69.ドクター再び
1号の雷に苦戦するも、1号を倒した賢也は、オリジナルのアテナがいるという奥の部屋へと歩き出した。
その時、賢也のやって来た入り口からパンッ!という、乾いた銃声が聞こえた。
「銃声!」
賢也は、右に跳び後ろを振り返ると、そこには男型のアンドロイドが、銃口を賢也に向けて立っていた。
「あれは?まさか、ドクターなのか?倒したはずじゃ?」
ドクターと思われるアンドロイドが再び銃を撃つ。賢也は弾丸を弾き返した。弾き返された弾丸は、持っていた銃に命中し、銃が弾ける。
「ハンドガン程度では、無理か」
そのアンドロイドの話し方は、ドクターの口調に似ている。そして、人間のように流暢に話す事の出来るアンドロイドは多くない。
「お前、ドクターなのか?」
「いかにも。私はドクターだ。お前が倒したドクターは、私の分身だよ」
「分身って。お前らアンドロイドに流行ってるのか?」
「?。何を言っている?優れた者の特権であろう。それよりも、ご苦労だったな。私の為にアテナの分身を全て片付けてくれて、助かったよ」
こいつは。やはりアテナに成り代わってアンドロイドを統べるつもりなのか。
「お前の分身とやらにも言ったが、お前の為にアテナの分身体を倒した訳じゃない。人々を護る為だ」
「倒すのには変わりは無い。そして、実際にお前は倒し、私の役に立ったのだ」
何だかこいつは普通に苛つく奴だな。アンドロイドとはいえ、自分の都合しか考えず上から目線で話してくる。
「アテナとは私が戦う。もうお前は必要無い。死んで貰おう」
そう言うと、ドクターの右腕の中から手榴弾が現れ、賢也に投げつけて来た。
賢也は、手榴弾を水で覆い、その水に触れ、
「砕氷!」
手榴弾の周りの水を凍らせる。凍った手榴弾は、そのまま地面に転がった。
「お前は、やたらと人間の武器を使うみたいだが、何でだ?」
「なに、簡単な事だ。人間を殺すのに適しているのが、人間の武器というだけの事」
賢也は、転がっている手榴弾をドクターの方へと蹴り返すと、
「蒼!」
蒼い炎を飛ばし、手榴弾を誘爆させる。手榴弾の爆発でドクターの足が吹き飛び、ドクターは倒れ込んだ。
「やるな。たが、私はこの程度どうという事はないぞ」
「俺だってそう思っているさ」
賢也は、倒れたドクターに紫炎を放ったが、ドクターはすぐに足を再形成し跳び上がると、紫炎を躱す。
「言っただろう。この程度どうということは無いと!」
ドクターは回避行動と同時に、腹からショットガンを取り出すと、賢也に狙いを付ける。
「!。この距離でショットガンは不味い」
「もう遅い!」
賢也が動くより早く、ドクターのショットガンが火を吹く。
「ちぃっ!」
無数の散弾が賢也の頭上から降り注ぐ。回避は間に合わない。賢也は咄嗟に異空間を展開。賢也に降り注いだ散弾は全て異空間の中へと消えていった。
「何だと」
「危なかった。ギリギリだったな。そして、返すぞ」
賢也は、着地したドクターの前に異空間を出現させ、散弾を放出する。
ドクターの金属の体は、散弾を弾き、ダメージは全く無かったが、ドクターの怒りを誘うには十分だったようだ。
「貴様ぁ。舐めるなよ」
「アンドロイドが怒るのか?人間みたいだな」
「アテナや私は感情が存在する特別なアンドロイドなのだ。そして、選ばれた存在は私だけで十分。お前には、私が何故ドクターと呼ばれるのか特別に教えてやろう」
そう言うと、右腕にオレンジ色の炎が灯る。そして、その炎がショットガンを包み込む。
「喰らえ」
炎を纏ったショットガンから放たれた散弾は、炎に包まれ、弾速が増していた。賢也は、ドクターがショットガンを構えた瞬間、既に回避行動に入っていたため、当たりはしなかったが放たれた無数の散弾は、天井に床に当たると爆ぜた。そして、その場所には、大きく深い穴が空いている。
「おいおい…。冗談じゃないぞ」
「ほう、躱したか。では、次はどうかな?」
今度はドクターの左腕がオレンジ色に包まれる。そして、人差し指の指先一点にオレンジの光が集まる。
「!」
ドクターの指先から、オレンジ色の雷が賢也に向かって一直線に走る。賢也は、横に跳んで雷をやり過ごしながら、反撃に飛燕を放つ。
「その技、私には通用しないのが分からないのか?」
飛燕がアンドロイドにダメージを与えないのは、賢也も当然、承知している。だが、賢也の狙いは、ドクターではなく、手に持っているショットガンだった。飛燕がオレンジ色の炎を纏ったショットガンに命中し、それを破壊する。
「成程。これが狙いだったか」
「それより、どういう事だ?なんで、お前は、擬似ネメシスシステム、炎と雷の2つが使える?」
「言っただろう。何故、私がドクターと呼ばれるのかと。そう、この擬似ネメシスシステムは、私がアテナのネメシスシステムを解析。そして、これを再現したのだ。故に、博士の名を貰ったのだよ!」
ドクターは壊れたショットガンを投げ捨てると、右手を上げ、オレンジ色の水球を作り出す。
「分身体の得た能力、全部使えるのか!」
ドクターは、ドッチボール程の大きさになった水球を賢也に向かって投げつけた。
「飛燕・焔!」
ドクターの投げた水球は、賢也の炎の刃で相殺される。その間に賢也は、ドクターとの間合いを詰めていた。
「はっ!」
賢也の袈裟斬りが、ドクターの右腕を斬り落とす。ドクターは構わず、雷を纏った左腕で賢也を掴みにかかる。しゃがんで、掴みを躱すと、そのまま足を切断。蒼い炎をドクターに喰らわせ、後退する。
「無駄だよ」
斬られた足を繋ぎ止め、オレンジ色の水で消火するドクター。蒼い炎は、ドクターの体を燃やす前に消火され、斬り落とした右腕と本体それぞれから、ナノマシンがロープ状に伸び、元へと戻る。
「面倒な奴…」
大技で一気に叩くしかないか。賢也がそう思った時、ドクターの背後から高出力のレーザーがドクターに直撃する。
「「何だ!?」」
賢也とドクターの驚きの声が重なる。そして、その答えはすぐに現れる。ドクターの奥、アテナがいると言われた部屋から、コツコツと足音が聞こえてきたのだ。
「アテナぁぁ!貴様ぁぁぁ!何をするぅ!」
その答え、ドクターを攻撃した張本人のアテナに咆哮を上げる。
「何を?あなた達の戦いは、見させていただきました。勿論、あなたの裏切りの意思も。私に仇をなす者が、隙を見せたのですから、攻撃するのは当然では?」
確かに。アテナの言う事は尤もだ。俺だって、自分に害をなすと分かっている奴が、自分の存在に気付いていない隙だらけの状態で背中をだが、アテナの高出力レーザー、あれを喰らって、まだ無事なのか、ドクターは?
「光栄に思いなさい。裏切り者を創造主たる私が、直接、引導を渡して上げるのですから」
「ふん。どうせ、そこの人間を殺した後、お前を破壊するつもりだったのだ。お前が出てきたのなら、お前から先に破壊してくれる!」
「冗談は程々に。あなたは私には勝てませんよ」
賢也を他所に、アテナとドクターの戦いが始まった。それじゃあ、折角だ。アテナの実力を高みの見物といこうじゃないか。




