46.富士の樹海探索 2日目
富士の樹海探索2日目、賢也達はテントを片付けると、手掛かりを求め、樹海の奥へと進んで行った。
「この先は怪物が多いみたい。気を付けて進まないと」
ノッコが複数の怪物の存在を感知したようだ。すると、櫻翔が賢也に進言してきた。
「龍崎さん。今日は僕が先頭を務めます。怪物に遭遇した時、僕の空間切断で先陣を切らせて下さい」
何か思い詰めたような印象を賢也は受けたため、櫻翔に質問した。
「櫻翔さん、どうしたんですか?先頭を行くのは構いませんが、何をそんなに焦っているんですか?」
力也は、櫻翔の様子を見て、昨夜話した事で、櫻翔がやる気になったのだろうと感じ取り、賢也に大丈夫だ、任せてみようと話しをした。
そして、櫻翔を先頭にし、賢也が殿を務め、2日目の探索がスタートした。
昨日と同じく、黒死竜に繋がるような手掛かりは見付からないまま、賢也達は隕石落下地点へと辿り着いた。
「ここに隕石が、いや、黒死竜が降りてきたポイントか」
そこは、調査隊がかつて調べた時から何も変わっていない。周辺の木は無く、広い空間だけだった。
賢也は、周辺を調べてみたが、やはり手掛かりとなる物は何も無かった。その時、ノッコが叫んだ。
「何か来るよ!向こう!」
ノッコが指差した方向から、賢也も邪気が近付いてくるのを感じる。
邪気はそれほど強く感じなかった。せいぜいCランクといった所だろう。だが、数が昨日とは違う。10体程だろうか。
櫻翔が緊張した声で、
「僕が。僕が、先制攻撃をしかけます!」
「分かった。任せる!」
賢也は、櫻翔に攻撃を任せてみた。
櫻翔の異能は、空間切断。
命中さえすれば問答無用で敵を切断出来る。
ただ、残念な事にその破壊力抜群の能力は、射程が短かった。距離にして5m。範囲は3m。
飛燕に効果が乗せられないかやってみたが駄目だった。
そのため、敵を近くまで引き付けなければならない。
「来た!犬型が10体!」
櫻翔が剣を構え、先頭を走ってくる犬型が射程に入った瞬間、
「今だ!喰らえ!」
「それじゃ遅いぞ!」
櫻翔の攻撃タイミングが遅かったため、力也は櫻翔に向かって駆け出した。
櫻翔の放った空間切断で最後尾を走っていた犬型の足が切断される。
その時には、もう既に先頭を走っていた犬型が櫻翔の首を咬み切ろうと口を大きく開いて迫っていた。
「う、うわぁっ」
櫻翔に攻撃が届く前に、カバーな入っていた力也が怪物の首を斬る。
残った怪物を賢也が横に薙ぎ、斬り上げ、その剣をそのまま斬り下ろし、既に3体を倒している。
「大丈夫か?敵が射程に入ってからじゃ遅いぞ。次は気を付けろよ」
力也は櫻翔の無事を確認すると、次の怪物に向かって突進していた。
見れば、すでに半数以上の怪物が賢也達によって、倒されていた。
数は少し多かったが、犬型の怪物で余り強く無かったということもあり、戦闘自体は、5分程で、怪物を全滅する事が出来た。
櫻翔は、タイミングをミスしたが、初めての討伐をしたという事で、少し興奮気味だった。
「やった。初めて怪物を倒した。僕でも出来るんだ。よし、次からはもっと役に立てるように頑張るぞ」
「頑張るのはいいが、次からは、しっかり相手の速度、動きに注意しろよ。昨日、教えたばかりだろう」
力也が、櫻翔に注意すると、櫻翔は、素直に頷く。
賢也は、周りに怪物が居ないか、気配を探っていたが、近くには居ないようだ。
「ノッコ。近くに怪物は居なさそうだけど、どう?」
「そうね。ちょっと先には居るみたいだけど、すぐ近くには居ないみたい」
ノッコの索敵能力にも近場に怪物が居ない事を確認し、賢也は、ここにテントを立て、ベースにすることを皆に提案した。
