62.転送装置と神移博士
神移博士の研究所にて、4号から転送装置の破壊を防ぎ、装置を起動させる事に成功した賢也達は、装置から発せられた言葉に驚いた。
「どういう事なんだ?殺された?」
『あぁ、すまないね。自己紹介をしよう。私は、神移だ』
「神移博士?」
『驚くのも仕方ない。君は、あのSACの隊員かな?』
「はい。SACの龍崎です」
『龍崎…。君か。あの忌まわしき黒死竜を討伐したのは』
「はい」
『なら、話は早い。私は、創地博士と共に超戦術的殲滅兵器 A.T.H.E.N.Aを開発していた。そして、黒死竜が討伐された後に異能に目覚めたのだよ』
「異能とこの状況に関係が?」
『ある。私の能力が転写だったのだ。私は、アテナの人類への宣戦布告を聞いた時、転送装置を知っている私の命が狙われると推測した。だから、私の人格をコピーし、転送装置のシステムに転写したのさ。だから、神移であって、神移では無い』
「じゃあ、アテナや転送装置については?」
『無論、知っている』
「なら、奴らのアジトも」
『海底基地の事か?それならば知っている』
よしっ!賢也は、思わずガッツポーズを取ってしまった。
『だが、あそこに行くのなら一度だけ。それも一人だけだ』
「どういう事だ?」
『この装置では、転送出来るエネルギーが少ない。転送したら、戻るには向こうの装置を使って戻るしか方法は無い。だが…』
「?。何か気になることが?」
『あぁ、向こうもそんなにエネルギーは無かったはず。何故、複製を作り出したり、転送が何度も出来る?』
「エネルギーって、やっぱり電気なのか?」
『電気だ。ただ、アテナが使っているネメシスシステムで、転送用に変換された物だがな』
「成る程。1号だな…」
『?。1号とは?』
「アテナの分身体だ。4体いるらしい。その1号がネメシスシステムって言ったかな。雷の力を手に入れた」
『分身体…。雷…。そうか、アテナは、自分のコアを分けて、自分のコピーを作ったのか。雷のネメシスシステム。成る程、それでエネルギー供給も問題無くなったのか…』
これは、この神移博士の人格とやらから、もっと話を聞く必要がある。だが、ここでは、また襲撃された時の防衛を考えると、余り良いとは言えない。
「博士、もっと色々と話を聞きたいんだが、奴らがまたいつ襲ってくるかも分からない。装置の設置場所を移せるかな?」
『大丈夫だ。この本体を運ぶだけでいい。気を付けて運んでくれよ』
「分かった。じゃあ、運び終わったら、また電源を入れる」
賢也は、ハードディスクを抜き取ると、SACに連絡を入れ、転送装置をSACへと運ぶ手配をする。
これで少しはアンドロイドとの戦いも楽に生るだろうか?
転送装置の移設も終わり、各部署の隊長、副隊長が集まり、賢也は、ハードディスクを挿し込み装置を起動させる。
「博士、移設は完了したよ」
『そうか。少し待て………。装置に異常は無いようだ』
「良かった。じゃあ、博士の知っている事を教えてくれ。まずは、アテナだ。何故、人に宣戦布告なんて事をしたんだ?」
『それは、分からない。逆に問う。創地博士が殺された日に、アテナに変わった事が無かったか?』
「そうだな、あったとするなら、怪物の生き残りと『黒の牙』と戦闘をしたんだったな。セン?」
「あぁ、そうだな。怪物には、腕を噛み千切られ、『黒の牙』の男には、頭にナイフを刺されて、男の異能による攻撃を受けて苦しんでいたらしい。情けない話だが、俺自身、男の攻撃で気絶していて、後から聞いた話だからな。その時の状況はこれ以上は分からねぇよ」
『攻撃を受けて苦しんだ?アテナが苦しむなんてことは本来あり得ない。異能でアテナに何かが起きたというのが自然だな』
「アテナを倒すには?」
『コアを破壊するしかない。だが、コア自身も体を構成しているナノマシンとほとんどサイズが変わらない上に、移動も可能だからな、コアを直接狙うのは不可能と言っていいだろう』
やはり、一気に体を消滅、若しくは4号の時のように大半を消滅させて、残りを消滅させるしかないか。
「コアを新たに作り出すことは?」
