49.富士の樹海探索 4日目、決戦!
富士の樹海を探索し、2日目の夜、G型、虫型キマイラとの死闘の結果、傷を負った仲間を休ませるため、3日目は、休養を取る事にした賢也達。
途中、何体かの樹海を徘徊していた怪物が、テントに気付き襲撃してきたが、賢也の手によって、全て撃退し、皆の傷、疲れは癒された。
そして、4日目の朝、いよいよ黒死竜が隠れているというポイントに向かって、賢也達は出発した。
「さて、あの女達の言う事が本当なら、こっちの方で異空間の中に潜んでいるらしいけど…」
気配を探ってみるが、やはり何も感じない。ノッコを見てみるが、首を横に振った。
「向こうから出てくるのを待つしかないのか?それとも、あいつらに騙されたか…」
手分けして探索したい所だが、1人になった所を襲われたらひとたまりもない。仕方なく、全員固まって怪しそうなポイントを探してみるが、そもそも異空間に潜んでいるという事は、その異空間を探さないといけないという事だ。
「異空間なんてどうやって探せばいいんだよ」
力也が文句を言う。他の皆も同じ事を思っていた。そして、自然と賢也に視線が集まる。
「いや、俺に期待されても無理。俺の異空間の能力は、自分専用の異空間を作るだけだから、他の異空間に干渉するなんて出来ないよ」
賢也は、無理と手を振る。皆は明らかにがっかりした顔を見せ、探索を再開する。すでに、探索を始めて、3時間経過した。
「なあ、そろそろ休憩しないか?腹も減ったし」
センが昼食をしようと提案する。確かに歩きっぱなしで、疲れていないと言ったら、嘘になる。
「そうだな。じゃあ、食事にしようか」
賢也は、携帯食を皆に配り、休憩を取る事にした。
「でも、おかしいよな。今までなら、3時間も歩いていたら、怪物の1体や2体位、遭遇してもよさそうなものだが、全くでないぞ」
力也は怪物と出会わないのを不思議に思っていた。
「ここら辺は、全然怪物の気配はしないわよ。確かに変ね」
「そうだな。探索するのには都合がいいから、気にしていなかったけど、おかしいな」
「あの女達に騙されたんじゃないですか?」
「いや、櫻翔さん。あいつらは、俺達に黒死竜を倒して欲しいと思っていたから、そこは嘘じゃないと思いますよ」
そうだ。あいつらは黒死竜に死んで欲しいと願っていた。嘘を言う必要はない。だとしたら、この辺りに怪物が居ないのも関係がある?
「考えてもしょうがないだろ。腹も満たされたし、探索続けようぜ」
センの単純さを少し羨ましく思ったが、確かに気にしていてもしょうがない。
「よし!行くか」
賢也達は、再び黒死竜を探し始めた。1時間経っても何も無かった。
「うーん。参ったな。あいつらの提案に乗った方が良かったのか?」
「いや、それは駄目だろう。いくら何でも、怪物と手を組むなんて、絶対に駄目だ」
力也の女達と手を組んだ方が良かったかという呟きに、賢也が力強く反対する。
「そういえば、今思い出したけど、空にって言ってなかった?」
ノッコが女の言葉を思い出す。
「確かに。空にって言ってました」
優も思い出した。空に異空間の穴があると。全員が空を見上げるが、それらしい穴は無い。
「まあ、穴の入り口が見える訳が無いか」
賢也は、ひとまず空に飛び上がった。地上からでは分からなくても、空からなら分かるものがあるかもしれない。
「さて、何かあるかな?」
上空で止まり、辺りを見回す。特に何も見えないが、何か違和感を感じる。それが何なのかは分からない。だが間違いなく、地上では感じなかった何かを感じる。
賢也は、周辺を飛んで回ると、ある地点でその違和感をより強く感じる場所がある事に気付いた。
「ひょっとして、ここなのか?」
無理だろうと思いながらも、その場所に異空間の入り口を出してみるが、特に何も起きなかった。賢也は、目印代わりに異空間の入り口を出したまま、皆の元へと戻った。
「お、戻って来た。どうだった?」
センが賢也に尋ねると、賢也は答えた。
「ああ、空はここと違って何か変なんだ。何が変かと聞かれたら、答えられないんだけど…」
そして、櫻翔の方を向き、
「櫻翔さん。あそこに俺が開いた異空間の入り口があるんですけど、そこを空間切断の能力で斬ってくれませんか?」
「え、いいですけど。届かないですよ」
「それは、俺がそこまで連れて行きます」
賢也は、櫻翔を連れて空へと飛び上がり、違和感を強く感じたポイントへとやって来た。
「じゃあ、お願いします」
賢也の合図で櫻翔が空間を切断する。
その切断された空間から異常な程の邪気が洩れ出て来た。
「ビンゴ!だけど、これはヤバい。まさか、黒死竜の邪気がここまでとは…」
賢也達が地上に降りるのと同時に、辺り一面が暗くなった。
そして、恐ろしい声が響く。
(誰だ?我の眠りを妨げる愚か者は?)
その声は頭の中に直接響く。優やノッコは、恐ろしさのあまり、地面に座り込む。
「ヤバい。ヤバいよ。あれは…」
「賢也さん、勝てるんですか?あんなのに…」
その姿が異空間の中から現れた。その姿は、成る程。黒死竜か。その体は、漆黒のように黒く、姿は、人型から出て来たドラゴンにそっくりだ。そっくりというより、こっちがオリジナルか。体長は20m位。
そして、黒死竜は、口から巨大な炎の球を吹き出そうとしていた。
(死んで、我の糧となれ!)
