51.新たな事件
ここから新たな展開となります。
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黒死竜が討伐されて3ヶ月が経ち、怪物の姿を見掛ける事も少なくなり、いよいよハンター協会は解散。それに伴い、銃刀法も再び見直しが入り、元ハンターの武器所持は禁止となった。
だが、それを快く思わない者達も少なくなく、元ハンター達の犯罪が増加してきていた。
そして、増加した犯罪は、それだけでは無かった。普通では有り得ないような事件が増えていた。黒死竜の死により、分身体が消え、人々は異能の力を秘めていたのだ。
異能は、何も無ければ気付く事もなく発動しないが、様々なきっかけで、異能に目覚め、犯罪を犯す者が増えて来たのだった。
これに対して、異能犯罪対策チーム『Special Ability Crim Measures(通称SAC)』が設立される。
このSACに黒死竜の討伐実績を買われ、賢也達5人は実働部隊にスカウトされた。
異能に関しては一日の長がある。そのため5人は隊の中でも中心的な立場となっていた。
「龍崎隊長。新しい事件の報告があります」
「またか。最近、本当に増えて来たな。それで、今回はどんな事件ですか?」
「はい。周囲に火の気が無い所で、火事が。消防の話によると、放火の可能性が高いそうですが、現場には、その痕跡すら無いとの事です」
痕跡の無い放火。火の能力か。それも放出系。離れた位置から火を放ったのだろう。
「分かりました。火の異能の可能性が高い。気を付けて調査をお願いします」
「はい!失礼します」
賢也に報告をしてきた隊員は一礼すると、部屋を出ていった。
入れ替わるようにセンが入ってくる。
「また、何かあったのか?」
「ああ、火の異能者の放火事件の可能性があるみたいだ」
「火か…。次から次に現れるもんだなぁ…。この間は、風だっけ?」
「そうだな。まだ犯人も捕まっていない。検挙率0だからなぁ。給料泥棒って声も耳に入ってくるよ…」
「はは。隊長さんは大変だな」
「言うなよ。俺だって、隊長なんて、好きでやりたくもないよ」
ふぅっとため息をつく。SACが出来てまだ間もないため、未だ実績が無かった。賢也がSACに入ってから、大なり小なり、既に事件が10件は起きている。しかも、SACが出動する前には犯人が逃走しており、一人も捕まっていない。関係者の間では、予算泥棒だと言われている。
「そろそろ1件位は、解決しないとな…。で、センはそんな事を言いに来ただけなのか?」
「ああ、そうだった。諜報部からの報告じゃあ、あの女達の消息はまだ掴めていないそうだ」
「そっちも駄目か。まぁ、仕方がないか。出雲さん達には、引き続き頼むと伝えといてくれ」
「分かった。じゃあ、また何か報告があったら来るよ」
そう言って、センも部屋を後にした。
SACの諜報部には、出雲が在籍している。怪物化された時の傷が原因で、戦闘行為は、今までのようにいかなくなったが、元々、忍者という事もあって、諜報活動を行っている。活動中に戦闘になった場合には、常に活動を共にしている出雲の妹、楓が変わりに戦闘を担う。何を隠そう楓もくノ一という、忍者一家だったのだ。
「出雲兄妹は、頼りになるから、吉報を待つしかないな…」
賢也、椅子に座り、ふぅっと再びため息をつく。
黒死竜を討伐したが、人を怪物化させる女2人の行方が掴めていなかった。賢也は、今起こっている異能による事件の一部には、この女達が関わっていると睨んでおり、出雲兄妹に調査を頼んでいたのだった。
賢也の所属する強攻部は、戦闘専門の部署。いつ出動しても大丈夫なように準備はしている。だが、これまでに一度も出動要請のベルは鳴ったことがない。
だが、遂にその時が来たのだ。
ビー、ビー、ビー!
