55.三つ巴 SAC vs アンドロイド vs 黒の牙
アテナの発表記者会見の翌日、朝のニュースを騒がしたのは、記者会見ではなく、アテナの失踪、研究所の爆発。そして、創地博士の死亡についてだった。
センの報告により、SAC内では、キメラ、『黒の牙』、アテナと話題が尽きなかった。
そして、賢也達、黒死竜討伐組も久しぶりに各部署から集まり話し合いをしていた。
「セン、『黒の牙』を名乗った男は、リーダーが怪物の死体があると言っていたんだよな」
「ああ、あの男は間違いなくそう言っていたぜ。あの口振りからすると、『黒の牙』のリーダーは、あの男が現れる前に、キメラが暴れていたのを知っていたんだと思う」
「じゃあ、『黒の牙』のリーダーが、キメラを送り込んだって言うの?」
「間の言う事が、当たっているなら、キメラなんて、そうそう出来るものじゃない。『黒の牙』には、あの女達が関わっているのか?」
「力也さん、その結論はまだ早いとは思います。確かに自然にキメラが産まれるとは、思いません。キメラは、あの女達が作ったものでしょう」
「賢也さん、それじゃあ、やっぱり出雲さんや剣十郎さんを怪物にしたあの人達が、『黒の牙』のメンバーにいるんじゃないですか?」
「分からない。あの女達が放したキメラを『黒の牙』が捕らえたという可能性もあるからね」
「ま、何にしろ、詳しい情報が無いんだ。考えてもしょうがねぇよ」
「千志郎、お前が言うな。元はと言えば、お前がやられてしまったのが悪い。全く、鍛え直す必要があるな」
「あ、隊長。それは言わない約束…」
「こんな時だけ、隊長扱いするな。お前だって護衛部の副隊長だろうが…」
センは、力也の指摘を目を逸らして誤魔化した。
「まぁ、それは置いといて、セン、アテナはどうだった?」
「ああ、そこまで強いという感じじゃ無かったが、産みの親である博士を殺して、逃亡するようには見えなかったぜ」
「となると、『黒の牙』が研究所を襲って、博士を殺害し、アテナを持ち去った、というのが、一番疑わしいのかしらね」
「そうだな。ノッコ、そこの調査は、君達、諜報部に任せるよ」
「Ok。出雲兄妹に任せたから大丈夫と思うわよ」
「ところで、優、センの体は、もういいのかい?」
「賢也、俺は問題無いって…」
センの言葉を遮り、優が答える。
「はい。私は治癒だけですが、医療部には、医学に詳しい方もちゃんといらっしゃるので。特に体に異常は無いそうです」
「明智、お前が医療部の隊長なんだから、いらっしゃるは無いだろ。部下に尊敬語は要らない。だから、嘗められるんだぞ」
「すみません。もっとしっかりします…」
「力也さん、そこまで言わなくても。取り敢えず、あの女達、『黒の牙』、そして、アテナ。こいつらの動きに何かあったら、直ぐに報告という事で、今日の会議はお仕舞いに」
賢也は、会議を終わらせると、皆それぞれの部署へと戻って行った。
創地博士の研究所が爆発して、1週間後。
火力発電所にそれは現れた。
発電所の所員が、突如として現れた者の元に向かうと、それは答えた。
「私の仲間を増やす為、電力を戴きます」
それは、送電線に手を向けると、スパークが発生し、それに向かって落ちた。バチバチと激しい音を立てながら、それはスパークを浴び続ける。
そして、横浜で大規模の停電が発生。直ぐに、SACへ連絡が入って来た。
「横浜火力発電所にアテナと思しき、侵入者が電気を奪っているそうです。強攻部に出動要請が入りました」
オペレーターからの出動要請を受け、今回は、賢也自身が出動する事にした。そして、賢也は、護衛部に連絡し、センを同行させた。
「横浜かよ。1時間位掛かるじゃないか。賢也、間に合うのか?」