「来るぞ!」
黒死竜の吐き出した炎の球が、賢也達に向かって飛んで来る。
「この程度!飛燕・水!」
賢也の放った飛燕・水が炎の球を真っ二つに斬り裂く。そして、それに合わせて力也が円月輪を投げていた。割れた炎の間を円月輪が通り、黒死竜の右足に当たるが、無傷だった。黒死竜に当たり、落ちて来る円月輪を回収し、力也は構える。
「ちっ。無傷か。そう簡単にはいかないか」
賢也と力也は、黒死竜を睨み付け、それに気付いたのか、黒死竜も賢也と力也の2人を見る。
(ほう。今までにここに来た奴らとは、違うようだ。なら、これはどうだ?)
黒死竜の翼から黒い霧が出る。
「あれは!霧に触れたら体が溶けるぞ!気を付けろ!」
力也は協会本部でかつて討伐隊が全滅した時の話を聞いていた。その時の唯一の生き残りの話しでは、あの黒い霧で皆、溶けて無くなったと言っていた。
「あんなのどうやって防ぐんだよ!」
センが吠える。ノッコが覚悟を決めたのか立ち上がり、黒い霧を出した。
「これなら、どう!」
ノッコの霧が黒死竜の霧を包む。どっちの出した霧か見た目では、全く分からないが、霧が地上に降りて来ない。ノッコの霧がどうやら塞き止めているようだ。
(面白い!我と同じ力を使うか!面白いぞ!)
黒死竜は、そう言うと地上へと降りてきた。
(これまで、幾つもの惑星の命を喰らって来たが、貴様達のような者はいなかった。歯応えがあって、実に面白い!もっと我を楽しませるがよい!)
「ガァァァァァァァッ!」
黒死竜が咆哮を上げると、巨大な竜巻が発生し、賢也達に向かって来る。
「あんなの喰らったら、体がバラバラに千切れるぞ」
「これは、僕が!」
櫻翔が空間切断で竜巻を真っ二つに割る。二つに割れた竜巻は、霧散し消えていった。
(今のは…。貴様が我の空間に干渉した者か。その力は、危険だな。貴様は死ね)
「え?」
黒死竜の言葉と共に、櫻翔の足元が盛り上がり、櫻翔の腹を突き刺す。
「がはっ」
「櫻翔さん!」
賢也が駆けつけようとした所に、黒い雷が櫻翔に直撃する。
「あぁ…」
優の嘆き声が洩れる。黒い雷の落ちた跡には、真っ黒に焦げた櫻翔の遺体が転がっていた。
「貴っ様ぁぁ!」
「よくもぉぉぉ!」
「うぉぉぉ!」
賢也、力也、センが黒死竜に斬り掛かる。だが、その硬い皮膚は、3人の攻撃を全く受け付ける様子もなく、弾かれるだけだった。
「くそ、硬すぎる!」
「自分に傷を付ける事が出来るのが、櫻翔さんだけだと。だから、櫻翔さんを一番に攻撃したのか」
「舐めやがって」
(仲間が死んで、腹を立てたか?気にするな。どうせ、全員同じ運命だ)
賢也は、深呼吸をする。怒りに身を任せては駄目だ。剣が鈍る。
「気にするなだと。ふざけるな櫻翔さんの犠牲は無駄にはしない。必ず、お前をここで倒す!」
賢也は、【屠竜】を仕舞い、名付けしていない剣を取り出す。
「これなら、どうだ!刹那!」
「俺も行くぞ!レベル2!」
賢也と力也が黒死竜に突っ込む。力也は、円月輪を鎌に切り替え、力一杯に振り抜く。黒死竜の右前足に1cm程刃が食い込む。
「ちっ。レベル2でも足らないか。仕方ない。レベル3!いっけぇー!」
力也は、身体強化を特訓の結果、3段階に調整出来るようになっていた。レベル3は強化最大クラス。但し、強力な分、強化時間が短く、身体への負担が大きく乱用は出来ない。これが駄目なら、力也にはどうにもならない。
食い込んだ鎌の刃は、更に食い込み、遂に刃は貫通し、黒死竜の肉を斬り裂いた。
「ガァァァッ!」
(何!我を斬っただと…)
黒死竜は、斬られた足で力也を蹴り飛ばそうとしたが、既に力也は、その場から離れていた。
「レベル3は通じるな」
息を切らせながら、手応えに満足する力也。
「まだ、こっちもだぁ!」
力也とのやり取りの間に賢也は、黒死竜の背後に回っていた。大きく飛び上がり、黒死竜の首を狙う。それに気付いた黒死竜は、長い首を素早く下げると、賢也の一撃は、角に当たる。
バキィ!
剣の砕ける音と、賢也の着地と合わせて、地面に黒死竜の角が突き刺さる。
(貴様!我の角を!くくく。わっはっは!)
黒死竜は、突然、笑い出すとその大きな身体が黒く輝き出す。
「何だ?」
(いいぞ。楽しませてくれる。ちょこまかと動く貴様達相手にこの身体は、大き過ぎるな)
そして、辺り一面を黒い輝きが覆い尽くし、何も見えなくなった…




