60.転送システムの手掛かり
3号達アンドロイドのSAC本部の強襲は、翌日に報道された。
そして、このニュースを見た『黒の牙』のメンバーは、笑う者もいれば、不快に思う者もいたのだった。
「SACめ、ざまぁみろ」
「いつも、俺達の邪魔ばかりするからな、いい気味だぜ」
下位のメンバーが、ゲラゲラ笑いながらニュースを見ているとそこに五十嵐がやって来た。
「お前達、何が楽しいんだぁ?」
「あ、五十嵐さん。いや、SACが襲撃されたってニュースを見て、いい気味だって笑ってたんですよ」
「ふーん。それの何が可笑しいんだよ。アンドロイドの奴らがSACを襲撃したという事はだ、あいつらが一番邪魔だと思ってるって事だ。俺達は、眼中に無いって事だよ」
「え、そんな事は無いんでは?」
「おい、俺の意見が違うっていうのか?」
「いや、そういうつもりじゃ…」
「吹っ飛んどくか?空を飛んでみたいだろ?」
下位メンバーは、顔が真っ青になり、おどおどしていると、部屋にまた一人入って来た。
「ねぇ、何の騒ぎなの?五十嵐」
「石破か。何でも無い。まぁ、強いて言うなら、縦社会のマナーって奴を教えてるんだよ」
「縦社会って、馬鹿なの?あんた。そいつ顔が真っ青じゃない」
「うるせぇな。襲うぞ。こら」
「セクハラのつもりかい?全く。あんたが五指じゃなかったら、串刺しにしてるとこだよ」
二人の会話に下位メンバーの二人は、いつまた自分達に矛先が向いて来るのか、ハラハラしながら、早く立ち去りたい一心だった。
「って、こんな阿保な会話をしに来たんじゃないわ。五十嵐、リーダー達から召集が入ったから、呼びに来たのよ」
「それなら、さっさと言えよな。行くぞ」
五十嵐と石破の二人が出ていき、ほっとする下位メンバーの二人だった。
「リーダー、五指の皆様が全員揃いました」
「そうか、では通せ」
「はい」
リーダーの部屋に五指が入って来る。
「おい、俺達を全員集めて、何を始めるんだ?当然、面白いんだろうな」
「これ、リーダーに対し何て口の聞き方を」
「火野、構わん。此奴はそもそも強い者と戦うというのが目的で、我等と共にいるのだ。これくらい大目に見てやれ」
「はい…」
火野は、男を睨み付けるが、すぐに、リーダー達の方に顔を向ける。
「さて、呼んだのは他でもない、あのアンドロイド達だ」
五指の皆は、まあそれだろうと思っていたが、静かに続きを聞いていた。
「奴らのアジトを突き止め、殲滅してこい。恐らく、奴らは再びSACの本部を襲撃するだろう。その時を狙え」
「俺は降りるぜ。ロボットなんかと戦っても面白くも無い」
「神無よ、あいつらは、戦えば戦う程に学習し、手強くなる。お前の言う強い者という点においては、十分だと思うぞ」
「へぇ。轟。お前、そう言えば負けたんだったな…。俺と戦うに値するか、試してやろうじゃないか」
五指が全員で行動するのは初めての事。普段から揚げ足を取って、煽ってばかりの面子で大丈夫かと石破は、内心思いつつも、リーダーに返事をする。
「分かりました。SACの本部の襲撃情報が入りましたら、お願いします。では、皆、解散しますね」
部屋から出た後、神無を除く皆が、同じ言葉を口にする。
「「「「足を引っ張るなよ」」」」
「お前達、こういう時だけ、息がぴったりだな」
「「「「うるさい!」」」」
「くくく。ほら。まぁ、俺は強い奴とやれれば良い。せいぜい頑張りな」
神無は一人立ち去って行った。そして、他のメンバーもそれぞれの自室へと戻って行った。
賢也は、加護の元へ再び訪れていた。
「司令、転送技術で何か分かったというのは、本当ですか?」
「ああ。だが、悪い報せとなるな」
「どういう事ですか?」
