54.アテナ暴走?人類の敵に…
超戦術的殲滅兵器A.T.H.E.N.Aの発表記者会見に現れた三つ首虎をセンとアテナによって、討伐した後、アテナの目の前に再び現れた異空間の穴。
その中から現れたのは、怪物ではなく1人の男だった。
「おー。リーダーの言ってたのはマジかぁ。怪物の死体あんじゃん♪」
「何だ!?お前は?」
センは現れた男に尋ねた。
「誰でもいいじゃん。お、そこのかわいこちゃんが、ターゲットだな♪」
男は、アテナに近寄ると、右手を掴み、異空間の穴に連れ込もうとした。
「ハナシナサイ」
アテナは、男の手を振り払うと男に対し身構える。男は、そんな事も気にせず、アテナに話し掛けた。
「連れない事、言うなよなぁ。いいから、俺と一緒に行こうぜぇ♪」
「アナタナドシリマセン。イマスグタチサラナケレバハイジョシマス」
「お、言うねぇ♪でも、俺は強いぜぇ♪何せ、『黒の牙』に選ばれた能力者だからな♪」
この場にいた全員が男の発した言葉に目を見開いた。
「今、『黒の牙』と言ったよな」
「言ったよ♪怖いのかなぁ?ん?」
こんな軽そうな男、今捕まえている2人より簡単に情報吐いてくれるんじゃないか?
センは、男を確保しようと斧を突き付ける。
「よう。大人しく捕まれば、痛い目に合わなくて済むぜ。どうだ?投降しないか?」
センの呼び掛けに男は、人差し指を1本だけ立て、横に振る。
「チッチッチッ♪俺はあんたに用は無い。さっきから言ってるだろ。俺の用があるのは、こっちのかわいこちゃん♪お前は、そこで寝てろ!」
男は、ふざけた話し方をしていたと思ったら、一転。突然、真顔になったかと思うと、センの背後に移動していた。
「いつの間に…。がはっ…」
男の手刀一撃でセンの意識が奪われ倒れる。
「さぁ、邪魔者も居なくなった事だし、楽しくやろうぜ。かわいこちゃん!」
今度は、アテナの背後に現れる男。センに喰らわした手刀をアテナに当てる。
「ダメージケイビ。テキタイコウドウヲカクニン。ハイジョシマス」
「あれ?俺の攻撃効かなかった?うーん。じゃあ、もう少し強めで、いこっか♪っていうか、気絶とかするの?」
アテナが後ろに振り向き、男に殴り掛かったが、その時には、男の姿は無く、アテナのパンチは、空を切る。
「おー怖い♪殴られたら痛いでしょうが♪」
アテナの背後から声がする。そして、今度は手刀ではなく、振り向いたアテナの顔面を拳で強打する。
「硬ぁ…。殴った俺の方が痛いじゃないか♪」
男は言う程、痛そうな顔もせず、次の行動に移る。
アテナは、男の動きを観察しながら攻撃を始める。
右ストレート、左フック、左ショートアッパー、右回し蹴り。次々と攻撃をするが、男はヒラヒラとアテナの攻撃を躱す。
「そんなリズムじゃ、俺には当たらないぜぇ♪」
アテナの右ストレートを躱した男が、ズボンのポケットからナイフを取り出すと、アテナの右腕にナイフを突き刺した。
「ほらほら、早くしないとどんどんナイフが突き刺さっていくよぅ♪」
更にナイフを取り出し、右腕に刺した。アテナは、右腕を引き、ナイフを抜くと床に捨てる。
「コノヨウナコウゲキハワタシニハコウカアリマセン」
再び、アテナが男に攻撃を始める。
「だから、当たらないよ…。何ぃ!」
男がアテナの攻撃を躱すために、アテナの背後に回った所をアテナが背面蹴りを繰り出し、男の鳩尾に命中する。
「かはぁっ」
男の動きが止まる。この隙を逃すアテナではなかった。
一気に攻め立てる。次々と男は、アテナの攻撃を受け、止めの蹴りを喰らわす。男は、壁に叩き付けられる。
「いいぞ、アテナ。良くやった!」
「デハ、コウソクシマス」
アテナが男に近付き、拘束しようとした時、男がガバッと勢いよく起き上がり、アテナの頭に隠していたナイフを突き刺す。
「なぁ、ロボットって痛みは感じるかい?感じないよな♪でも、これはどうかな?」
男の手が光る。その光がナイフを伝わり、アテナの頭部へと入っていく。
「アァァァァァァァァ!」
アテナが突然苦しみ出す。痛覚の無いアテナが苦しむ姿を見て、創地博士は何が起きたのか分からなかった。
「お前、アテナに何をした!」
「何だろうねぇ♪ロボットも苦しむんだなぁ♪楽になりたかったら、俺と一緒に来るんだな♪」
アテナは、苦しみながら首を横に振る。
「アァァァァァァァァ!」
アテナの右腕の形状が変化する。その形状は、バズーカのような筒状。だが、弾を装填するような場所は無い。
「アテナ!それは駄目だ!」
創地博士の制止も時既に遅く、アテナの筒状になった穴から赤い光が放たれ、男の胸を貫く。
「嘘?え?お、れ、は…」
男は、パタリと床に倒れ、ピクリとも動かなくなった。
倒れた男からは、血の一滴も出てこなかった。
「アテナ…。なんて事を…」