『無理だな。コアは、創地博士が開発し、それは、アテナにもブラックボックスとなっている。解析出来ないようにプログラムもされているのだ』
つまり、アテナ達5体全てを倒せば、アンドロイド問題は解決出来るということか。
ならば、やる事は一つだけ。
転送装置で、奴らのアジトに乗り込むだけだ。片道切符。そして一人だけ。なら、誰が行くかは決まっている。
「アテナ達のアジトに乗り込むぞ」
「え、でも、一人だけなんですよね?」
「あぁ、俺が行く。まだ対アンドロイド用の武器も出来ていない。アテナを倒すにしても、今のメンバーで俺が一番火力があるしな」
皆が、それは確かにと納得はしていたが、片道切符という事が、誰もが心配をしていた。
「善は急げだな。今から行こう。博士、頼む」
『良いのか?今、外に転送を検知したぞ。ここは放っておいて、良いのか?』
「「「「「え?」」」」」
博士の話が終わると同時に警報が鳴り響いた。
「まじか!」
「でも、逆に言うと、今向こうは、手薄とまではいかなくても、戦力は落ちているんじゃないの?」
ノッコの言うことも一理ある。やはり、このまま行くべきか。賢也が悩んでいると、博士が再び口(?)を開く。
『何か妙な転送?みたいなエネルギーも観測したが、これに覚えはあるかな?』
賢也達は、部屋から出て外の様子を見る。すると、アンドロイド達の背後に異空間の穴が出現していた。そして、中から五人の男女が現れる。
「あれは、1号と戦っていた男じゃねぇか!」
「『黒の牙』!。何で?あいつ等もここを?」
すると、『黒の牙』と思われる者達は、アンドロイドと戦い始めた。
「あいつ等、アンドロイドと戦い始めたぜ」
「俺達も行くぞ」
力也が皆に出撃を促した時、梶の元に連絡が入った。
「何だい?そうか、タイミングばっちりだな」
皆が走り出した所を、梶が呼び止める。
「ちょっと待った!」
「梶さん、一体何だ?」
「甲斐さん、今、対アンドロイド用の武器の試作品が完成した。持って行って」
「そうか。すまない。助かる」
力也達は、武器管理局に寄り試作品を受け取る。
「これを」
「一つだけか?仕方ないな。これは?」
「レーザーブレードです。高熱でナノマシンを溶かすので、時間が掛かるかもしれませんが、確実にダメージは与える事が出来ます」
「よし、俺が使う。行くぞ」
全員外に出ると、アンドロイド50体と5人の戦いは続いていた。
そして、その戦いを静かに見ているアンドロイドが1体。
「おい、轟。聞いてたのと違うぞ。全然、強化なんかされないじゃねぇか」
「戦いに集中しろ。神無よ。強さが変わったのは、あそこで静観している1体だ」
「ほう。ならばこ奴らは、これ以上強くならないのか?」
「知るか。変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。そんなのはこいつらに聞け」
「もう、こんな時に喧嘩なんかしてるんじゃないわよ」
「石破の言う通り。主等、いい加減にせい。ほれ、SAC共も出て来たぞ」
火野が指を指す。神無は、ニヤリと笑うと、アンドロイドを蹴り飛ばし、
「あっちの方が楽しそうだな。お前ら、こいつらはお前らで片付けろ」
神無が手を振り上げたかと思うと、さっと振り下ろす。
「風切り」
神無の前に立ち塞がっていたアンドロイド達が吹き飛ばされ、道が開いた。
「おらぁっ!」
神無は、一瞬で賢也達の前に詰め寄り、近くにいた賢也目掛け、殴り付ける。
「こいつ!」
賢也は、神無の右拳を払い、カウンターを入れようと思った時、左からの気配を感じ、咄嗟にしゃがんだ。すると、神無の左拳が、賢也の頭の上を通過する。
「へぇ、俺の攻撃に反応出来るんだ」
こいつ、強い。何者だ?
「お前の相手をしている暇は無い」
「そんな事言うなよ。退屈だったんだ。少しは、出来るようだから、遊ぼうぜ」
「力也さん、こいつは何とかします。力也さん達は、アンドロイドを。丁度、速水達も着いたみたいだから、お願いします」
「任せろ」
賢也は、木刀を取り出す。
「さっさと、倒させてもらう」
「お前が?俺を?笑わせるな」
SACの拠点前で、再び三つ巴の乱戦が始まるのだった。




