63.いざ、アンドロイドの拠点へ
SAC本部に再び襲撃してきたアンドロイドの集団。そこに更に現れた『黒の牙』。今、再び三つ巴の乱戦が始まっていた。
「お前。名は?」
「お前に名乗る名前なんかない」
「あ、そう。まぁ、いいや。さっきの攻撃を避けたのがまぐれか確かめさせてもらうぜ」
賢也との間を詰めようと動き出す神無に対し、賢也は、横へ駆け抜ける。
「何だよ。やらないのかよ?」
「飛燕!」
神無が賢也を追いかけようと方向転換した所を狙って飛燕を放つ。
「風切り」
賢也の飛燕に合わせるように神無も技を放つと、互いの技を相殺する。
「今のは飛燕?」
「うん?風切りに似た技?面白ぇ。面白ぇじゃねぇか。お前、剣術はどこの流派だ?」
「四候闘剣術、今は四候闘剣術亜流と名乗っている」
賢也の剣術を聞くと、神無は少し考え始めた。
「四候闘剣術……。ああ、朱雀を真似した派生にそんなのがあったか?」
賢也には、聞こえない程度の声でボソリと呟くとニヤァっと笑みが溢れる。
「ふふふ、『黒の牙』に入って、やっと満足出来そうな相手に出会えたぜ」
無防備に近い構えだった神無が、構えを取る。
「さあ、これをどう対処する?」
腰を深く落とす神無。姿勢も前傾姿勢に変化し、賢也に向かって、突進する。
「冥爪牙」
賢也との間合いを一瞬で詰めた神無が腹を狙って、突きを放つ。
「これは、氷牙突?」
賢也は、体を半身反らし、神無の突きが空を切る。賢也が脇へカウンターを入れようとした時、賢也の喉元を狙って貫手が襲ってきた。これを体を捩らせ、なんとか凌ぎ、体勢を整えるために、神無の横腹を蹴り、飛び退く。
「素晴らしい!まさか、避けるだけじゃなく、反撃までしてくるとは。お前は、本物だな。よし、俺は帰るぜ。お前はまだ強くなりそうだ。完全に今の攻撃を避けられるようになったら、戦ってやる。その時は、俺も剣を抜くぜ」
何を言っている。完璧に避けたはず…。
ズキッ。
賢也は、腹部に痛みを感じる。拳圧でやられたのか?
「おい、俺は退く。とっとと穴を開きな」
天に向かって神無が叫ぶと異空間の穴が開く。
「じゃあな。あ、そうそう俺の流派を教えていなかったな。俺の流派は、四聖神冥流だ。覚えておきな」
そう言い残すと、神無は異空間の穴へと消えていった。
四聖神冥流だと。まさか、師匠が言っていた最強の剣術。だが、あいつは素手であれだけの力を見せた。あんなのが『黒の牙』にいるとは。
だが、今は、アンドロイドが先だ。奴の事は今は後回し。
賢也が神無と戦っていた間に、『黒の牙』、SACの活躍でだいぶ雑魚アンドロイドの数は減っていた。それもあって、アテナの分身体も高みの見物から、戦闘に参加していた。『黒の牙』の男が放った炎を水弾が相殺する。
「あれは、3号か」
戦闘担当の3号がここにいるのなら、奴らのアジトに乗り込んだ方が良いか。
「力也さん、ここは任せます」
力也は、雑魚アンドロイドの頭を斬り落とした後、賢也の方を向き、親指を立てる。
賢也は、力也の合図を見ると転送装置のある部屋へと戻っていった。
残りの雑魚アンドロイドがあと、9体になった時、『黒の牙』の石破が気付く。
「あら、誰かと思えば真希じゃない」
アンドロイドに石礫を飛ばしていたSACの石破に声を掛けた。
「え、姉さん?亜希姉さんなの?何やってるのよ!」
真希も後ろで戦っていた『黒の牙』の女が姉の亜希だと気付く。
「あなた、SACなんかに入ってたんだ」
「姉さんこそ、何で『黒の牙』なんかに居るのよ。父さんも母さんも姉さんが消えてからずっと心配してたんだよ」
「あの二人が?まさか?あたしが居なくなって、清々してたはずだよ」
「そんな事ない!」
「どうでもいいわ。そんな事。あなたが邪魔をするのなら、例えあなたでも容赦はしないわよ」
「姉さん…。私が必ず姉さんを止める」
「『黒の牙』の五指のあたしをたかがSACの一隊員であるあなたが止められると。笑わせないで」
亜希は、踵で地面を強く踏みつけた。すると、真希に向かって地面が裂けていく。真希は、後退するが、裂け目は、真希を追いかけ進んでいく。その溝に3体のアンドロイドが落ちていく。
「ほら、あなたも落ちちゃいなさい」
「誰が落ちるものですか!」
真希は、開いた溝を土で塞いでいく。姉妹共に大地の能力だが、全く正反対の能力だった。姉は攻撃的に、妹は守備的に。そのせいもあって、決着がつかない。
「真希のくせに、しぶとい」
「姉さんだって、しつこい」
姉妹の戦いが行われていた間に、雑魚アンドロイドは全て片付いていた。
「おい、石破。遊んでないでお前も手伝え」
「うるさい。うん?雑魚は片付いたのかい?」
「お前な。さっさとあれを片付けるぞ」
「五十嵐、片付けるなよ。目的忘れたのか」
