70.vs アテナ開戦!
ドクターとアテナの戦いが始まった。大出力レーザーを受けたドクターは、流石に無傷だという事は無かったらしく、オレンジ色の炎をアテナに向け、牽制で放つと全身をオレンジ色の光で包み込み、損傷したナノマシンの修復を始めた。
「このような紛い物の力で私に勝とうなどと」
アテナは炎をペチッと手で叩き、炎は床を破壊する。流石にドクターもこのような防ぎ方をされるとは思っていなかったらしく、すぐに修復作業を止めると、アテナに向かって雷を降らす。アテナは、焦る素振りも見せる事無く、簡単に雷を躱すと、ドクターに右手を向ける。
「攻撃とは、こういう物を言うのですよ」
アテナの掌に赤い球体が現れ、その球体から何本ものレーザーが発射される。そのレーザーの毎々がドクターの体を貫く。
「ぐぅっ!」
そのレーザーの何本かは、賢也の方にも飛んで来た。賢也は、素早く躱し、観戦を続ける。
「今のは絶対、こっちも狙ってたな」
「ぐぅぅぅ。おのれぇ」
レーザーで貫かれ、体中、穴だらけになったドクターが唸っている。しかもどういう訳か、空いた穴が元に戻らないでいる。
「貴様、私の体に何をした?」
「おや?ドクターともあろう者が、自分の体に何が起きているのか分からないのですか?」
アテナのレーザーに何らかの影響を受けたのか、ドクターの体に異常が起きているのか?
「ナノマシンが増殖しない。あり得ない」
「どうやら、何が起きているのか分からないようですね。所詮その程度、という事なのでしょう」
そう言うと、アテナはドクターの元へと歩き出す。ドクターは、歩いて来るアテナに雷を放つが、アテナの腕の一振りで、雷は天井へと方向を変え、天井が破壊される。
「どうしましたか?それで精一杯なのですか?私を倒すのでしょう?」
「ぬぬぬ!がぁぁぁぁっ!」
ドクターは、アテナに向かって走り出した。右腕に炎、左腕に水を纏わせ、アテナに殴りかかる。アテナは、避ける事もせず、黙ってドクターの攻撃を受けている。このドクターの攻撃が、自身を最悪な展開へと運んでしまったのだった…。
「うぉぉぉぉ。壊れろ、壊れろ、壊れろぉぉぉ」
殴り続けるドクターの右腕がぼとりと床に落ちる。アテナは特に何もしていない。そして、左腕も床に落ちた。ドクターは何が起きているのか、漸く理解した。
「まさか、貴様、私の体を構成しているナノマシンに干渉しているのか!」
「漸く、気付いたのですか?でも、もう遅いですよ。既にあなたの体を構成するナノマシンは私の支配下に。ほら、もう体が崩れ始めました」
ドクターの体が形を保てなくなり、ボロボロと崩れ始める。
「そんな、そんな、私は、ワタシハ」
「あなたのコアマシンは、要らないですね。消えなさい」
アテナは、ボロボロと崩れ落ちるドクターの体から他より大きめの球体を掴み上げる。
「ヤメロ、ヤメテクレ」
その球体から声が出ている。あれがドクターのコアなのか。
アテナは、ドクターのコアをギュッと握り締めると、パキッという音とともに、粉々に砕け散った。
「さて、裏切り者のドクターはこれで片付きました。次はあなたの番ですね」
アテナは、賢也の方へと体を向けて話してきた。
ドクターとアテナの戦いで賢也は、何かアテナの弱点でもと思っていたのだが、全く参考にならなかった。ただ言えるのは、アテナは強い。この1点だけだ。
「ああ。だが、勝つのは俺だけどな」
賢也は負けじと、アテナに剣を向け答える。とは言ったものの、何処まで力が通用するのか?
