56.三つ巴の行方は如何に?
賢也は、右腕をブレード状に変化させ、自分に向かって走って来る廉価版アンドロイドに注意を払いながら、アテナ分身体1号の背後に現れた男を見ていた。
「このタイミングでいきなり現れたあの男は、『黒の牙』か!?」
こんな雑魚アンドロイドに構っている暇は無い。さっさと終わらせて貰う。
アンドロイドは、賢也の元へと辿り着くと、右手を大きく振り上げると、そのまま振り下ろす。生まれたばかりだからなのか、動きは遅く、単純だった。
賢也は、いとも容易く攻撃を躱すと、アンドロイドのブレード状の右腕を肩から斬り落とし、振り下ろした剣の勢いを殺さず、横に薙ぎ、胴を真っ二つに斬り裂いた。
それを見ていたセンは、感心して、
「やっぱり、お前の剣筋は、いつ見てもすげぇよな。あっさり勝ったじゃねぇか」
「セン、感心してないであっちに行くぞ」
賢也が、センを促し、アテナ分身体1号と『黒の牙』と思われる男の方に向かおうとした時、背後に動く物の気配を感じ、横に飛び退いた。
すると、真っ二つにした筈のアンドロイドが五体満足に賢也を攻撃してきていた。
「こいつ!」
賢也は、アンドロイドとの間合いを一瞬で詰めると、体を縦に真っ二つに斬り裂いた。
「これなら…」
賢也によって、縦に真っ二つとなったアンドロイドの体が目の前で、元に戻っていく。
「おいおい、嘘だろ…。倒れないのか!?」
「賢也!俺に任せろ!」
センは、斧を横にし、刃の腹で、アンドロイドを叩き潰す。
「これなら復活出来ないだ…ろ?嘘…」
センによって、プレスされたアンドロイドがむくむくと元に戻っていく。
「こいつ、ゲームのアンデッドより、達が悪い!」
「そうか、ナノマシンの集合体だったな。コアを破壊しないと復活するのか」
「賢也、俺、今、こいつぺちゃんこにしたよな?あの状態で復活するんだぞ。何処にコアなんてあるんだよ!」
「コアが無いとすると…。試してみるか」
賢也は、蒼を発動すると復活して、襲い掛かろうとしているアンドロイドに向けて、蒼炎を放った。
アンドロイドは、両腕で蒼炎をガードするが、命中した部分は、燃えて消える。
そして、消えて無くなった腕は、再び修復され、元に戻ると、賢也達に向かって走り出した。
「駄目じゃねぇか」
向かって来たアンドロイドを殴り飛ばし、痛かったのか、手をぶらぶら振りながらセンが文句を言う。
その文句に対し、賢也は黙って再びアンドロイドに蒼炎を放つ。
蒼炎は、アンドロイドの右足に命中し、燃やした。
右足を失い、バランスを崩した所をセンが斬り付ける。アンドロイドは、左肩から、ばっさりと斬られ、倒れ込んだ。
「お、効いたのか?」
センが、アンドロイドに攻撃が効いたのか確認している間も、賢也は、じっとアンドロイドを観察していた。
そして、アンドロイドは再び無くなった右足を復活させ、斬られた部分を接合すると、起き上がった。
「だぁぁ。もうっ!こいつ、うぜぇ」
「やっぱり。そうか」
「賢也、何がやっぱりなんだ?」
「セン、あいつを見て気付かないのか?俺が燃やして復活する前と後の違いに」
「違い???」
センは、何が違うんだと思いながら、アンドロイドをよく見ると、うん?違和感が…
「分かったか?」
「確かに、何か違和感が…。なぁ、ひょっとして、あいつ痩せた?」
「そうだ、痩せたというより、人の形を保つ為に、体の一部を使って形を形成してるんだ。つまり、あいつを形成するナノマシンを全て破壊すれば、あいつを倒せる」
「それって、剣や斧じゃ無理じゃねぇか」
「あぁ、俺に任せろ。お前は、あっちを頼む」
「分かった。任せたぜ」
センは、アテナ分身体1号と男の方に走って行った。
「倒し方が分かった以上、お前に手間を掛けている暇は無い。一気に行くぞ!」
賢也は、気を練り上げ、アンドロイドに向け、一気に放つ。
「紫炎!」
アンドロイドに紫色の炎が絡み付く。絡み付いた炎は、一瞬でアンドロイドの体を消し炭と化した。
アンドロイドが復活しないのを確認すると、賢也もセンを追い掛けていった。
賢也達が廉価版アンドロイドと戦っていた一方で、アテナ分身体1号と轟が戦っていた。
「『黒の牙』の五指?それはなんですか?」
「リーダーの次に強い5人って事だ。まぁ、今からそれがよく分かるさ」
轟は、腕の電気を体中に張り巡らせた。
「行くぜ…」
轟が動いたかと思うと、アテナ分身体1号の真正面に現れ、頭突きを喰らわす。
轟の頭突きをまともに喰らったアテナ分身体1号は、頭がアスファルトの地面にめり込む。
アテナ分身体1号は地面に手を突き、頭を抜こうとした所を轟が、腹を蹴り上げ、5m程浮き上がる。そして、落下してきた所を轟の右ストレートが直撃し、そのまま後ろに吹っ飛んでいった。
「何だ?歯応えが全くないな。俺が出番る必要なんざ無かったんじゃないか?」
アテナ分身体は、起き上がると、轟に向かって微笑んだ。
「言う程、強く無いですね。出直して来たら如何ですか?」
