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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第3章 黒の牙 壊滅編

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83.亜希の脱会

身の危険を案じた亜希は、同じく黒神に命を狙われ、逃げ出そうとしている夫婦と共に『黒の牙』から逃げ出す事にした。


「待っていなさい。ここから出る口実を作って来るわ。その前にあなたの名前は?」

「あ、俺は凪です。凪颯太です。嫁は、蘭です」

「そう。じゃあ、行ってくるから待っていなさい」


 亜希は、天喰の元へと行くと、


「火野が失敗したらしいですわ。今SACは火野を撃退した事で少し気が緩んでいるでしょうから、私も今から襲撃に行きます。その際、凪夫妻を補助として同行させます。宜しいですね?」

「構わん。好きにするが良い」

「では、行ってきますわ」


 これでいい。後は適当にSACに出頭して、全員保護してもらいましょう。

 亜希は、凪夫妻の元に戻るとすぐに出発すると言った。三人は、すぐにアジトを出ると、自分の車を出し、足早にSACを目指した。


「石波さん、ありがとうございます。ところで何処へ向かっているんですか?」

「SACよ」

「え、SACなんですか?」

「そう。あそこなら私達を逮捕はしても、殺しはしないでしょ」

「確かに…。それはそうかも…」

「あなた何を言っているの?火野さんはSACに殺されたんでしょう?」

「それは違う。殺したのはリーダーだ。俺は離れた場所で火野さんが殺され、食べられるのを見た…」

「嘘…」


 蘭は、颯太の答えに驚きを隠せなかった。亜希は、食べたという点には驚いたが、火野を殺したのがリーダーという点には、自分自身も予想していた事だった為、出た言葉は、


「やっぱり。なら、尚更早くSACへ行かないと」

「どうしてですか?」

「分からないの?貴方達、リーダーに命を狙われているのよ。貴女の旦那は、それに気付いたから、殺されると言っているの」


 蘭は、恐怖に顔が引きつっていた。颯太はそんな蘭の手を握る。


「大丈夫だ。お前は俺が必ず守る」

「いちゃつくのは勝手だけど、ちょっと、いえ、かなり飛ばすわよ。しっかり掴まっていなさい」


 亜希は、アクセルを踏み付けるとスピードを思いきり上げ、SACへと向かうのだった。



 黒神は、凪夫妻が報告に来るのを自室で待っていた。だが、待てども待てども、やって来ない。


「まさか、逃げたのか?」


 黒神は、轟を呼び付けた。


「轟、この男を知っているか?」

「こいつは、火野が連れて行った男じゃないか。こいつがどうかしたのかい?リーダー」

「顔を知っているのなら話が早い。こいつは今何処だ?」

「すまない。見ていないから、何処にいるかは知らないな」

「そうか。もういい…」


 轟が部屋を出て行く時、黒神の顔を横目で見ると、あからさまに不機嫌な顔をしていた。


「あいつ、何かやらかしたのか?」


 轟は、一人呟きながら戻って行った。黒神は、轟が出て行った後、机を乱暴に叩く。


「おのれ、やはり見ていたに違いない。間違いなく逃げたな。何とかせねば」


 黒神は、天喰の元へと向かった。天喰は、黒神が腹を立てているのにすぐに気付いた。


「どうした?何を苛ついている?」

「さっき、火野を喰ったのをどうも餌に見られていたらしい。そいつを呼んだが、既に逃げたみたいでな」

「愚かな。なぜ、そのような事を。とっととそいつを殺しておけば良かったものを」

「五月蝿い。それよりこいつを見なかったか?」

「こいつか?………。ああ、そう言えば、石波がこいつらを連れてSACに襲撃すると言っていたぞ」

「何だと。そうか、では迎えに行ってやるか」


 そう言うと、黒神は消えていく。

 

「今度は、誰にも見られないようにな」


 消えていく黒神に、天喰は声を掛けた。


 言われなくても分かっている。黒神は、SAC本部の前へと現れたが、どうやら亜希達はまだ到着していないようだ。


「何だ?天喰の奴、転送してやらなかったのか?」


 今どの辺りなのか分からない。待つしかないか。

 黒神は、亜希達が到着するのを仕方なく待つ事にした。


 SACでは、賢也達、気を感じ取れる者が黒神の出現に気付いていた。特に賢也、力也はこの邪気を放つ者を知っている。


「賢也!」

「力也さん、奴がまた現れたみたいです」

「どういう事だ?火野を殺して消えたんじゃなかったのか?」


 賢也は首を傾げながら、


「あいつらの行動にどんな意図があるかは分かりませんが、今度こそ逃さないですよ」


 賢也と力也は外に出る。黒神は二人に気付いた。


「今はお前達に用は無い。失せろ」

「お前には無くても、こっちには大ありだ。逃さない」


 黒神は、鬱陶しいと手に入れたばかりの炎の能力を使う。炎はどす黒い炎となり、賢也達の方へと拡がっていった。


「何だ!この炎。今までの中で一番禍々しさを感じる」

「龍崎!これは触れたらヤバい気がする」

「ええ、任せて下さい!」


 賢也は水壁でどす黒い炎を取り囲む。炎は、水壁に触れても勢いは衰えることなく、賢也達の方へと向かっていく。


「おい、止まらないぞ!」

「大丈夫です。まぁ、見ていて下さい!」


 賢也は、再び水壁を作る。力也は、それじゃあ駄目だと声を出そうとしたが、力也が言う前に、水壁が凍りつく。更には、先程水蒸気となった水壁も凍りつき、炎の上へと降り注ぐ。降り注いだ氷はすぐに溶け、再び水蒸気となるが、それはすぐさま凍りつき、炎へと降り注いだ。