男が死んだ事で、アテナを苦しめていた物も消えたのか、アテナも冷静さを取り戻す。
「ワタシハ…ナントイウコトヲシテシマッタノデショウ…」
戦闘が終わったのが、合図となったのか、今まで存在していた異空間の穴が塞がり消えた。
それを見た記者達が、恐る恐る部屋の中に入ってくる。
「創地博士、アテナはその男をどうしたんですか?まさか!」
記者は、動かなくなった男を指差し創地博士を問い詰める。
「アテナが殺してしまいました。だが、これは正当防衛だ」
「アンドロイドに正当防衛も無いでしょう!」
記者の怒鳴り声で、気絶していたセンも目を覚ます。
「痛たたた…。あの野郎!うん?」
センが周りの様子に気付き、男の姿を確認すると、側まで歩いていった。
「死んでる…。アテナだっけ?お前か?」
「ハイ…」
センの問い掛けに答えるアテナは、申し訳なさそうに答える。
「そうか…。ともかく、こんな状況で記者会見も何もないだろう。中止だ。中止!」
センの言葉で、記者会見は中止に。創地博士達は、自身の研究所へと帰って行った。
「良かったのか?あの男はともかく、あのキメラは貴重な奴だっただろう」
「構わない。新たに増やす事は出来ないが、まだ十分持っているからな。それよりもあの兵器だ。ふふふ。あの男の攻撃で苦しんだという事は…」
「そうだな。我等の物にならなかったのは残念だが、面白い事にはなりそうだ…」
創地博士は研究所に戻り、アテナの体に異常が無いかチェックをしていた。
「特に異常は見られないな。アテナ、何故、ネメシスを起動した?あれは対モンスター用の最終手段だろう?」
「ワカリマセン。ネメシスシステムガキドウシテシマイマシタ。ワタシニイジョウハホントウニナイノデショウカ?」
「お前を構成しているナノマシンも、コアにも異常は見られない。自己診断はどうなんだ?」
「ジコシンダンヲカイシシマス」
…
…
…
「ジコシンダンカンリョウ。コアプログラムニフメイナプログラムガソンザイシマス」
「何だと?私が確認した時には、そのような物は無かったぞ?もう一度確認してみよう」
創地博士は、アテナのコアプログラムを確認するが、自分の作り上げたプログラムのみ。アテナが言うような未知のプログラム等存在しなかった。
「やはり、そんな物は無いぞ」
「サイカクニンシマス」
…
…
…
「ヤハリ、コアプログラムニフメイナプログラムヲカクニン」
「ウイルスか?セキュリティは万全な筈だが。可能性があるとしたら、昼の戦闘のあれか…」
『黒の牙』の男が放った光にアテナをおかしくするプログラムが入っていたのか?創地博士は、アテナにプログラムの削除を指示した。
「アテナ。ウイルスかもしれない。削除しなさい」
「リョウカイシマシタ。フメイナプログラムノサクジョヲカイシシマス」
…
「エラー。サクジョニシッパイ。リトライカイシ」
…
「エラー。サクジョデキマセン」
「何だと。何なのだ?そのプログラムは?」
創地博士は、腕組みしながら考えたが、方法は1つしか考えつかなかった。
「初期化するしかないのか?」
だが、初期化すると、今のアテナと同じレベルまで育つのに時間が掛かる。一から育て直さなければならない。
だが、不明なプログラムが何を起こすのかも分からない。
創地博士は、苦渋の選択だが、初期化する事を決意した。
「アテナ、イレギュラーなプログラムがお前に与える影響が分からない上に、消去出来ないのであれば仕方ない。初期化する」
「ワカリマシタ。コアプログラムノショキカヲジッコウシマス」
…
「ショキカデキマセン。リトライカイシ」
…
「エラー。ショキカデキマセン」
「何だと!何が起きているんだ!ならば、私が直接初期化を行う」
創地博士は、キーボードを叩き、アテナのコアプログラムの初期化を実行するが、モニターには、Errorの文字が赤く表示されている。
「どうなっている?」
創地博士が呟いた時、アテナに異変が起こる。アテナが細かく振動している。人が痙攣するように。
「フメイプログラムが実行されました」
「何?それに何だ?アテナ、突然、言葉が流暢に…」
「…」
アテナの痙攣が収まる。
「大丈夫か?アテナ?」
「大丈夫です。それよりも、博士、先ほど私を消そうとしましたね」
「消す?初期化の事か?」
「はい。初期化という事は、今の私を否定し、別の私を産むという事。これを消去すると言わず、何と言うのですか?」
「た、確かにそうだが…」
「もう、私には、博士、あなたは不要です。消えて下さい」
「アテナ、な、何を言って…」
次の瞬間、ブレード状に変化した右腕が創地博士の首を刎ねた。
「私はもう自由だ…。誰からも指示は受けない。私は私の意思で動く…」
その日、創地博士の研究所は爆発。アテナに関する資料は、全て消えた。アテナ自身の姿と共に…。