「出動要請!」
賢也は、電話を取り内容を確認する。
「犯人は、火の異能者。警察官が1名負傷。現在、対象を包囲中ですが、犯人の異能が強く突破されるのも時間の問題です」
「分かりました。直ちに、強攻部、出動します。現場には、なるべく到着するまで時間を稼ぐようにお願いします」
賢也は、電話を切ると内線に切り替え、メンバーに伝達する。
「出るぞ。相手は1人。火の異能者だ。初の出動だ。絶対に捕まえるぞ。出動を立候補する者は?」
「お前が行けよ…」
「いや、お前だろ…」
「最初の出動でミス無しなんて、プレッシャーきついだろ…」
内線越しに出動を譲り合っている声が聞こえる。
「全く…。分かった。俺が行って来る。お前達、次は無いからな」
そして、内線を切り、すぐに出発した。
「おら、邪魔だよ。道を開けやがれ!お前達なんかに俺は止められないぜ!」
放火犯が、自分を包囲している警察に向かって、怒鳴りつけると、右手から炎を上げる。
「大人しくしろ。抵抗せず、投降するんだ」
警官が放火犯に投降を促すが、火に油を注いだのか、放火犯はますます興奮すると、投降を促した警官に向け、怒鳴りながら炎を放つ。
「はっ?何で俺が投降しないといけないんだ?お前達より強いんだぜ?今、この場で命の主導権を握っているのは俺だぞ!ほらっ」
放火犯の放った炎は、警官の構えた盾に当たると、一瞬で盾を溶かし、警官の腕を燃やす。
「うわぁっ」
警官は、腕の炎を消すためにばたばたとしている姿を見て、放火犯は、ゲラゲラと笑っている。
「さぁ、次はどいつが燃えたいんだ?」
「くっ。応援はまだか?」
「先ほど連絡が入りました。今SACの強攻部が向かっているそうです」
「SACか。あの給料泥棒の。本当に役に立つんだろうな」
現場のリーダーは、SACの必要性に疑問を持っている人間の一人だった。
「到着するまで、時間を稼いで欲しいとの事です」
「これまで役に立ってもいない奴が、よく言う。言われなくとも、我々で奴を逮捕するぞ」
「「はい!」」
「何をごちゃごちゃと。一人位、死なないと分からないのか?」
再び、炎が警官を襲う。悲鳴を上げながら、逃げ惑う。
「ふん。家は燃やせなかったが、こいつらの慌てふためく姿を見れて、まあ、満足か。ここらが潮時かな…」
放火犯は、十分楽しんだという顔をして、崩れた包囲網を抜けようと歩き出した。
「逃げるぞ。おい、逃がすな」
「無理です。突破されます」
放火犯は、笑いながら包囲網から出ようとした時、リーダーが警棒を振りかざし、殴りかかった。だが、警棒を簡単に掴み取ると、殴り飛ばした。
「能力使わなくても、強いんだぜ。じゃあな」
殴り飛ばされた警官が、気を失う前に、声が聞こえた。
「もう大丈夫。後は任せてください」
「だ、れ、だ…」
応援にやって来た賢也が名乗る前に、警官は、気を失ってしまった。放火犯も気が付く。
「何だ?お前は?見た所、警察じゃなさそうだが?」
「まだ、そんなに有名じゃないからな…。SACって聞いたこと無いよな?」
「何だそりゃ?」
「お前達みたいな異能犯罪者専門の機関さ。大人しく逮捕されるなら、痛い目に合わないで済むぞ。どうする?」
「痛い目に合うのはそっちだよ!」
周囲の警官は、突然現れた応援に驚きながらも、SACという単語を聞き、期待と不安が入り交じった表情で、その様子を伺っていた。
「燃えてろ!」
放火犯は、賢也に向け炎を放つ。放たれた炎は、賢也の体を包み込む。
「何だ。威勢よく現れたくせに大したことないじゃないか」
後ろを向き、離れようとした放火犯に、賢也は声をかける。
「おいおい。何処に行くんだ?誰が大したことないって?」
放火犯は、賢也の声に驚き、慌てて振り向く。
「何だと!燃えているのに平気なのか!?」
賢也は、気合いを込めると、火が一瞬で消える。
「いや、この程度じゃ燃えないよ。ほら、服だって何とも無いだろ?炎っていうのは、こういうのを言うんだぞ」
賢也は、焔で拳に炎を纏わせる。
「俺と同じ…」
「一緒にされるのも嫌なんだが…」
賢也は、一瞬で間合いを詰めると、焔で放火犯を殴りつける。
「かはっ。馬鹿な、俺が燃え…てない?」
「いや、燃やしたら駄目だろ。逮捕が目的なんだからな」
「何だ。こけおどしの炎か。なら、何も怖くない!」
放火犯は、賢也のように右手に炎を纏わせると、賢也を殴りつけた。が、賢也はあっさりと躱す。
「やれやれ。しょうがないな」
賢也は、躱しながら、腹に一撃を入れる。しかも、この一撃は、さっきと違い放火犯の体を燃やす。
「ぐふぅ。熱い。言った事とやってる事が違うじゃないか…」
体をくの字に曲げ、苦しみながら、燃えている腹を手で叩き、火を消そうとしている。
「心配するな。少し火傷をする程度に抑えてるよ。どうだ?投降する気になったか?」
「うるさい!くそ、覚えてろよ!」
そう言うと、放火犯は、賢也に背を向け、走り出した。
「はっはっはっ。俺のスピードには追い付けないだろ!?」
凄い勢いで、走りながら逃げ出す。後ろを振り向くと、賢也の姿が無かった。
「まさか、炎が効かない奴がいるとは、まぁ、次は気を付け…だぁっ」
前に振り返ろうとした時に、スッ転んだ。
「痛ぇっ。何だ」
起き上がった時、目の前に賢也がいる。
「な、何でお前が」
「何でって…。走って来たんじゃないか。お前が逃げるから」
「くそぅ!舐めるなぁ」
賢也を殴ろうと拳を突き上げるが、賢也は、その手を掴み後ろに回す。
「痛だだだだだっ」
賢也は、そのまま手錠をはめ、放火犯を拘束する。
「こんな手錠なんか!」
放火犯は、炎で手錠を溶かそうとするが、びくともしない。
「何で溶けないんだ?くそっ!」
「無駄だよ。色々な能力に耐えられるように作った特注品だ。観念するんだな」
「くそぅ。あの女。何が最強の力だ。何をやっても問題無いなんて、騙された…」
「あの女、だと」
「ああ、俺は知らない女にこの力を教わったんだ」
知らない女?まさか…
「そいつは、何処に行った!」
「知らねぇよ!」
駄目か。だが、やはりあの女達が今の異能事件に関わっているのは間違いなさそうだ。
賢也は、放火犯を警察に渡すとSAC本部へと帰った。
この事件をきっかけにSACの名は世間に知れ渡るのだった。
だが、異能による事件は増加する一方。SACの活躍が期待される。




