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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第1章 黒死竜討伐編

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42.四候闘剣術秘奥義

剣十郎に道場へと呼び出された賢也は、その日の特訓を済ませた後、道場へとやって来た。


「師匠、お待たせしました」


 道場の中央に正座をして待っていた剣十郎に声を掛ける。


「来たか。賢也」


 剣十郎は立ち上がると、賢也を側へと呼ぶ。剣十郎の元まで行くと、賢也も正座をした。


「どうしたんですか?」


 賢也は、剣十郎に何用か問い掛けると、剣十郎は語りだした。


「うむ。お前は本当に強くなった。もう私では、お前に勝てないだろう。前にも話したが、私はお前にこの四候闘剣術を継いで欲しいと思っている」


 賢也は、首を横に振ると、


「それは前にもお断りしました」

「最後まで話しを聞きなさい。今の弟子の中にも継げる程の実力のある者はいない」

「あの大河さんはどうなんですか?皆から慕われ、実力もあるらしいじゃないですか」


 賢也としては、以前、全員と手合わせした時には、強いという印象を持った者は正直いなかったが。


「大河か。あやつ自身継ぐつもりでいるようだが、継がせるつもりは無いよ。あやつの実力では、使えて剣技までだろう。奥義は到底習得出来ないだろう」

「そうですか…」

「そこでだ、四候闘剣術は私の代で終わろうと思うのだ」

「そんな…」


 賢也が終らせるのなら後継者となるかと考えていると、


「勘違いするなよ。お前の同情を誘おうなんて思ってはいない。むしろ、今のお前は異能を剣技に取り込み、昇華させている。別の剣技と言っても過言ではない。そこで、お前自身の剣術として分派しないか?」

「龍崎流 四候闘剣術という事ですか?」

「四候闘剣術を名乗る必要は無いが、まあ、そういうことだ。そもそも、四候闘剣術が派生剣術だからな」

「そうなんですか?じゃあ、本家があるんですね」

「本家というか、源流だな。その名を四聖神冥流という。今も存在するのかは分からん。だが、言い伝えでは、最強にして最恐の剣術。活かすも殺すも自由自在。一子相伝の剣術が故に継げなかった者が、破るため派生流派がいくつも出来た。その内の一派が、四候闘剣術だ」


 成る程。四候闘剣術には、そんな歴史があったのか。賢也は剣十郎の話しを真剣に聞いていた。


「そして、分派するにあたり、お前に話しておく。それは、四候闘剣術の後継者のみに伝わる秘奥義がある」


 賢也は、怪物化した剣十郎が使っていた雪月風花を思い出す。


「それは雪月風花ですか?」

「ほう。雪月風花を知っているのか。私が怪物化した時に使ったのだな」

「はい」


 剣十郎はすまないという表情を見せると、


「それも秘奥義だな。雪月風花は、四候闘剣術の全てを集約した秘奥義だ。四季の型の理を冬から遡って連携した秘奥義だ」


 確かにそう言われると、突きに回転斬り、飛燕や斬り下ろし、連続斬りと各型の特徴の攻撃が繋がっていた。


「だが、これではない。もう一つ秘奥義がある。その名は朱雀。これは四聖神冥術の奥義を模倣したものと伝えられている。四候闘剣術の後継者のみに伝える奥義故に、教える事は出来ぬ。だから、私から盗んで見せよ!剣を取れ。賢也」


 竹刀を持ち剣十郎が立ち上がる。つまり、今から仕合って、技を使うから、見て覚えろという事か。


「分かりました」


 賢也も竹刀を手に取り立ち上がる。剣十郎の気がどんどん膨れ上がるのが分かる。


「行くぞ。しっかり見ておくのだ」


 剣十郎は高く飛び上がった。

 雪月風花?賢也は、剣十郎の攻撃に備え構えを取る。剣十郎が賢也の方へ落下し始めた時、剣十郎は、竹刀を賢也に向ける。突きの構えだ。やはり雪月風花なのか?そう思った時、剣十郎が空中を蹴った。蹴った際の音はまるで大地を力強く蹴ったようだ。賢也が4種同時発動の時の踏み込みの時の爆音にも引けを取らない音だ。そして、その音さながらの超高速突進突きは、既に賢也の目前まで来ていた。