賢也の心配を見透かしたのか、アテナは賢也に問いかける。
「ドクターに苦戦していたあなたの力が私に通用すると?」
「言ってくれる。お前との戦いに備えて、力を温存していたんだよ」
「ならば、その力、見せてみなさい」
アテナの言葉で、アンドロイドとの最後の決戦の火蓋は切って降ろされた。
先に攻撃を仕掛けたのは賢也だった。アテナに向けて、飛燕を放つ。アテナは飛燕をまともに受けるが無傷だった。
「ちっ。効かないのは分かっていたが、無傷かよ」
「何かしたのですか?」
「したんだよ!」
賢也は、アテナとの距離をつめ、横に薙いだ。すると、アテナはそれまでドクターの体を構成していたナノマシンを組み上げ、1本の剣を作り出すと、賢也の攻撃を受け止める。
「あなたの攻撃は、1号達との戦いを含め、学習させていただきました。おかげさまで、創地博士に作られた時と雲泥の差があります。最早、私を倒す事の出来る者は居ないでしょう」
「俺の戦い方か…。でも、まだ俺は全てを出し切った訳じゃないぞ」
「そうですか。であれば、もっと見せて下さい。それと、力を見せていないのは、私だって同じですよ」
賢也は、一度、距離を取る為に後ろに下がる。そして、【紅蓮】をしまう。やはり、アテナにはあれを使うしかない。
「ここからが本番だ」
「では、私も全力でいきます」
アテナの体が全身赤い光に包まれたかと思うと、既に賢也の目の前に剣を振り翳して立っていた。
「速い!」
賢也は、一振りの刀を取り出す。それは、【屠龍】に似ているが、色が黒かった。【屠龍】は双頭竜の骨から作られ、白い刃であったが、これは骨から作られたのは同じだが、色が黒い刃だった。
「はっ!」
アテナの上段斬りをその刀で受け止める。
「行くぞ、この【滅】でお前を倒す」
【滅】、黒死竜の骨から作られた一振りの刀。この刀は、賢也の全力でも砕ける事の無い、賢也が持つ最強の一振り。これを使うからには、負けられない。
「さぁ、いくぞ!」
賢也は受け止めたアテナの剣を弾き返し、アテナに反撃をする。
「何故、痺れないのですか?」
「どういう事だ?まさか、その光!」
「そう、これはネメシスシステムのライトニングモード。あなたは、1号と戦った時、受けた剣で痺れていたはずですが、何故、痺れないのですか?」
「まさか、俺が今まで倒した分身体達のコアは…」
「そう、私の元へと帰って来ています。ですから、私も使えるのです。このように」
アテナは、持っている剣に赤い炎と雷を纏わせ、左手で赤い水球を作り出す。そして、水球を賢也に投げると同時に、賢也に向かってきた。賢也は、水球を斬り、アテナの攻撃を受け止めると、強風に吹き飛ばされた。
「4属性、同時発動しているのか!」
風が目に見えないから厄介だ。まだ吹き飛ばしとしてしか使っていないから、まだいいが…。
「どうですか?今までの私とは雲泥の差というのも納得して貰えましたか?」
「お前は、強いさ。ただ、最初のお前の強さは俺も知らないからな。雲泥の差があるのかどうかは分からないね」
「そうですか。まぁ良いでしょう。人で最強と思われるあなたをここで倒せば、私達の邪魔を出来る者は居なくなる。ここで、消えてください」
「うーん。負けるつもりも無いが、俺より強い奴はいると思うぞ」
そう、あの神無とか。あいつは師匠が言っていた四聖神冥流、最強の流派の使い手。あの少しの手合わせで分かった。あいつとは、命のやり取り以外に勝敗は付かないだろう。それよりも今はアテナだ。こいつも強い。分身体と比較にならない。
「疲れるとか言ってられないな。よしっ!」
賢也は両頬をパシッ!と叩き気合を入れ直す。
「この【滅】でしか出来ない全力の俺を見せてやるぞ」
「それは楽しみですね。それでもっと私は強くなれる」
「言ってろ。その前にお前は破壊されているさ」
さぁ、俺自身まだ一度しか戦闘で使った事が無い、全異能同時発動。そして、初めて戦闘に使う、この【滅】でその名のようにお前を滅ぼす。




