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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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86.強襲前夜

『黒の牙』からSACへ逃げて来た亜希、凪夫妻の話を聞いて、既に天喰や黒神による犠牲者が出始めている事が分かった賢也は、上層部へ『黒の牙』の強襲を早めるように申告した。

 3人の話があったおかげか、上層部も早期に『黒の牙』を掃討作戦を前倒す事を了承し、準備を含め1週間後に決行する事となった。


 賢也達は、天喰と黒神を相手にするからには、怪物と戦う可能性もある事を想定し、人、怪物をそれぞれ相手するメンバーの選出をする事とした。

 基本的に怪物を相手するのは、賢也達元ハンターがする事にし、それ以外の隊員は、人の制圧を行う。人の制圧に対しては、まだ五指の轟、神無の二人が残っており、この二人については、神無は賢也が、轟については力也もしくはセンのどちらかが相手をする事となった。


「基本、『黒の牙』のメンバーの人間については、説得。説得を聞かない者は武力行使による拘束。怪物に関しては、討伐を前提とする」


 上層部からの指令は以上だった。

 準備期間の間、怪物を相手にする元ハンター達は、武器の手入れや調達をしていた。

 賢也達黒死竜討伐メンバーは力也以外は、当時の武器を賢也から渡されていた。


「久しぶりにこいつを使うな」


 センは、自分の剣を握ってまじまじと見ている。


「アテナの発表会見以来だったかな?セン」

「ああ、まあ、これとは別に警棒も持って行かないといけないからな。荷物だぜ。賢也はいいよな。能力で簡単に武器を持ち替えられるからな」

「仕方ないだろ。人間相手には、俺達の武器は強力だからな。それよりも、体が鈍っているだろうからな。皆、この1週間は、特訓だぞ」

「えぇぇ…」


 

 そして、1週間の準備期間が過ぎ、いよいよ『黒の牙』強襲の前夜を迎える。


「いよいよ明日だな」

「そうですね」


 賢也と力也は、あの天喰、黒神の二人との因縁をいよいよ断てると思うと気が高まっていた。


「落ち着けよ。って、俺もお前の事を言えないか」

「ふふっ。そうですね。あいつらを倒せると思うとどうも気が高ぶってしょうがありません」

「そうだな。師匠達をあんな目に合わせた奴らだ。必ず討伐してやる」

「はい。必ず…」


 二人が話をしていた時、外から大きな爆発音が聞こえてきた。


「何だ?」

「爆発音?」


 賢也達は、外へと駆け出していた。


「頑丈な建物だ…」


 外で爆発を起こしたのは轟だった。SACの本部に強襲してきたのだ。


「あいつは!轟か!」

「一人でこっちに来るとは、飛んで火に入るなんとやらだな。丁度いい。俺が相手をしてやる」


 力也が轟の元へと歩き始めた。すると、轟は、力也を迎え撃つつもりが無いのか、力也を無視し、SACの本部への攻撃を続けている。


「おい、俺は無視かよ!」

「リーダーの命令なんでな。お前達とは戦わず、SACの本部に攻撃を続けろと…」


 力也は、警棒を手に取ると轟に攻撃をするが、雷の力でスピードを強化した轟は簡単に攻撃を躱す。そして、そのまま雷を本部に向け放つ。

 轟の放った雷は、SACの本部に当たる前に賢也の雷で相殺された。


「邪魔だ…」


 轟は、力也の攻撃を躱し、賢也に邪魔をされながらも本部への攻撃を止めない。

 何だ?何故、こいつはこうまで執拗に本部を攻撃する。それに、あいつらの命令とはいえ、ここまで素直に実行するものなのか?そして、この行為に何の意味がある!?


「力也さん!」


 賢也は天喰達の目的もはっきりしないため、轟を早く取り押さえる必要があると判断し、力也に声を掛け、自分も戦闘に参加しようとしたが、力也は賢也に手を出すなと静止する。


