68.転送装置と1号の最後
ドクターと名乗る男型アンドロイドを倒し、僅かな休憩を取った賢也は奥へと続く通路を先へと進んでいた。
「そろそろ次の部屋に出ても良い頃合いな気がするけどな」
一人呟きながら通路の角を曲がり直進していると、賢也の予想通り次の部屋が見えて来た。
「さて、次は何が来る?」
賢也が部屋に入って目にした物は部屋の隅にある巨大な装置。そして、それを賢也は何か知っていた。
「これは。あの装置よりデカい。何とかキープ出来ればいいが」
その装置は、神移博士の転送装置と形状が全く同じ物だった。ただ大きさは、SACの本拠地に移設した装置の2倍位大きい。
「これだけ大きいから、あれだけの大人数を一度に送り込めるんだな」
賢也が転送装置に近付いていると、装置の手前で赤い雷が賢也の前に落ちた。賢也は、咄嗟に飛び退き周囲を伺うが、誰も居ない。
「今のは1号の雷。何処から?」
この部屋には居ない。そして、ここには転送装置がある。自分が、帰る為にも、この装置が壊れては困る。賢也はすぐにこの部屋から出ようとした時、再び賢也目掛けて赤い雷が落ちてきた。
「くそっ。危ない。マジで何処から攻撃してきているんだ!」
賢也は、走り出した。それと同時に、雷の落ちてくる頻度が上がる。
「これは?この先に行って欲しくないという事か!」
賢也は、更に速度を上げて進む。すると角を曲った所でこれまでと違う扉の付いた部屋に辿り着く。
「ドアは開くか?」
扉に取っ手は付いていない。自動ドアなら扉の前に立てば開くはずだが、立っても開かない。とすれば、単純に入って欲しくないから、ロックをかけているという事だ。
「開かないなら、強引に入るだけさ。刹那」
刹那を使いパワーを上げると、ドアを力一杯蹴る。賢也の蹴りに耐えられなかったドアは、一直線に部屋の反対側まで勢いよく飛んで行った。
そして、賢也が部屋の中へ入ると同時に赤い雷が走って来た。前に転がり雷を躱す。起き上がった賢也の目の前には、1号が立っていた。そして、更に目立つのは、異様に巨大な何かの装置。
「ここ迄辿り着くとは。驚きですね。ようこそ。ここは、海底基地の中枢。そしてあなたの目的とするマスター、いえオリジナルは、この奥に居ます」
「なら、この先へ行かせて貰おうか」
「それは出来ません。あなたは、ここで私に倒されるのですから」
そう言うと、1号は賢也に向かって突っ込んで来た。
「体当たりだと!」
賢也は躱しながら1号を斬りつける。炎を纏った刃が1号の体に触れた瞬間、賢也に電撃が走り右腕が痺れ、剣を落とす。
「いったっ」
よく見れば、1号は体中を赤い雷で覆っている。静電気のバチッというレベルじゃ無いぞ。右腕は、痺れて使い物にならない。
賢也の落とした【紅蓮】を1号が拾い上げる。
「この剣は、どのようにして炎を纏っているのでしょうか?」
【紅蓮】をスキャンしているのか、端から端までじっくりと観察をしている。
「成程。こうですね」
【紅蓮】の柄に付いているスイッチを押し、炎を纏わせる。
「あなたが使う時と炎の纏い方が違いますね…。これは、また興味深い…」
「お前が使った所で、それ以上の火力は出ないさ。返して貰おうか」
「いえいえ、使わせて頂きますよ」
1号は、炎を纏った【紅蓮】に自身の赤い雷も纏わせる。
「なっ!」
「これならあなたの言う火力とやらもカバー出来るのではないですか?」
構えを取る1号。その構えは、3号と同じく賢也の構えそのものだった。
「こいつも俺の戦闘パターンを使うのか。だが、真似した所で、3号と同じ結果になるだけだ」
とは、言ったものの右腕の痺れはまだ取れない。【銀狼】を左手で持ち、相対する。
1号が賢也に斬りかかって来た。初撃の上段斬りを躱す。空を斬った剣が下段から斬り上げられる。
「朧のつもりか?遅いぞ!本物はこうだ!朧!」
1号の斬り上げを躱しながら、慣れない左手で上段斬りを繰り出す。1号は、剣を受け止めると下段からの斬り上げに備えようとした時にはもう遅く、右腕を斬られた。
「ぐぅぅぅ」
だが、斬られた1号よりも、斬った賢也の方が苦しんでいた。
左手に持っていた【銀狼】を落とす。
「くそう。左腕も痺れが」
「ふふふ。私の雷に触れるからです」
1号は、斬られた右腕と【紅蓮】を拾い上げ、右腕を押し付けると腕が元に戻る。
参ったな。両手が使えないのはちょっと、いや、かなり不味いな。どうする?賢也が迷っている間に、1号の攻撃準備が整い、【紅蓮】を突き出してきた。賢也は突きを躱し、横薙ぎをしゃがんでやり過ごし、後ろに跳ぶ。
「どうしましたか?避けてばかりでは勝てませんよ」
こいつ腕が痺れて動かないのが分かってて言ってやがる。だが、そろそろ右腕の痺れは取れそうだな。
「うるさい。俺がこの程度でやられるかよ」
痺れが回復するのは良いとして、さて、どうするか?奴に触れればまた痺れてしまう。かと言って、紫炎で燃やそうと思っても、【紅蓮】も一緒に消し炭にしてしまう可能性が高い。あと1本あるにはあるが、もう怪物も居ないから、新たに作り出す事は出来ない。出来る事なら取り返したい。
「痺れが取れた。後は、【紅蓮】を取り返して倒すだけか」
その前に、地面に転がったままの【銀狼】を回収しておく。
あの電撃を通さない物となると、靴の裏のゴム、蹴りを入れた時に足を掴まれたら動く事が出来なくなる。駄目だ。後は何か無いか?
