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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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88.五十嵐と轟

賢也と五十嵐は、正面エリアから突入する班であった。最も『黒の牙』のメンバーとの遭遇率が高いエリアだったが、珍しく人がおらず、まだ誰とも遭遇していない。

 五十嵐自身、不思議に思いながら進んでいると、警報が鳴り響き出した。他の突入班がメンバーと遭遇し、警報が鳴ってしまったのだろう。


「誰か見付かったか」


 賢也は、奥にいる気配がこちらに向かって来ているのを感じると、五十嵐に頼んだ。


「来るぞ。五十嵐、説得は任せた」

「まあ、やるだけやってみるさ」


 バタバタと現れたのは3人。皆、手に銃を持っている。


「侵入者か!」

「『黒の牙』に喧嘩を売って只で済むと思うな!」

「え、五十嵐さん?」


 出て来た男達は、五十嵐の存在に気付く。


「よう、お前ら俺にぶっ飛ばされるのとこいつらの言う事を聞いてここから出ていくのと、どっちが良い?」

「五十嵐…、言い方が…」


 賢也は、五十嵐の説得というか脅迫というか、どちらかと言えば脅迫か…に呆れていたが、五十嵐の事を知る男達には効果があったようで、


「五十嵐さんがそう言うなら、こいつらの言う事を聞きますよ」

「どうすれば良いんだ?」


 本気か!あんなので言う事を聞いた。まあ、こちらとしては、無駄な争いで手間を取らずに済んだから良いが…。


「他のメンバーにも伝えてくれると助かる。ここは、今から怪物との戦闘エリアになる。死にたくなければ、大人しく投降して、外に出るんだ」

「怪物?」

「何を言って…」


 賢也の話を疑って聞かない男達に五十嵐が口を開く。


「お前ら、こいつの言う事を信じないのなら、俺がぶっ飛ばして、外に放り出すぞ」


 五十嵐の一言で、男達の態度は再び変わり、


「わ、分かりました。奥の連中にも伝えます」


 男達は、奥へと戻っていくと、次々と投降してきた。


「驚いたな。五十嵐、お前意外と信頼されているんだな」

「うるせぇ。俺を恐れているだけだろうが。別に信頼されてるなんて思ってねぇよ」

「まあ、どっちでもいいさ。さあ、あいつらの所まで進むぞ。案内頼む」


 賢也と五十嵐は先へと進んで行った。


 一方、別の入口から侵入した力也と轟も『黒の牙』のメンバーと遭遇していた。


「侵入者か!」

「え、轟さん?幽霊?」


 轟の姿を見たメンバーが驚いている。そう、まるで死人を見るような目だ。


「何だ?お前ら。まるで死人が戻って来たみたいな空気を漂わせやがって」

「いや、俺達は轟さんは火野さんに次いで、SACの奴等に殺されたって聞いていたんで」

「本当に轟さんなんですか?誰かの異能で姿を真似てるだけなんじゃ」

「そうだ。そうに違いない。こいつら、なんて卑怯なんだ。犯罪者を取り締まる為でも、死人を利用するなんざ、人として最低だ」

「おい、俺は本物だ。見て分からないのか!?」

「まだ言うか!偽物め!」


 男達は、轟の言う事を一切信じようとしなかった。


「すまんな。どうも俺は死んだ事になっているらしい」

「まあ、しょうがない。とっとと片付けて、先に進もう。おい、後は頼むぞ」


 力也は、警棒を取ると最も手前の男を一瞬で叩き伏せる。轟も一人を雷で気絶させていた。


「こいつら、強いぞ!」

「奥の連中も呼んでこい!」


 残った男達が奥に居るメンバーを呼んでいる間に、対人メンバーにこの場を任せ、力也と轟は先へと進んだが、背後からすぐに呼び止められた。


「おい、先に進むのはまだ早いぞ。お前達」


 力也と轟が振り返ると今の一瞬の間に、対人メンバー全員が床に倒れていたのだ。

 そして、力也達を呼び止めた男からは、禍々しい邪気が感じられた。


「お前は人型か…。轟、こいつに見覚えは?」

