47.富士の樹海探索 2.5日目
突如、賢也達の前に現れた人型の女達は、賢也達に話しがあると言ってきた。
全員が黒死竜の手掛かりを聞けるかもしれないという期待から、話しを聞く事にした。
「さて、人型のお前達が俺達に何の話しがあるって言うんだ?」
賢也は、女達の動きを警戒しながら尋ねる。
「ここでお前達に会うとは思っていなかったが、ここに居るという事は、お前達の目的は我々の主だろう?」
「そうだ。お前達の主である黒死竜を倒すのが俺達の目的だ。だったら何なんだ?」
女達は、ニヤリと笑うと話しを続けた。
「そうか。ふふふ。それで、主を見付ける事は出来たかな?まぁ、無理だろうな」
「その口振りだと、お前達は知っているみたいだな。やっぱり。何処だ?この樹海に居るのか!?」
「龍崎、落ち着け。お前達、そんな事が聞きたかったのか?」
賢也が興奮気味なのは、輝、出雲、剣十郎を怪物化させた女達を相手にしているから、仕方ないのだが、力也は落ち着いた口調で、少し興奮気味の賢也を諌め、女達に尋ねると、女達は再びニヤリと笑う。
「そうか。やはり居場所が分からないか。我々の話しはここからだよ。主の居場所は教えてやろう」
「そうだよな。教えてくれるわけが無いよな」
「…?。いや、教えてやると言っている」
「は?教えてくれる?」
女達が、黒死竜の居場所を教えてくれると言っている。聞き間違えたか?賢也は繰り返し尋ねた。
「教えてくれるのか?」
「ああ、さっきからそう言っているぞ。主は、ここからあちらの方に5km程進んだ空に作った異空間の穴の中に潜んでいる」
「何故?何故、教えるんだ?」
本当に異空間の穴の中に入っていたとしても、何故、そんな事を教えるのか分からなかった。
「我々と手を組まないか?共に主を倒そうじゃないか」
「???」
賢也達は、女の言葉に戸惑いを隠せなかった。手を組んで主を倒す?分身体が?罠か?
「お前達と手を組む?そもそも主を裏切ってどうするつもりだ?」
「我々は、そもそも主を強化するだけの為に、主から作られた分身体。獣共のように知能の低い物に寄生したのなら仕方ないだろうが、我々のように人に寄生し、知能を得た者は、その存在意義に不満を持ってもおかしくないだろう」
そういえば、初めて倒した人型の次元も主にとって変わるみたいな事を言っていた。人型は、黒死竜に反発するのが多いのか?と賢也が考えていると、センが女達に質問した。
「お前達と手を組んで、黒死竜を倒した後はどうなるんだよ」
「そうだな。我々のように完全に同化した者であれば、生き残るだろうが、まだ乗っ取る事も出来ていない同胞達は死滅するだろう」
「ほう。それは良い事を聞いた。つまり、黒死竜を倒せば、これ以上、怪物は増えないということか」
力也が女達に聞き返す。
「それは知らない。主と同じく分身体を作る能力を発現した者がいれば増えるだろう。だが、他の同胞の能力など知らんよ」
「それはそれとして、お前達はどうするんだよ」
センが再び女達を問い詰める。センは女達自身が何をするのかが気になるようだ。
「我々は、主を倒した後は、主の代わりに同胞を纏めようと思っているよ」
「纏めてどうするんだ?」
「もちろん、一つとなる。そして、この星の命を奪い尽くし、次の星に移る」
「やっぱり…。黒死竜と何も変わらないじゃないか」
「お前達と手を組むことなんか、あり得ない!」
賢也とセンが身構えると、女達はそうなる事が分かって言ったのだろう、異空間の穴を出現させた。
「ふふふ。交渉決裂だな。ならば、ここで死に、我々の糧となるがいい」
皆が戦闘体勢に入るのと同時に異空間の穴から、何かが出て来た。1体ではなく、30体程。その出て来た者は、辺りの暗さに溶け込んだ、黒くて茶色い者。体長は2m程だった。それを見たノッコと優が声にならない声で叫び声を上げた。
「%#&¥$*+-=!?」
「ゴ、ゴ、Gーーーー!」
「マジか!ゴ◯ブ◯!デカイ!」
「気持ち悪っ!」
ノッコ、優に続き、セン、力也も気持ち悪がって、動きが止まっている。