「ほら、いきますよ!」
1号が再び連続で攻撃をしてくる。上段斬り、斬り上げ、袈裟斬り、突き、薙ぎ払い、次から次へと繰り出される攻撃を躱して凌ぐ。
「きりがない。どうすれば?」
最後の攻撃を躱し、横に跳ぶ。1号は、そこに赤い雷を落としてくる。
賢也は、攻撃を躱しながら、移動をしていると、部屋の中にあった巨大な装置の前に来ていた。すると、1号の動きがピタッと止まる。
「この装置、かなり重要な装置なのか?」
1号の動きが明らかに変わった。これを盾にして戦えば。いや、攻撃出来ないのはこちらも同じ。これでは、時間が経つだけで、疲れを知らないアテナ達が有利になるだけ。【紅蓮】を諦めるしかないのか…。
「そこから離れなさい。その装置が壊れてしまえば、私達だけではなく、あなたも困るのですよ」
「それはどういう事だ?俺は何も困らないぞ」
「そんな事はありません。この海底で何故、呼吸が出来ていると思うのですか?」
「まさか、この装置が止まると空気が無くなるのか!?」
「ええ。その装置がこの海底基地の動力源。それが停止すれば、全て動かなくなります。暫くは保つかもしれませんが」
1号の言う事が本当であれば、この装置を盾にするのは不味い。そして、嘘を言っているようにも見えない。
「くっ、離れるしか無いか…」
賢也は、装置の前から少しずつ離れる。それを見た1号がホッとした表情をする。
何か電気を通さない物は無いか?電気を通さない物と言えば、ゴム、プラスチック、後は…。
あった!あるじゃないか、電気を通さない武器が!
「よし、これなら」
賢也は、訓練用の木刀を取り出す。木も電気は通さない。
「そのような物で私と戦うと?あなたの剣が木刀を斬れないと言うのですか?」
「試してみるか?」
賢也は、木刀に気を込め、強度を上げる。鋼は使わない方が良いか。電気が通るようになっては意味が無い。覚醒の力は使えない。木刀が簡単に折れてしまう。一撃だ。一撃で【紅蓮】を取り戻す。
1号の元へと駆け出す。1号は、木刀如きにやられると思ってもいないため、賢也の動きに合わせ、斬りかかって来た。
「今だ!」
1号の袈裟斬りを躱し、カウンターに右腕を木刀で斬りつける。1号は気にもせず、賢也の攻撃を受け、反撃をしようと敢えて受けた。
「油断したな!」
賢也の攻撃によって、右手首は斬られ【紅蓮】を落とした。
「そんな。木刀なんかで私の体が斬られるなんて!」
賢也はすかさず【紅蓮】を拾い上げ、木刀で1号の胴を横殴りし、後ろへ吹き飛ばす。
「よし。上手くいった。【紅蓮】は返して貰ったぞ」
「何故、木刀で私の体を切断出来たのですか?」
「言った所で、お前達アンドロイドには真似出来ないさ」
よし、これで後は倒すだけだ。吹き飛ばされた1号は、起き上がり、両拳に赤い雷を集中させたのか、これ迄と違い、激しくバチバチといっている。体を覆っている雷もある。拳の出力を上げて、勝負にケリをつけるつもりなのだろう。
「決着を付ける!」
「こちらこそ、そのつもりです」
1号が賢也の懐に一瞬で入り込んで来た。賢也の鳩尾目掛け、ショートアッパーを打って来るが、賢也は、半歩下がり、ショートアッパーをやり過ごす。1号は、賢也の顔目掛け左右の連打を放ってくる。賢也は、ガードすれば、痺れてしまう為、全て躱す。1号の攻撃は止むこと無く賢也に反撃の隙を与えない。賢也も負けず、全てこれを躱し続ける。
「当たらない。私のデータよりも動きが速い」
「当たり前だ。データが全てじゃない!」
そろそろ反撃させて貰う。1号は、気付いていないが、既に準備は出来ている。
「これで終わらせる!」
1号に気付かれないように頭上に作っていた蒼火球を落とす。
「上!」
頭上に迫って来ていた蒼火球に気付いた1号は、すぐに後ろに飛び退いた。
「そこだ!」
1号が床に足を付ける瞬間に合わせて、爆雷を落とし、1号に直撃した。
「雷の耐性はあるかもしれないが、爆発のダメージが0という事はないだろ」
実際、直撃を受けた1号は、左半身が吹き飛び、右半身だけが残った状態で立っていた。
「止めだぁ!」
1号の頭上を狙っていた蒼火球をコントロールし、1号に向けて飛ばす。右半身しか無い1号は避ける事も出来ず、直撃する。
「やはり私では勝てませんか…。マスターあとはお願いします」
1号は、燃え尽きその場には何も残らなかった。
「やっと残りはオリジナルだけか。そして、この奥にオリジナルはいる」
左腕の痺れも漸く取れ、動きに問題が無いか確認する。
「よし、最終決戦だ」
賢也は、アテナがいる奥へと進んで行った。