「ここなら広いし、怪物との戦いもしやすいだろうから、ここをベースにして、周辺を調査しよう」
皆でテントを準備し終えると、再び周辺の調査を始めた。中々、黒死竜の手掛かりは見付からず、怪物との遭遇率だけが少しずつ上がっていった。
辺りも暗くなり、賢也達は2日目の調査を終わらせ、ベースに戻り、明日の調査に向けて休むことにした。
今日1日で、櫻翔の戦い方も様になってきた。力也は、そんな櫻翔に声を掛ける。
「櫻翔、だいぶ良くなってきたな。自信をもっと持っていいぞ」
「そ、そうですか!ありがとうございます」
櫻翔は、力也に褒められて嬉しかった。櫻翔は、ハンターランキング1位の力也に憧れていたのだ。
「後は、間合いをもっと自覚するんだ。何回か間合いに入っていない時に、力を使っていただろう?」
「はい。動く相手に当てるのって本当に難しいですね。龍崎さんとか、よく遠距離の攻撃をあんなに命中させられるなぁ」
櫻翔は、賢也が飛燕等の遠距離攻撃の命中精度の高さを羨ましがっていたが、力也に諭される。
「あれは、自分の攻撃スピード、相手の動きを予測して攻撃しているんだ。自分の攻撃を熟知すれば、お前も出来るようになる。相手の動きを予測するのも、実戦を積むしかない。今、自分に出来る事をしっかりするんだな」
「分かりました。精進します!」
そして、夜も更けて来てセンとノッコの見張りの番となった。
「今日も何も無く、朝を迎えられるかな?」
「まぁ、近場の怪物達は、昼にほとんど倒したしな」
実際、2時間程は何事も無かった。だが、それは何の前触れもなく、突如現れた。
「こんな所に灯りがあると思ったら、人がいるじゃないか」
センとノッコの背後から女の声がする。
「誰だ!」
「そんな、貴女は!」
ノッコは、女の顔を見て驚いた。セン達の後ろに現れたのは、輝と出雲を怪物化した女だったのだ。
「ノッコ、あの女を知ってるのか?」
「あれは、人型よ。輝君、賢也の息子さんと出雲さんを怪物化した女よ!」
「おや?お前はあの男と一緒に居た女じゃないか。と、言うことは、あの男もここに…」
女がテントの方を見る。
センは、寝ている皆を起こすために大声で叫んだ。
「起きろ!敵襲だぁ!起きろー!」
「ふふふ。そんなに慌てなくてもいいよ。お前達に話がある」
「話しだと?」
「ああ、大事な話さ。お前達にとっても、我々にとってもな…」
賢也達は、センの大声で目覚めると、すぐにテントから飛び出した。
「お前は!」
賢也は女を見るなり、すぐに斬りかかったが、女は異空間に消え、賢也の攻撃は、躱されてしまった。
「くそ、また逃げられたか!」
「あいつ、話しがあるとか言ってたぜ。戻って来るんじゃないか?」
賢也が逃げられたのを悔しがっている所に、センは女達は話しがあると言っていたから、戻って来るんじゃないかと言う。
すると、異空間の穴が再び賢也達の前に現れた。そこから現れたのは、あの女達だった。
「ひどいじゃないか。いきなり攻撃してくるなんて。こっちは話がしたいと言っているのに」
「話だと?今までお前達がやって来た事を忘れたのか?今更、許してくれなんて、あり得ないぞ!」
賢也は、女達にすぐに攻撃をしようと身構えていたが、確かに殺気は感じない。話をしたいと言うのは嘘では無いようだ。
賢也は、皆の顔を見ると皆が頷く。力也も賢也に、
「話だけでも聞いてみるか。もしかしたら、黒死竜の手掛かりになるかもしれない。聞いてから討伐しても遅くないだろう」
皆の話しを聞いた方が良いという意見に賢也も仕方なく話しを聞く事にした。
「分かった。話を聞いてやる。だが、聞いた後、お前達をどうするかは保証しない」
こうして、賢也達は女達の話しを聞くのだった。




