『黒の牙』メンバーと出会す。今度は複数いる。その内の一人が、何かのボタンを押すのが見えた。

 すぐに、アジト内に警報が鳴り響く。


「ちっ。警報装置だったか」

「もう。だから先行し過ぎだって言ったじゃない!」


 今度は楓が印を結ぶ。更に異能も合わせて、


「秘技、桜吹雪」


『黒の牙』のメンバー達は無数の桜の花びらによって包まれる。


「何で桜の花が?」

「くそ、前が見えないぞ」

「縛!」


 楓の言葉によって、桜の花びらがメンバー達を絡み取る。口を塞がれ、手足は縛り上げられている。


「「むぅ。むむむむむぅっ」」


 桜の花びらで出来た縄?によって拘束されたメンバー達はそのまま放置し、先へと進む。

 このルートは、強い奴はいないみたいだな。出雲がそう思って進んでいると、一人の男が出雲達の前に姿を現す。


「出雲、ここから先へは行かせないぜ」


 その男は出雲の事を知っていた。出雲は男の顔に覚えが無い。


「何で俺を知っている?」

「お前は、俺を知らないだろうが、俺はお前を知っている。まあ、知っていると言ってもあの野郎に負けた男だと言う事位だがな」

「あの男?」

「ああ、龍崎だよ。あいつだけは絶対に許さねぇ。あいつは俺が必ず殺す!」

「何で龍崎をそこまで恨む?」

「俺達兄弟をムショに送り込みやがったからさ」

「それは、お前が悪いんじゃないのか?あいつは、何もしていない人を刑務所に送るような事はしないぞ」

「五月蝿い。俺は、俺達は何も悪く無い。悪いのはあいつだ!」


 男は、その男はハンター武闘会で賢也の家族を人質に取り、挙句負けてその行為がバレて警察に捕まった諸井(兄)だった。

 諸井(兄)は、右手を床に当てた。


「さあ、俺の力を見やがれ!」


 床から機銃のような形をした土の塊が諸井(兄)の前に現れる。


「喰らえ!」


 土の機銃から無数の石弾が出雲達に向かって撃ち続けられる。その姿を見て、出雲は思い出した。


「あ、お前はハンター武闘会の時に龍崎に負けていた男か!ガトリングを使っていた男だ」


 出雲と楓はそれぞれ違う方向に走り出していた。諸井(兄)は、機銃の銃口を二つに分け、狙うが、二人のスピードに追い付けず全く当たる様子が無い。


「くそっ。当たらねぇ。何でだよ」


 諸井(兄)が叫ぶと、楓がボソッと呟く。


「この程度の力で、私達に挑むなんて馬鹿なのね。龍崎さんになんて到底勝てる訳無いのに、八つ当たりするなんて、許さない」


 出雲は、楓の口の動きを読み、楓が何を言っているのか分かった。ああ、楓の悪い癖が出た。あいつボコボコにされるな。

 楓は、賢也の強さに憧れ、更には怪我により戦えなくなった兄に活躍出来る場を与えてくれ、自分にも与えてくれた賢也を尊敬していた。その為、賢也を馬鹿にしたり、目の敵にする相手を良しと思わず、見つけたら体が動かなくなるまで痛めつける悪い癖のような所があるのだった。


「兄さんは、手を出さないで!」

「程々にするんだぞ」


 楓は印を結びながら、自分の異能を使う。諸井(兄)が突然宙吊り状態になり、慌て出した。


「何だ!?何が起きた!?」


 よく見ると蔓のような物が自分の両足を絡み取っており、それが自分を宙吊りにしている事が分かった。


「何だよ!?くそ、石が撃てねぇ。降ろせ、降ろせよ!」


 そんな事を諸井(兄)が叫んでいる内に、楓の印が組み終わっていた。


「さあ、覚悟しなさい!」


 楓の周りに竜巻が起きる。その竜巻が宙吊りの諸井(兄)に向かって進み出す。


「秘技、風迅乱舞!」


 身動きが取れない諸井(兄)は竜巻に呑まれ、空高く放り出される。


「うわぁぁぁぁ……」


 諸井(兄)は、落下の恐怖に意識を失ってしまった。


「気絶なんて許さない」


 楓が苦無を投げると、足に刺さり諸井(兄)は、痛みで意識を取り戻す。


「痛ぇっ。怖ぇっ。し、死ぬ。死んじまう!」


 諸井(兄)は地面に落ちた瞬間、再び気を失った。

 気が付いた時には、体は縛り上げられていた。


「い、生きてる?」


 もう、あいつらに関わるのは辞めよう、諸井(兄)は心に誓ったのだった。



「楓、あの程度の奴にあそこまでしなくても良かっただろう。俺が手を出さなかったら、死んでいたぞ、あいつ」

「ごめんなさい。つい…」


 楓を諫め、暫く周辺の様子を探ってみたが、もうここには誰も居ないようだ。


「こちらは、出雲。担当エリアの掃除は完了した。ここには、雑魚だけで、ターゲットも怪物もいなかった。次に移る」


 出雲は、本部に連絡を入れると賢也達と合流する為に移動を開始した。

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