「それは、創地博士と共にアテナの開発に携わっていた人物が一人いたそうだ。その人物は、神移博士。彼がアテナの活動範囲を拡げる為に、転送システムを研究していたらしい。その彼だが、死体となって見つかった。頭部を針のような物で貫かれていたそうだ」
「それは」
「ああ、恐らくアンドロイドの仕業だと思って間違いない」
「くそ。手掛かりが。司令、その神移博士の研究所を調べに行って来ても?」
「ああ、頼む」
「はい。行って来ます」
賢也は、司令室から出ると急ぎ、神移博士の研究所へと向かうのだった。
研究所へ着くと、警察による調査の真っ最中だった。
賢也は、警察に事情を説明し、調査に同行させてもらう。
警察から、周辺の物には触るなと言われた為、思うようには調べる事も出来ず、無理かと諦めながら、神移博士の寝室に入る。
「ここで神移博士は、殺されたのか」
そして、何気なく部屋にあった本棚を見ると、神移博士の研究資料がそこにあったのだ。
「これだ。でも、資料を持って帰る訳にもいかないよな」
賢也がどうしたものかと、悩んでいると、鑑識の一人が賢也に声を掛けてきた。
「どうしましたか?何か変わった事でも?」
「いえ、アンドロイドを探す手掛かりになるかもしれない資料がここにありそうなんですが、どうしようと悩んでいたんです」
「そこの資料は、特に重要な資料は無さそうでしたよ」
「え、見たんですか?」
「まぁ、一応。犯人が触ったかもしれないので」
「何か転送技術みたいな事を書いた資料はありませんでしたか?」
「転送?特に無さそうでしたけど」
「そうですか…」
賢也が本棚から離れようとした時、本棚から空気の流れを感じる。
賢也は、部屋の外に出てみるが、この寝室は、建物の一番端に位置しており、壁しかない。空気が流れて来るはずがなかった。
「すみません。窓から外に出ても良いですか?」
「え?構わないけど、ここ、2階だよ」
賢也は、窓を開けて外に出て、部屋を見る。
「あれ?おかしいぞ」
賢也は、再び部屋に戻り、廊下に出る。
やはり、おかしい。外から見ると、まだ建物の端は、小部屋が一部屋くらいありそうだが、中に入ると、壁で部屋など無い。
「すみません。この部屋、どこかにスイッチとか無かったですか?」
「無いよ。どういう事?」
「この本棚から空気の流れを感じるんです」
鑑識が本棚に来ると、賢也の言っている場所に立ってみる。
「本当だ。僅かだが、風が。おい、ティッシュをくれ!」
鑑識は、ティッシュを千切り、本棚の前に持って来ると、ティッシュが揺れた。
「これは、おい、ここ何かあるぞ!」
全員で、部屋中を再度隈無く探すと、ベッドの足元に小さな窪みを見付けた。
「これか?押してみるぞ!」
鑑識が窪みを押してみると、本棚からカチリという音が聞こえた。すると、本棚が1cm程、持ち上がり、ドアが開くように動き出した。
その先には、賢也の予想通り、小部屋があった。その部屋に入ると、下へ続く階段がある。
鑑識達は、刑事を呼びに出ていった。賢也は、その階段を降りていく。長い階段だ。これは、直接地下まで続いているな。長い階段を下るとドアが現れた。上から刑事が降りてくる気配を感じる。
賢也は、ドアを開けて中に入ると、そこには見たことも無い装置があった。
デスクの上にあった紙を見て、これが賢也の探していた物だと分かる。
紙にはこう書かれていた。
《転送装置に関するレポート》
「おい、勝手に入るな。何だぁ?このでかい装置は?」
「これが、俺の探していた物みたいです」
「じゃあ…」
その時、上から怒鳴り声や悲鳴が聞こえてきた。
「何だ?上で何かあったのか?」
賢也と刑事は、階段を急いで上がると、刑事や鑑識達が襲われていた。
「お前は!」
それは、アテナそっくりの顔だった。
「このような場所に隠していたとは。主等には感謝せねば。さて、破壊させて戴こうか」
そのアンドロイドは、階段のある部屋に向かって歩み出した。