「いや、会った事は無い筈なんだが、見た事がある気がするのは何でだ?」


 轟は、この男を『黒の牙』の中で見た事は無かった。本人は、そう思っていた。だが、そんな轟を他所に男が話す。


「何を言ってるんだ。俺とは会った事があるぜ。まぁ、会った瞬間に、俺の精神操作で俺と会った事は忘れているだろうがね」

「精神操作だと…」

「そうさ。おい、お前。こいつの行動はおかしかっただろ」

「ああ、確かに異常だったが…」

「あれは、俺がそうさせたのさ。こいつの能力を強化させるためにな」


 あれにはそんな意味があったのか。能力を上げる?使っていれば力が強くなると言う事か。


「だが、何故?能力を上げる為なら、別に精神操作する必要も無いし、まして、死んだ事にする必要も無いだろう?」


 力也は自分の腑に落ちない点を男に聞いた。男は誤魔化す事もなく簡単に答える。


「どうということはない。そいつが死んだ事にしていれば、後でこいつを喰っても誰も気にしないだろ?」

「俺はお前達の餌じゃねぇ!」


 轟は男に向かって突っ込むが、簡単に躱されてしまった。


「おいおい、慌てるな。ちゃんと相手してやる。その前に名乗っておいてやるよ。俺は闇獅だ。まぁ名乗った所で、覚えてないだろうけどな!」


 そう言うと、闇獅は、轟に精神操作を掛けようと右手を翳した。


「精神操作か!やられるかよ!」


 轟は、飛び退くとすぐにその場から離れるが、地面に足が着いたのと同時にふらつき、膝を付いた。


「なん、だ…。頭がボーッとする…」

「おぉ、よく躱したな。あと1秒遅かったら、完全に操れていたぞ」


 闇獅は、自分の攻撃を躱されたにも関わらず、余裕の表情をしている。


「俺を忘れてもらっちゃ困るな!」


 力也は鎌を振り、闇獅を斬りつける。


「別に忘れてなどいないさ」


 闇獅は、力也の攻撃を右手で受け止めた。そして、左手で力也の右腕を掴むと、


「お前は後だ。そこで大人しくしていろ」


 力也を持ち上げ、床に叩きつける。力也は、左手を地面に付き、闇獅の顔を蹴りつける。力也の蹴りは見事に闇獅の顔面に直撃すると、闇獅は体勢を崩した。


「ぐっ、この馬鹿力め。よくぼぉっ!」


 力也に気を取られている間に、轟の雷を纏った拳が、顔面に炸裂。吹っ飛んでいった。


「轟、大丈夫なのか?」

「頭がクラクラするが、まだ戦える。そっちこそいけるのか?」

「俺を誰だと思っている。元ハンターランキング1位だぞ。これ位どうということはない」


 吹き飛んだ闇獅が起き上がると、ダメージ自体はあまり無かったのか、平然としていた。


「まさか、あの状態で動けるとは。流石は、元五指ということか」


 闇獅は、首を左右に横に倒すと、何事も無かったかのように平然と立っていた。


「まあ、俺自身、戦闘力は無い方だからな。お前達二人を同時に相手するのは厳しいか」


 腕を組み何か考え事を始めた闇獅に力也は飛燕を放った。力也の放った飛燕は真っすぐ闇獅に向かって飛んで行くと、闇獅の体に命中した…と思ったが、体をすり抜け、後ろの壁が斬り裂かれた。


「何!?飛燕は、当たらなかったのか?」

「お、今何かしたのか?危ない。危ない。なんて運が良い」


 闇獅は、二人を相手にするのは無理と判断し、退散する為に体を闇に置き換えている最中だったのだ。そして、そのまま体は闇の中に溶けていった。


「ふふふ。また後で遊んでやる。今は俺の方が不利のようだからな。さらばだ…」


 声だけを残し、闇獅の気配は近くから消えたのを力也は感じ取った。


「消えたか。また厄介な奴が現れたものだ」

「くそっ。あいつは、絶対俺が殺す!」


 轟は、自分を精神操作した闇獅に怒りを顕にし、次こそはと決意をする。

 力也達は、他の『黒の牙』のメンバーが皆気絶しているのを確認すると、気絶しているSAC隊員を気付けし、この場を任せ、次のエリアへと進んで行った。

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