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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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85.奪われた異能

体の大きさが半分になったスライムの邪気が膨れ上がり、出現した時よりも倍はある。


「こいつの邪気。黒羽を超えたぞ」


 人型よりも強くなるとは思ってもいなかった。これは、取り込んだ黒神の腕の力を今になって自分の物にしたと言う事か。


 賢也の予想は当たっていた。スライムは、今漸く黒神の腕の力を自分の物に出来、目の前にいる敵に対し、怒りを感じていた。このような意思は、元々備わっていなかったが、腕を吸収し、力を得た事で、スライムは進化したのだ。そして、目の前の敵に対し、どのような姿で戦うのが良いかを考えていた。今の形状では、素早く動けない。また、さっきの攻撃で体が無くなっては、十分に戦えなくなってしまう。この小さくなってしまった体で最も適した形状は?

 そして、スライムは流線型のボディから四足の獣のような姿へと変わった。


「姿を変えた。だが、こっちの戦い方は変わらないさ」


 スライムは走り出し、賢也に向かって飛び掛かった。前足を突き出し、形状を鋭いナイフのように変える。

 賢也は剣で弾き飛ばす。だが、スライムとは思えない程、強固な体を斬る事が出来なかった。


「何、硬い。スライムの硬さじゃないぞ」


 弾かれ、飛ばされたスライムは再び賢也に向かって走り出す。賢也はスライムに向け飛燕を放った。飛燕はスライムの体を簡単に半分に割く。


「今だ!爆雷瞬炎!」


 蒼い雷がスライムへ向かって落ちる。しかし、スライムはすぐに元に戻ると、雷を躱した。蒼い雷は、地面に当り爆発すると蒼い炎柱が立ち上がるが、スライムはすでに炎の範囲から逃れていた。


「ちっ。避けられたか」


 スライムは溶解液を吐き出す。賢也が溶解液を躱すと、そこに合わせたように、炎の錐を飛ばして来る。賢也は氷壁で錐を防ぐとスライムに突っ込み袈裟斬りをする。スライムは体を硬質化すると剣を弾く。

 賢也は、弾かれたその勢いを利用し、剣を一回転すると下から斬り上げた。スライムの体が斜めに真っ二つに割れた。


「まだまだ!桜華連斬!」


 その真っ二つに割れた体を更に桜華連斬によって8分割する。全部で16個の欠片となった所で賢也は離れると、


「今度こそ。爆雷瞬炎!」


 欠片が集まっていく中心に蒼い雷が落ち、大爆発を起こすと、欠片は更に細かく砕け散り、地面から立ち上がる蒼い炎柱が欠片を燃やす。


「まだか…。だが、もう後は剣でいけるか」


 一つに戻ったスライムは、もう体長が20cm程。賢也は剣に蒼炎を纏わせると、地面スレスレから上へと斬り上げる。スライムは簡単に半分に斬れると、切り口から炎に包まれる。炎を取り込もうと体の内部から裏返ろうとしたが、そこを再び賢也が斬りつける。スライムの体が更に炎に包まれ、漸く全てが燃えつきた。


「ふぅ。やっと終わった。スライムのくせに雑魚じゃなかったな」


 さて、さっきの3人に話を聞かせて貰うかな。賢也は本部の中へと戻って行った。


「お疲れ。なかなか苦労していたな。お前であれだったんだ。物理のみの俺だと間違いなく殺られていたな」


 力也が賢也の元へと歩いて来た。


「力也さん。負けるとは思いませんが、属性攻撃が出来ないときついのは間違いないですね。梶さんに相談した方がいいですね」

「そうだな」

「それより、」

「ああ、あの3人だろ。今、石波が対応している。何せ、あの中の1人は、あいつの姉らしいからな」

「そうなんですね。分かりました。俺も話を聞きに行ってきます」


 賢也は亜希達がいる取り調べ室へと向かった。

 取り調べ室に近付くと真希の怒声が聞こえてきた。


「だから、何で姉さんの我儘を私達が聞かなきゃいけないの!さっきから言ってるじゃない。自分のしてきた事を無かった事のように言うのは止めて!」


 何か揉めてるな。さて、石波の姉がいる方に行くべきか。先に夫婦のいる方に行くべきか…。


「やっぱり、こっちが先だよな。揉めてるようだし」


 もう一つの取り調べ室は、揉めている様子もなく静かだ。正直、姉妹喧嘩とは言わないが、揉めている部屋に行くのは気が進まないが、姉の方が暴れ出したら困る。

 賢也は、真希と亜希のいる取り調べ室のドアをノックすると中へと入って行った。


「おいおい、石波。何を叫んでいるんだ。外まで聞こえていたぞ」

「私は叫んでなんかいないけど」


 亜希がしれっと答える。賢也は、あぁ、面倒くさいと頭を掻くと、


「そうか。二人共、石波だったな。えぇっと、姉の方は名前は何だ?」

「亜希よ」

「そうか。二人共、下の名前で呼ばせて貰う。真希、落ち着いて話せ」


 真希は、賢也に頭を下げると、


「申し訳ございません。余りにも姉が自分勝手過ぎて、つい…」

「まあいいさ。さて、亜希。真希とは話したかもしれないが、俺にも何でお前がここに来たのか教えて貰おうか」


 賢也は亜希の前の椅子に座ると、亜希の話を静かに聞く。


「そうね。あなたに亜希と呼ばれるのも癪だけど、まぁいいわ。お前とか呼ばれる方が嫌だし」


 亜希は、不満そうに話を始める。


「最近、『黒の牙』の動きがおかしいのよ。五十嵐が貴方達に捕まる少し前くらいかしら。何人か行方不明者が出始めたの。五十嵐が貴方達に捕まったら、リーダー達は黒羽を使って取り戻そうとした」


 賢也は行方不明者は、きっとあいつらに喰われたなと思ったが、口には出さなかった。


「そして、黒羽も貴方達に捕まり(・・・)、その後には火野が貴方達に殺された(・・・・)


 うん?黒羽が捕まり、火野を俺達が殺した?