 氷壁はというと、炎の進行を抑えている。そして、氷の壁は、炎の周りを囲みながら黒神の背後まで伸びた。


「何のつもりだ?」

「こういうつもりだ!」


 賢也は更に冷気を強めると、降り注いでいた氷が屋根となり、黒神と炎を氷壁の中へと閉じ込めた。


「このような物で私を閉じ込めたつもりか?」


 黒神は、炎を止めると、掌の上に炎を凝縮させ、火球を作った。その火球を賢也達のいた正面に飛ばす。

 火球は、氷壁に当たると消えてしまったが、氷壁に一本の罅が入った。


「ほう。一撃で砕けると思ったのだが」


 黒神は、再び火球を作り始めた。


 一方、SACの元へと向かっていた亜希達だが、もう本部が遠目に見える距離までやって来ていた。すると、蘭が前方にある大きな氷の塊を見て驚いていた。


「何?あの前にある大きな氷は?」

「さぁ?でも、あんなの普通の人間が作れる代物じゃないわ」


 亜希も運転しながら、氷の塊を見て、黒神が先に着いて、SACと戦闘中なのか?このまま運転して行くべきか悩んだ。だが、行くしかない。そう思うと更にアクセルを踏み込んだ。


「あの氷の横を抜けて行くわよ。しっかり掴まっておいて!」


 亜希は、スピードを時速150kmまで上げる。氷壁がみるみる近付いて来る。


「何よこれ!通れないじゃない!」


 ブレーキを踏み、ドリフトしながら、氷壁の手前ギリギリで何とか止まる。三人が車から降りたその時、氷壁が砕け、中から黒神が出て来た。


「リ、リーダー…」

「やっと来たか。石波、お前もどういうつもりだ。その二人を逃がすような真似を」

「私は、自身が一番大事なのよ。最近のうちは何か雲行きが怪しくなって来たからね。抜けさせて貰うわ」

「そのような戯言。許されると思っているのか?」

「思っていないから、ここに来たんでしょう。ちょっと、貴方達、何を黙って見ているのよ!さっさとこの人をどうにかして、私達を助けなさい!」


 亜希は、賢也達に文句をつける。何を自分勝手な、賢也達は顔を見合わせ、ため息を付くと、賢也が黒神に向かって行った。


「後で事情は聞かせて貰う。走れ!」


 亜希と凪夫妻は、黒神を挟むように二手に別れ、SACの建物内へと向かって走り出す。

 

「逃さん!天喰ぃぃぃ!」


 黒神が叫び、天喰を呼ぶ。直後、空から黒い光が亜希の体を突き刺す。

 見上げると、天喰が空に出現していた。


「やれやれ。我はまだ力が足らないというのに。だが、これでまた一つ手に入れた。これで十分だろう」


 天喰はすぐに消える。光の刺さった亜希に関しては、生きていた。特に外傷も無い。亜希自身、何が起きたのか理解出来ていなかったが、そのまま黒神の横を通り抜ける。少しでも牽制出来ればと攻撃しようと思ったが、何も出来なかった。何も発動しなかった。


「馬鹿!何を突っ立っているんだ!早く行け!」


 動きを止めた亜希に黒神が攻撃しようとしている所を、賢也が斬りかかり、邪魔をする。


「ちっ。本当に鬱陶しい。ならばこっちだ」


 黒神は、踵を返すと凪夫妻を狙う。黒神の右腕が伸びた。颯太の首を掴もうとした時、力也の投げたブーメランが腕を斬り落とす。


「させんぞ!」

「いちいち、鬱陶しい!」


 地面に落ちた腕がもぞもぞと動き、再び颯太に襲い掛かろうとした時、腕を植物の蔦が絡み取り、動きを固定した。


「あなた、早く。行くわよ」

「蘭!良いぞ」


 どうやら蘭と呼ばれた女の能力らしい。賢也は自分に背中を見せた黒神の左腕を斬り落とす。そして、亜希、凪夫妻は、黒神から離れていく。あと少しで避難出来るだろう。


「もう、あの三人には攻撃出来ないだろう。さあ、決着を付けようじゃないか」


 黒神に剣の先を向け、賢也は気を練り上げる。


「まだだ。まだ私は死なないさ。お前達の相手は、こいつだよ」


 黒神は後ろに跳ぶと、さっきまで黒神の立っていた地面に黒い液体が吹き上がり、黒神の左腕を取り込む。


「私の左腕を喰ったか。まあいい」


 黒神は、右手を絡み取っていた蔦を足で蹴り飛ばすと、右手を回収する。


「お前達の相手は、また今度だ。この左腕の借りは返させてもらう。もっとも、そいつを倒せればの話だがな…」


 そう言って、黒神は消えてしまった。


「逃げられた」


 そして、残ったのは黒い液体。それは、黒神の左腕を喰ったからかそれとも元々そういう姿だったのか。液体が形を形成し始める。それは、楕円状に纏まるとツルンとした表面の流線型のゼリー状の怪物。ゲームでよく見る定番の怪物の姿となった。


「す、スライムだと」


 そして、賢也と力也のスライムとの戦いが始まった。

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