「躱せな…」


 賢也が気が付いた時は、道場の床の上だった。見届ける為にギリギリまで躱さず、見切るつもりだったが、予想以上のスピードに躱す余裕がなかった。


「大丈夫か?」

「今のが朱雀ですか?」


 起き上がりながら剣十郎に訪ねる。


「そうだが、あれが全てでは無い」


 まだ先があるのか。全て見届けるには、あの超高速突進突きを躱す必要が。賢也は気を引き締め直す。


「師匠、お願いします」


 賢也は、剣十郎に再度、朱雀を見せて貰おうと頼んだが、剣十郎は首を横に振る。


「すまんな。全盛期の私ならまだ出来ただろうが、今の私には一日に一度が限界だ」


 そこまで体に負担の大きい技なのか。師匠に負担は掛けさせられない。


「分かりました。また、師匠の良いときにお願いします」

「ああ、すまない」


 賢也は、剣十郎に礼をすると道場を後にした。

 朱雀の全容を見る為には、あの超高速突進突きを躱さなければならない。雪月風花の時は、ジャンプしたと同時に後退や横に逃げると、その動きに合わせて攻撃が来た。恐らく、朱雀も同じだろう。なら、攻撃が来たと同時に動くしかない。次回は完全な朱雀を見てやると強く誓いながら部屋へと帰っていった。


 翌日、賢也の元に、門下生が押し寄せ、異能の特訓をしたいと願った。皆、昨日の賢也が放った爆音を聞き、その力を自ら使いたいと思ったのだ。午前中と、午後の数時間は、剣十郎の元で修行し、それが終わると異能の特訓をする。これが、門下生達の日々の鍛練となった。

 数日は、部位武器が足らず、一度に何人も特訓は出来なかったが、ある日、梶が新しい武器が出来たという事で、訪れた際、状況を知った梶が帰った後日、人数分の怪物の骨で作った指輪を送ってくれた為、特訓が捗る事が出来た。


 そして、賢也達が剣十郎の元に来て3ヶ月が経ち、ほとんどの門下生が覚醒能力を自由自在に扱えるようになっていた。


「さて、お前達は日々の鍛練と賢也のおかげで十分に強くなった」


 剣十郎が門下生を一ヶ所に集め、話を始めた。


「全ての型を修得出来たのは、賢也のみだったが、人には得手不得手がある。得意とするものを更に伸ばすも良し。不得意のものを鍛えるも良し」


 大河が剣十郎の話を遮り、剣十郎に尋ねた。


「師匠、どうしたんですか?まるで、終わりみたいな話し方ですよ」


 剣十郎は、大河の顔を見ると静かに目を閉じ、質問に答える。


「そうだ。今日、皆を集めたのは他でもない。本日を以て、四候闘剣術はもう終らせる。故にもうお前達に教える事は何も無い」

「え!?」

「そんな!?」


 皆が突然の事に驚いた中、大河は一人、剣十郎に質問を続ける。


「それは、龍崎さんが原因ですか?彼が跡を継がないからですか?僕が跡を継ぐ訳にはいかないのですか?」


 剣十郎は、首を横に振る。


「確かに、賢也は跡を継ぎはしないが、別に賢也を責める事はない」


 剣十郎は賢也を見ると、


「賢也は既に、四候闘剣術を完全に自分のものとし、それ以上の剣術として昇華している。故に四候闘剣術を継ぐ必要は無い」


 大河が賢也を睨み付けており、賢也はそれに気付いたが受け流した。


「それに大河。お前の実力で四候闘剣術の跡を継ぐ?馬鹿を言うな!確かに、お前は今の門下生達の中では少々秀でているかもしれんが、お前程度の実力で跡を継げる程、四候闘剣術は甘くないぞ!」


 賢也の態度、剣十郎の言葉に怒りを抑える事の出来なくなった大河が吠える。


「はっ!俺はもうここにいるどいつよりも強い。その俺が跡を継げないだと!師匠、あんたの目は腐っているみたいだな!俺があんたを倒して、四候闘剣術は俺のものにしてやるよ!」


 剣十郎は大河を睨み付けると、


「他に、大河と同じ考えの者はいないのか?」


 剣十郎の静かで重い口調に怯んだのか、他に名乗り出す者は居なかった。


「他には居ないか…」


 剣十郎は竹刀を取ると、


「ならば、私よりも強いという事を証明してみなさい」


 大河も竹刀を手に取り、剣十郎に剣を向けたのだった。

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