「轟の言う通り。お主、暴れ過ぎじゃ」
「ちっ」
力也達は雑魚アンドロイドがこうも早く片付くとは思っていなかった。それだけ『黒の牙』の4人の戦闘力が高いという事である。
「あいつら、今はアンドロイド相手に暴れているからいいが、こっちを狙って来たら、厄介だな」
「力也さん、あいつらは力也さんと賢也のどちらかしか相手出来ないんじゃないか?」
「千士郎、これが落ち着いたら、訓練だ…」
「げぇ、まじか…」
五十嵐が、3号に向かって走り出す。
3号は近付いてくる五十嵐に向け水弾を放ち、牽制すると自ら五十嵐に向かって突っ込んでいった。
「こいつ。俺を舐めるなよ」
「あたしは、あんた達を舐めてかかったりしない。あたし自身まだ成長してる最中だからね」
3号は、五十嵐に右回し蹴りを放つ。五十嵐は、これを腕でガードする。
「痛ぇ。メタルボディは伊達じゃないってか。お返しだよ。ぶっ飛びな!」
五十嵐は、左腕を3号の腹に当て、異能を使った。3号の体を暴風が襲い、宙に舞い上がる。
「風圧で動けない…」
「これでも喰らいな」
宙に舞い、暴風による風圧で動けない3号に向け、火野が直径2m程の火球を放った。
3号は、水球を自分の前に作るが火野の火球で蒸発し、直撃を受けた。
「きゃぁぁぁぁ」
3号が人間の女性のような悲鳴を上げる。体が燃えながら、地面に落ちた。
3号の体が半分程溶けて無くなっている。
「くぅぅ。リカバリーシステム起動。転送もお願い…」
3号の周りを光が包み込んだ瞬間、五十嵐が3号の傍に走り込み、3号と共に消えてしまった。
「五十嵐が上手く行ったな。俺達は、一旦帰るぞ」
轟達の後ろに異空間の穴が現れ、残った3人も消えていった。
「あいつら、アンドロイドが目当てだったのか?」
3号が消えたら直ぐに消えたから、アンドロイドが目的だったのは間違いないだろう。何のためかは分からないが。力也達は、疑問を抱いたまま建物の中へと戻っていった。
3号と共にアテナ達の拠点へと転送された五十嵐は、大笑いを上げていた。
「はぁっはっはっ!上手くいったぜ。ここがこいつらのアジトか」
「貴様、あたしが転送されるのを狙っていたのか」
「ああ、お前達の親玉を片付けて、潰すためにな。その前に死にかけのお前がまずは消えな」
五十嵐の右腕から暴風が吹き始める。指を一本だけ伸ばすと暴風の玉が指先に出来上がっていく。
3号の体は、少しずつリカバリーシステムにより復元されてはいるが、まだ逃げるには十分ではない。やられる。3号が覚悟をした時、五十嵐に向かって、赤い光線が飛んで来た。
「危ないな。アジトだから、仲間がいてもおかしくないか」
「3号。無事ですか?その侵入者は私が対処します。こちらへ」
「2号、助かった。こいつは強い。気を付けて」
2号は、再び五十嵐に向け光線を連射。五十嵐は、暴風の壁を作り出し、ガードする。その間に3号は、這いずり2号の傍に辿り着いていた。既に、損傷した体も8割程回復している。
「3号、奥に行き1号にあの侵入者を飛ばすように頼んで来て下さい」
「分かった。すまないね」
「いえ、ここの防衛が私の務め。これが任務です。気にしないで」
2号と3号が会話をしている間に、五十嵐は、両手に暴風の渦を纏わせていた。
2号の光線は暴風の壁で完全に防いでいる。なら、少しずつ前進すれば、直接殴り飛ばせる。五十嵐は、一歩、また一歩と前進し始めた。
2号は、五十嵐の前進に気付き、連射を止め、光を溜め始めた。2号の分析により、暴風の壁を撃ち破るエネルギーが作り出され、解き放たれた。高出力の極太レーザーが五十嵐に向かって真っ直ぐ走る。
「はっはっ!その隙を待っていたぜ!」
暴風の壁を解き、自分の足に纏わせ一気に2号に近付き、両腕に纏わせた暴風の渦を2号にぶつける。
「ぶっ飛びな!」
両腕の渦に構成しているナノマシンが散り散りに分解されながら、吹き飛ばされる。
「何だ?3号とかの方がまだ戦えたぞ。つまらん」
五十嵐は、吹き飛んで消えた2号の事は放って、奥へと進みだした時、背後から吹き飛ばされた。
「がはっ。何だ?」
後ろを見ると、先ほど吹き飛ばしたはずの2号が立っている。
「お前、吹き飛んだんじゃ?」
「私は、復元速度が他の者より早いので。そして、ありがとうございました。私も風の力を手に入れることが出来ました」
次の瞬間には、五十嵐の背後に2号が現れ、風の珠を五十嵐の背中にぶつける。五十嵐が入り口の傍まで吹き飛ばされたその時、入り口に転送による発光が起きる。
「?」
光の中からは、賢也が現れた。
「さぁ、アンドロイド問題を片付けさせてもらう。うん?何で、人が?」
賢也は、吹き飛ばされ気絶していた五十嵐を入り口にずらし、2号へと剣を向けた。




