61.転送装置を護れ!
賢也が神移博士の寝室にあった隠し部屋から転送装置を見付けた時、姿を見せたアンドロイド。話しが出来、姿もアテナに似ている事からも、分身体に間違いない。
「お前、4号か?」
「ほう。我を知るのか?主は」
「いや、3号から4号は隠密担当と聞いてたんでな。博士を殺したのもお前か」
「ふむ。3号め。余計な事を。如何にも。我が神移博士の命を奪った。我等の住み処を脅かす者を生かしておく訳にもいくまい。故に、その奥にある装置は破壊させて戴く」
「させない」
だが、ここで戦えば、下の装置に被害が出るかもしれない。更に、警察官達も危険だ。
外で戦うべきか。賢也は、4号との距離を詰めると、右手を4号の腹に当て、
「烈風!」
4号は、爆風に吹き飛ばされ、窓を突き破り、外へと放り出された。賢也は後を追い、窓から飛び出すと、先に地面に落ちていた4号が、賢也目掛けて赤い光弾を撃ってきた。
「おっと、危ない。今のは?」
「空中で避けた?此奴、出来る」
賢也は、地面に降りると4号の腹を見る。烈風によるダメージはどうやら無さそうだ。ならば、高火力の技で。
4号が賢也に向かって走り出した。走る速度は、大した事は無い。これなら、いける。
「爆雷!」
蒼い雷が、4号目掛け落ちる。だが、4号は、落雷を躱し、そのまま賢也に右手の貫手を突いて来た。
賢也は、左手でこれを払い、右手に焔を発動し、ボディーブローを返す。4号は、これを左肘でガードすると、肘から下が燃え上がった。4号は後ろに飛び退くと左肘から下を切り落としたが、まだ肘の辺りには、炎が残っていた。右手で炎を叩きながら、火を消すと、
「お主、本当に人か?人外の力を使いこなしておる」
「人間だよ。でも、怪物達のお陰で、異能は鍛えられたからな。普通の人間よりは、自分で言うのもあれだが、強いぞ。俺は」
左手を無くし、戦力が落ちたはず。こいつは、ここで仕留める。
賢也は再び爆雷を放とうと気を練っていると、4号が左腕をブンブンと振り始めた。
「何だ?」
「リカバリーシステム起動」
4号の声だが、機械的な音声が流れる。
「な、何だと!」
赤い光が発光しながら、4号の無くなった左腕が復元されていく。これは廉価版アンドロイドも同じだが、廉価版アンドロイドは、無くなった部位を復元する為に別の部位から補っていたが、4号は、ナノマシンを作っている。
「まさか、ナノマシンを産み出せるのか?」
「?」
4号は、何の事を言っているといった不思議そうな表情を浮かべると、
「ああ、リカバリーシステムの事か。我等は、体とプログラムを復元する機能を有しておる。主等の攻撃は、通用せぬわ」
リカバリーシステムだと。つまり、完全に消滅させないと倒せないというのか。
「く、だが、これならどうだ」
賢也は、構わず爆雷を4号に放つ。
「それは、もう見た」
賢也の爆雷をいとも簡単に躱すと、左腕を賢也に向け、赤い光弾を連射してきた。
「甘い!」
賢也は、走りながら光弾を躱すと、4号に向け右手を翳す。
「性懲りもなく、また雷を落とすのか。無駄よ」
「さて、無駄かどうかは俺が決めるさ!紫炎!」
「!」
攻撃動作は爆雷と同じだが、別の技を放たれた4号は、紫炎をまともに受けた。腹から上へ下へと、紫の炎が4号の体を燃やしていく。
「しまった。体が燃える。むぅ、これはまずい」
4号は、まだ火が移っていない左手で自ら首を切り落とす。
「リカバリーシステム、いや、ネメシス!」
「体の9割が燃えて無くなったんだ。いい加減、やられてろよ!」
賢也は、残った頭に向け炎を放とうとした時に、4号の様子を見て、動きを止めてしまった。
「何が起きているんだ?」
頭だけになった4号が首から、今も尚燃えている体の炎を吸い込み始めた。
「炎を吸収している?あっ!こいつ!」
賢也が気付いた時には、遅かった。炎を吸収した頭が、燃えている。だが、それは今までのダメージとしての炎ではなく、自身の力として。
「リカバリーシステム起動。…転送求む…」
「待て!」
頭だけとなった4号を光が包み込み消えてしまった。
「くそ、あと一歩だったのに…」
賢也は悔しがったが、逃げられてしまったものはしょうがない。研究所に戻ると、転送装置へ向かった。
「これが無事だったから良しとするか」
「あんた凄いんだな」
転送装置の前に逃げていた刑事が賢也に話しかけてきた。
「これは何なんだ?何故、あいつはこれを、そして神移博士を殺害したんだ?」
「机のレポートを見なかったんですか?これは転送装置です」
「転送装置?」
「はい。対象を任意の場所に転送する装置ですよ。これが使えれば、アンドロイドの基地にも向かえるはずです」
賢也は、机にあった転送装置のレポートを手に取り、起動方法が書かれていないか読んだ。
だが、レポートは報告書であって、取説では無かった。
アテナと転送装置の有用性が長々と書かれているだけで、肝心な使い方が載っていない。
賢也は、レポートを読むのを止めて、装置自身に電源が無いか探してみた。
だが、装置自身には、電源のような物がない。太い配線から伸びたコードは、コンセントに刺さってある。
「コンセントは刺さってあるのに、電源が入っているようには見えないんだよな」
駆動音も聞こえない。スイッチもない。となると、どこかで遠隔操作するのか?
「遠隔操作となると、パソコンとかスマホ?」
あれだけの装置を使うのにスマホは無いか…。パソコンだと、警察が押収しているかもしれない。賢也は、刑事にパソコンを知らないか尋ねた。
「パソコン?寝室に1台、ノートパソコンがあったが、パスワードがかかっていて、見れないぞ」
「SACで預かっても?」
「博士を殺害したのが、アンドロイドなら君達に渡しておいた方がいいかもしれないな。本来は、駄目だが、許可するよ」
「ありがとうございます」
賢也は、ノートパソコンを預かると、SACに連絡を取り、専門家を寄越すように頼んだ。
1時間後、SACの解析チームが到着。賢也は、ノートパソコンを渡すと、パスワードの解除を依頼する。
「ちょと待ってください、よっと……。はい、どうぞ」
「え、もう?」
「はい」
早い。まぁ、いいか。賢也は、ノートパソコンの中に転送装置の起動プログラムでも無いか確認するが、それらしい物は何も無かった。
「パソコンも違う…。単に壊れてしまっているだけ?」
賢也が悩んでいると、SACからやって来た解析チームの男が、転送装置をまじまじと見ていて、ふと気付く。
「龍崎さん」
「はい?」
「そのパソコン貸してもらえますか?」
「何かありましたか?どうぞ」
賢也から、パソコンを受け取った男は、パソコンの電源を切り、裏返しカバーを外すと、ハードディスクを抜き取った。
「何を?」
「いや、ここ、ハードディスクが刺さるような隙間があるんですよ」
そう言うと、スッとハードディスクを挿してみる。すると、転送装置から初めて起動音が聞こえてきた。
「やっぱり。パソコンのハードディスクに起動プログラムがインストールされていたんでしょうね」
「ありがとうございます。後は使い方か…」
装置に組み込まれている画面のスイッチが入り、いよいよ装置の起動が完了する。賢也は、装置を触ってみようと、近づいた時、装置から男の声がする。
『君達は?そうか、やはり私は殺されたのだな…』