「元々、お前は俺か千士郎が相手をする事になっていたんだ。俺がやらなくてどうする」

「何の事か分からないが、さっきも言っただろう。お前達に付き合う暇は無い!」


 轟が放った雷を合図に力也は警棒を横に薙ぐ。轟は、バックステップで簡単に躱すと雷を放つ為に手を翳す。その時、力也の放った飛燕が轟の腹を直撃した。


「がはっ。何だ、今のは?」


 スピードに自信がある轟がギリギリで攻撃を躱すのを逆手に取った飛燕での攻撃は、次々と轟に命中した。


「任務遂行の邪魔だ…」


 轟の体を覆っている雷が更に強さを増す。力也はお構い無しに、轟を攻撃した。

 力也は、変わらず至近距離での飛燕を繰り出す。

 だが、轟は剣撃を躱し、その後の飛燕を当たる直前に上に飛び上がり回避した。


「おらぁっ!」


 力也が飛び上がった轟に警棒を打ち付ける。空中で回避出来なかった轟は、腕を十字に交差しガードするが、力也の強化した攻撃に吹き飛ばされた。


「よし、今のはいい感じだ」


 力也は、すぐに吹き飛んでいった轟を追い掛ける。


「痛ってぇ。あん?俺は何していたんだ?」


 起き上がった轟の様子がおかしかい。今まで自分が何をしていたのか分からないようだ。


「くらえぇぇぇ」


 力也が轟に追撃を当てようとしている所を、賢也が制止する。


「力也さん、待った!」


 賢也の声を聞いた力也の一振りは、轟の顔の手前で止まった。


「おい、SACは何もしていない相手をいきなり殴りつけるのかよ」

「何を言っている?お前、今まで散々本部に雷で攻撃していただろうが」

「何の事だよ。俺は知らない。そんな事やっていないぞ」

「あれを見てもまだしらを切るつもりか!?」


 轟は力也の指差した方向を見ると、確かにSACの本部から煙が上がっている。


「あれを俺がやったって言うのか?」

「そうだ。この場にお前以外の誰がいると言うんだ?」


 轟の表情からは嘘をついているようには見えない。


「そもそも何で俺はここにいるんだ?」


 轟の様子を見るに、どうも天喰か黒神に操られていたように思える。どちらにせよ轟を今この場で取り押さえられるという事実には変わりはない。


「お前は、リーダーに操られていたみたいだな」


 賢也が二人の傍に来ると轟に声を掛ける。賢也の言葉に轟は動じる事もなく、寧ろ納得しているようだ。少し俯きながら思い出すように口にする。


「そうか…。そう言われるとリーダーに呼ばれた後からの記憶が無い。だが、呼ばれた時は、リーダー以外に誰かいたような気もするが…」


 天喰や黒神とは違う奴の仕業という可能性もあるのか。何にせよ気を付ける必要はありそうだ。


「操られていようが、いまいが、お前も大人しく捕まって貰おうか」

「それは断る。帰らせて貰うぞ」


 轟は、雷を体に纏うと逃げようと走り出したが、賢也がすぐに追い付き、腕を掴んだ。


「待て。帰る前に話を聞いたらどうだ。お前の仲間の石波も投降してきているんだぞ」

「石波が?あいつは何を考えているんだ。五指という立場を理解しているのか?」

「あいつは自分の命を最優先に考えているだけさ。お前達のリーダーは人型の怪物だ。お前の異能、もしくは命そのものを狙っている可能性が高いぞ」

「ほう。詳しく聞かせろよ」


 轟は、賢也の言葉に興味を持つと、本部の中へと賢也達と一緒に入っていった。



「良かったのか?轟をあのような状態で奴らの元に行かせて」

「構わない。轟は恐らくSACと一緒にここを攻めて来るだろう」

「成程。裏切り者扱いして、力を奪うという事か」

「そういう事だ」

「それよりも、闇獅の力は危険だな。ああも簡単に操るとは」

「ああ。気を付けなければ我らとて、奴の手足となってしまうだろう」


 天喰と黒神は、轟をわざとSACへと向かわせ、自分達を襲撃させる事で、その力を奪う口実を作ろうという思惑だった。

 そして、二人の思惑通り、賢也の話を聞いた轟は、天喰達に怒りを覚え、賢也達に自分も襲撃に加わると進言するのだった。賢也と力也はこれを反対したが、上層部は轟を連れて行く事を承認。更には五十嵐も連れて行けと指示を出した。


「全く…。上は何を考えているんだよ」

「仕方ない。賢也。俺達であの二人がおかしな真似をしないように見張っておくしかないだろう」

「そうですね。兎に角、明日だ。頑張りましょう」

「ああ。やるぞ」


 そして、夜が明け、SACの『黒の牙』掃討作戦が開始されるのだった。

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