「ちょっと待て。それは誰から聞いた」

「リーダーよ。まあ、火野を殺したっていう情報はおかしいと思ったし、あの凪夫妻の話を聞いて、話がおかしいと思ったから、こうしてここに保護して貰いに来たんじゃない」

「火野を殺したのは黒神だ。そして、黒羽は俺が殺したよ。あれは、人型の怪物だった」

「え?ちょっと待ってよ。黒羽が怪物ってどういう事?確かに人間にしては、異様な気配を漂わせてはいたけど、信じられないわ」

「本当さ。そしてお前達のリーダーもそうだ。しかも、あいつらは俺がハンターだった時から探していた奴らだ」


 亜希は、賢也の話を聞いて信じられないという顔をしていたが、賢也が嘘を付く必要もないという事も理解はしていた。


「だったらさぁ…」


 亜希は、賢也に自分の胸元を見せるように、前屈みになって話を続ける。


「私の事を守ってよね。怪物から人を守るのが、貴方達の仕事でしょ。それに、あなた、強いみたいだから、私の専属のボディガードにしてあげてもいいわ」


 真希が机をバンッと力強く叩く。


「姉さん!何、胸元見せて、隊長を誘惑しているの!それに何で上から目線な訳!?」

「あら、真希、あなたの洗濯板じゃ誘惑出来ないからって、そんなに怒る事は無いじゃない」

「姉さん!」


 はぁ…。こういうので、真希が怒っていたのか…。


「亜希、まず一つ。俺に色仕掛は無駄だ。専属のボディガードなんかになる理由もない。お前は、五十嵐と同じ所に収容される。そこで、しっかりとこれまで行って来た事を反省するんだな」

「な、私が魅力的じゃないって言うの!?この、人が下手に出ていれば」


 こいつ、あれで下手に出ていたと思っていたのか…。両親と喧嘩して出て行ったと言っていたが、何となく理解した。輝やさくらがこうならないように気を付けよう。


「この距離からなら、私の能力であなた達を殺す事なんて簡単なんだから!」


 亜希は、床を割いて、落としてやろうと力を使おうとした。

 が、何も起きなかった。いや、力を使ったという感覚自体が無かった。


「あれ?おかしいわ。何で?」

「どうした?殺すと言った割に何もして来ないじゃないか?」

「さっきから、力を使おうとしているのよ」


 賢也は、力を封じているんだから、当たり前だろうと思っていたが、真希を見ると動揺していたため、亜希を見てみると力を封じる手錠をしていなかった。


「真希?」

「すみません。普通の手錠しか無かったんです」


 どういう事だ?力が封じられていないのに、力が発動しない?


「何で?今まで普通に使えていたのに」


 そういえば、亜希は天喰から放たれた黒い光に体を貫かれたな。


「今まで普通に使えたのか?」

「そうよ!何で使えないのよ。あなた達何か私にしたわね!」

「いや、俺達は何もしていない。あの時じゃないのか。天喰の黒い光を受けただろ」


 亜希は、ハッとする。そう言えば、黒神の横を通り抜ける時にも力を使えなかった。今思えばあの時からだ。


「そうだわ。あの光を受けてからだわ…」


 天喰が力を封じた?そんな意味の無い事をするだろうか?力を封じてないのに使えないとなると、まさかな…


「真希、間を呼んできてくれ」


 賢也は、自分の考えを確かめるべく、ノッコを呼んだ。

 暫くして、真希がノッコを連れて来た。

 

「賢也、どうしたの?」

「ノッコ。悪いが、彼女の能力を見てくれないか」

「いいけど、この人、前に大地を割いていたわよね」

「いいから、頼む」

「分かったわよ」


 ノッコは、能力が分かっている相手をいちいち見なくてもと思いつつ、黒い霧で亜希の体を包み込む。


「ちょっと、何するのよ!」

「騒がない。何もしないわよ。嘘、あなた、この間はどうやって地面を割いたの?」


 ノッコは驚いた様子で亜希に尋ねる。

 あの様子だと、俺の予想が当たっているかな…。


「どうやってって、私の力に決まっているじゃない」

「あなた、何も力を持っていないわよ」


 亜希は、力など存在しないと言われ言葉を失った。


「やっぱり」

「賢也、やっぱりって何か知っているの?」


 ノッコの質問に、賢也は答える。


「いや、俺の予想通りだっただけだ。恐らく、天喰は俺の能力である吸収と似た能力で、亜希の能力を奪ったんじゃないかな。あの光がそうだったんだと思う」


 食べる事なく力を奪うのか。あいつと戦う時は、気を付けないといけない。亜希には悪いが事前に知る事が出来て良かった。


「そんな、私の力が…」

「姉さん、もう何も悪い事は出来ないわよ。しっかり、更生して来てね」


 賢也は部屋を出ると、凪夫婦の話を聞き、上層部に『黒の牙』の本部への強襲時期を早めるように申告したのだった。

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