「言ってくれるじゃないか…。俺の雷纏をもっと受けたいみたいだな」
轟は、再び全身に電気、いや雷を纏う。そして、アテナ分身体1号の背後に回り込み、全ての雷を右拳へと集めると、アテナ分身体1号の背中を殴った。
「あぁぁぁぁぁぁっ」
アテナ分身体1号が雷の衝撃に悲鳴を上げる。轟は、更に左拳に雷を集中すると再び殴りつけた。
「あぁぁぁぁぁぁっ」
アテナ分身体1号の悲鳴が響き渡る。轟は、左右の連打を背中に喰らわせ続けた。
100回は殴っただろうか、止めと言わんばかりに、強烈な蹴りを叩き込み、アテナ分身体1号は、吹っ飛んでいった。
「おっと、ヤバい。ヤバい。破壊したら不味いのに、つい、やり過ぎちまった」
アテナ分身体1号の元に歩いて行くと、声を掛ける。
「おい、壊れてないよな?大丈夫だろうな?」
「ふふふ…」
倒れたまま、アテナ分身体1号が笑っているのに気付いた。
「おい、お前。何を笑っているんだ?」
「ふふふ…」
なおも笑い続けるアテナ分身体1号に腹を立てた轟は、アテナ分身体1号を力一杯に踏みつけた。
「ふふふ…」
「こいつ、回路がぶっ壊れたのか?」
アテナ分身体1号は、轟に踏まれたまま、起き上がる。突然起き上がってきた為、轟はよろめいた。
その直後、轟の腹にアテナ分身体1号の拳がめり込む。
「ぐほっ」
突然の攻撃だったため、まともに受けてしまい、轟は、膝を落とす。
「戦闘中に笑ってしまい、申し訳ありません。貴方には感謝をしなければなりません。貴方のおかげで、私のネメシスシステムは、雷を吸収する事が出来ました。嬉しくて、つい、笑ってしまいました」
「ネメシスシステムだ?」
「貴方のおかげです。ぜひ、味わってください。ネメシスシステム:ライトニング起動」
アテナ分身体1号を赤い雷が包み込む。
「おい、それは俺の雷纏じゃないか!」
「ですから、先ほどから御礼を申し上げておりますが。では、いきます」
アテナ分身体1号が轟との間を詰めたその時、センが二人の間に割って入る。
「よう。お前、『黒の牙』だよな?悪いが、捕らえさせて貰うぜ。あと、アテナの分身体。お前もな」
「SACか。悪いが、お前の相手をしている暇はない。後にしてもらおう」
轟は、そう言うとしゃがみ込み、センの足を払った。
「おっと!」
センは、右手を突き、そのままバク転をして、体勢を整える。その間に、轟とアテナ分身体1号は、殴り合いをしていた。
「動きが突然良くなった。こいつ、時間を掛けると面倒くさいな」
「貴方の動きは、分析させて貰いました。私の戦闘プログラムを更新。貴方に負ける事はありません」
轟が、まともにアテナ分身体1号の右ストレートを顔面に受けて、後退する。そこをセンがアテナ分身体1号に下から斬り上げる。
「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
だが、アテナ分身体1号は、センの斬り上げを難なく躱すと、一瞬でセンの右側に回り込み、センの顔面を殴り飛ばす。
「くぅ。こいつ、速い!オリジナルより動きが良いじゃねぇか。そもそも、今更だが、何で人間みたいに喋ってんだ?オリジナルはもっと機械っぽい喋りだったぞ!」
「私達は成長します。この程度、当たり前の事です。そして、貴方の戦闘パターンは、オリジナルから引き継いでいるので、私には通用しません」
センと話している隙を突いて、轟がアテナ分身体1号に攻撃を仕掛ける。だが、アテナ分身体1号はあっさりと躱すと、二人から距離を取る。
「そろそろ退散させて貰いましょう。予想外の力も手に入れる事が出来ましたので。では」
「もう少し、待ってもらおうか」
アンドロイドを倒し、駆けつけた賢也が、アテナ分身体1号の腕を斬り落とし、三人の間に入る。
「まさか、あれを倒したと!?」
「倒し方さえ分かれば、元々大したことなかったからな、直ぐに片付けれるさ」
賢也は、アンドロイドと戦っていた方を指差す。アテナ分身体1号は、賢也の指差した方向をちらりとみると、賢也に向き直す。
「成る程。貴方は、私達にとって障害となる人のようです。私もまだ力に目覚めたばかり。ここは、やはり、退散させていただきます」
アテナ分身体1号の足元に光の輪が現れる。
「何だ?魔法陣?」
「では、また何処かで」
光の輪から激しい光がアテナ分身体1号の体を包み込む。あまりの光の強さに姿が見えなくなる程だ。
やがて、光が収まると、そこには既にアテナ分身体1号の姿は無かった。
「怪物共の異空間の移動とは違う移動手段なのか?」
賢也が、背後を見ると『黒の牙』の男の姿も無くなっていた。
「おい、セン。あの男はどうした?」
「悪ぃ…。アテナの分身体の様子に気を取られて、忘れてた。俺も気が付いた時には、いなかったよ」
周囲に敵の気配を感じないため、賢也は警戒を解くと、これからの戦いが激しくなるそんな予感を抱きながら、帰るのだった。