「1時間も掛けないぞ。最短距離で一気に行く」
賢也は、そう言うと、センと一緒に空へ飛び上がり、一直線に火力発電所まで、飛んで行った。
暫くすると、送電線から、人のような者にスパークが落ちているのが見えた。
「よし、間に合った!」
賢也は、電気を奪っている者の側に降り立つ。
「セン、あれはアテナか?」
「似ているが何か違う。あれは、アテナなのか?」
センは、電気を奪っている者がアテナに似ているが、どこかアテナとは違うと感じた。だが、明らかにそれは人ではなかった。
「そこまでだ!それ以上、電気を奪うのは止めて貰おうか」
賢也がそれに向かって叫んだ。
すると、それは送電線に向けていた手を下ろし、賢也達の方に顔を向ける。
「何ですか?貴方達は?私の邪魔をするなら、容赦はしません」
それは、センの顔を見ても、反応は無かった。
「あれは、アテナとはやっぱり雰囲気が違うぜ。何て言うか、知性が低いというか」
「?。貴方はオリジナルを知っているのですか?」
それは、センの言葉に初めて反応を示した。
「オリジナル?もしかして、アテナのコピーアンドロイドなのか?」
賢也がそれに尋ねると、それは、答える。
「はい。私は、オリジナルアテナが自身のナノマシンを増殖し、作製したアテナ分身体1号です」
「アテナ分身体だと。成る程。それで何か違和感があったのか。というか、1号って事は、他にもいるのか?」
センが良いところに気が付いた。分身体が1体しかいないのなら、1号なんて呼ばない。
「私以外にあと3体のアテナ分身体が存在します。そして、私達は更に廉価版アンドロイドを作製するために、電力が必要なのです。ですから、邪魔をしないで下さい」
アテナ分身体1号が再び電気を奪おうとする。それを賢也は、制止する。
「止めろ。まず、お前達は仲間を増やしてどうするつもりだ?」
「決まってます。人に代わって、この地球をより良いものにします」
「それは、つまり…」
「はい。人には当然、滅んで貰います」
アテナ分身体1号の回答は、賢也の予想通りの答えだった。
人に代わって、アンドロイドの世界を作る。ロボット三原則を完全に無視だ。創地博士は、とんでもない物を造り出したもんだ。
「地球には、アンドロイドの方が優しいかもしれないが、はい、そうですかと、言える訳ないだろう。阻止させて貰う」
賢也が【銀狼】を手に取り構えると、アテナ分身体1号は、自分の指を千切り取った。
「仕方ないですね。私は仲間を増やす使命があるので、これが相手をします」
そう言うと、指を投げ、赤い光を指に当てると、突然、指からナノマシンが増殖。アテナに似たアンドロイドが1体現れる。
「さぁ、その人間を始末しなさい」
「リョウカイシマシタ」
そのアンドロイドは、返事をすると、右腕をブレードに変形させ、賢也達に向かって走って行った。
「任せましたよ。私は、オリジナルの元に帰ります」
「おっと、ちょっと待ってもらおうか」
アテナ分身体1号の背後から、突然声がする。後ろを振り向くと男が立っていた。
「なぁ、あんた、アテナっていう奴かい?リーダーが会いたいと言ってるんだが、会ってくれないか?」
「私は、マスターではありません。そして、貴方のリーダーと会う事もありません」
「気持ちいい位、きっぱりと断ってくれるな。なら、力付くで来て貰うしかないな」
男の両腕からバチバチと電気が激しく生じる。
「俺は、『黒の牙』五指の一指。轟。雑魚共と一緒にするなよ」
アテナ分身体1号の背後で、賢也達と廉価版アンドロイドの戦いが始まっていた。
そして、こちらでもアテナ分身体1号と突如として現れた『黒の牙』の男、轟との戦いが始まり、SAC、アンドロイド、『黒の牙』の三つ巴が始まる。