「人は、それが余程嫌いなのだな。やれ!」
女の命令で一斉にG型達が動き出す。それを見て4人が暴れだす。
「いやーっ!動き出したぁ!」
「速い!うわっ!来るな!」
「全く、いい加減にしろよ。飛燕!ちっ、速い!流石、G型!」
「賢也!感心してる場合か!うわ、来るな」
4人が逃げ回り、30体のG型が右往左往して、走り回っている光景は、まさに地獄絵図だった。そんな中、櫻翔が動く。
「この!当たれ!」
櫻翔の放った空間切断で1体のGの頭を切断した。切断されたGは他のG達に直ぐ様食べられる。
1体が、Gの最終兵器、『飛ぶ』で優に向かって行った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
余りの衝撃的な絵面に優は、気絶してしまった。
「優!ちっ、これで蒼!」
優に向かって飛んで行くG型を蒼い炎で賢也は燃やす。G型は、跡も残さず燃やし尽くされた。
「大丈夫か?優。起きろ!」
賢也は、気絶した優を目覚めさせようと、体を揺する。
「う~ん…」
「優!しっかりしろ!こんな所で気を失っていたら、それこそGの餌食になるぞ!」
「え?あっ!すみません。大丈夫で…、いやーっ!」
優と賢也に向かって3体のG型が向かって来ていたのを見て、優がまた叫ぶ。賢也は、振り向き様に蒼い炎で襲ってきた3体を燃やす。
「力也さん、セン!いい加減に落ち着いて!こいつらは大したことない。さっさと片付けるぞ」
「龍崎。すまん。俺はこいつだけは、どうしても苦手なんだ…」
「そうだぞ。賢也。男だって、こいつが苦手な人はいるんだぞ…。うわっ。来るな!」
駄目だ。これは。まともに戦えるのは、俺と櫻翔だけか。
「櫻翔さん!駄目です。ここは2人で何とかするしかない」
「分かりました。頑張ります!」
まだG型は、25体残っている。逃げまどう3人を追い回しているのは後回しにして、近くにいるG型から片付ける事にする。
「素早いからな。全く鬱陶しいぞっと。飛燕!」
「この!」
賢也の飛燕で1体、櫻翔の空間切断で2体更に倒す。櫻翔を見ると肩で息をしていた。
「櫻翔さん?大丈夫ですか?」
「まだ大丈夫です。空間切断は、辺りを気にしながら使わないといけないから、疲れるんですよ。でも、こいつらを剣で直接斬るのは流石に抵抗が…」
ああ、それは分かる。賢也も戦うのは平気だが、剣で直接斬るのはなんか汚い気がして、飛燕や蒼炎で倒している。
ただ気になるのは、斬って倒すと、死体に他のG型が集まり、一瞬で平らげて行くのだ。斬り倒すと残ったG型が力を増していく。そして、さっきの3体を平らげたG達のスピードが上がった。力也は、G型に追い付かれ、仕方なく円月輪を投げる。力也の投げた円月輪は、後ろを走っていたG型も巻き込み一気に5体を倒した。
「うわぁ…。俺の武器が…」
力也の円月輪はG型の血でベタベタしていた。
「気持ち悪い…」
「飛燕で倒せば良かったじゃないですか」
センが気持ち悪がっている力也に突っ込む。
「うるさい。いっぱいいっぱいなんだ…」
また、残ったG型が死体を食べた。すると、体の大きさが更に大きくなる。2.5m位か。
「ちっ。どんどん強くなっていく。不気味さも」
賢也は、気を練り上げ、一気に放った。
「蒼炎舞!」
賢也を中心に蒼い炎が螺旋を描きながら、周りのG型を燃やしていく。蒼い炎は舞い踊るように走り、消えていった。これで一気に10体を燃やす。残りは?
賢也が残りを確認すると、6体は、まだ逃げ回っている3人を追いかけていた。残り1体は?
見ると、1体は燃えているG型を食べている。いや、炎を食べていた。
「あれは、まさかな…」
力也達を追いかけていたG型の2体を櫻翔が斬り裂き残り5体となった所でG型達の様子が変わる。
さっき炎を食べていたG型が死体を食べるのと同時に群がっていた残りの生きているG型を喰い殺したのだ。
「あれは、明らかに今までと行動が違う」
そして、最後の1体となったG型は、進化するのに必要な量を得たのだろう。体が蒼い炎に包まれ、こちらに対峙するのだった。




