41.異能合成、成功!
昼間に異能の特訓で、6種類の力を同時発動し、力が暴走してしまい、自分自身だけでなく、周囲の人間を巻き込んでしまった賢也は、夜中に一人、山の中へと入っていった。
「ここなら誰にも迷惑は掛けないかな」
さて、少しずつ力を試す事にしたが、余りゆっくりやっていても意味が無い。誰かが黒死竜を早く討伐しないと人型の怪物も増えていくだろうし、元へ戻せない者も増えるだろう。
「まずは4種同時発動に体が慣れるようにするか」
賢也は、特訓するだけだからと、発動する能力を鋼、爪、重、旋の4種類に絞った。焔や蒼炎、雷を使って山が燃えたら洒落にならない。異空間も暴走して、周辺一帯を異空間に閉じ込めたりしたら恐ろしいから止めた。
「4種類でもやっぱりきついな」
双頭竜の時は、気絶してしまったから気を付けなければ。
4種同時発動のまま、山の中を走り出す。1時間程、走り込みをした後、双頭竜を倒した時のように力を溜め込む。体への負担が増加したが、1時間走り込んだおかげなのか、前ほどきつく無い。
「よし!」
賢也が踏み込むとドンッと爆音が鳴ると同時に、足が地面に埋まってしまった。
「山の土じゃ踏み込みに耐えられないのか…。それより、音がヤバかったけど、誰も起きなかったよな」
賢也は門下生達を起こしてしまったかと周辺を確認した。
「ふぅ。誰も来ないな。良かった。それに4種同時発動で全力出しても、気絶しなかったな。慣れていけばもっといけるぞ」
とりあえず今日は戻って寝よう。明日は、合成の特訓に力を入れてみるか。
賢也は宿舎へと戻って行った。
宿舎へと戻ると数部屋に明かりが点いていた。
「やっぱり起こしてしまったかな?」
賢也が部屋に戻ろうとした時、声を掛けられた。
「龍崎さん、今外に出ていました?」
「はい。すみません。起こしてしまいましたか?」
この人は誰だったか?まだ話した事はない男だった。
「いえ。何か大きな音がしたので、外に様子を見に行こうかと…」
やはり賢也の立てた爆音で目が覚めたみたいだ。
「すみません。それ、俺です。明日から気を付けますね」
「そうなんですね。大丈夫ですよ。あなただけじゃないですから。夜中に特訓しているのは。実は僕もなんです」
微笑みながら、賢也の立てた音で目が覚めたわけではなく、自分も夜間の特訓をしていたと告白する。
「僕は、天間 櫻翔って言います。剣の腕が皆より劣っているから、夜中に一人特訓しているんですよ。他にも何人かいますし、気にする必要は無いですよ」
賢也は櫻翔を観察してみる。体格としては、悪くなさそうだが、謙遜しているのかは分からないが。
「師匠に相談すればきちんと教えてくれますよ。俺で良ければ、手が空いている時にでも、付き合いますよ」
「ありがとう。今度、ぜひお願いします。あ、明日は、異能の特訓に顔を出そうと思っていますので、そちらもよろしくお願いします」
櫻翔は礼をすると、自分の部屋に帰って行った。
「俺も寝よう」
賢也も自分の部屋へと帰った。
翌日、賢也達が異能の特訓をしていると、大河と一緒に櫻翔もやって来た。
「龍崎さん、今日もよろしくお願いします。今日は、もう一人連れて来ました」
ノッコが賢也の方を見ている。賢也は頷くと、
「見てやって」
櫻翔がノッコの霧に包まれる。
「賢也、この人の能力ヤバいよ!」
「え、僕の異能ってそんなに危ないんですか?」
櫻翔が少し怖そうにノッコに聞き返すと、
「あなたの能力だけど、空間を切り裂く能力みたい」
「空間切断!」
賢也が大声で驚く。空間切断と言えば、文字通り空間を切り裂くため、そこに存在するものを問答無用に切り裂く。殺傷能力に特化した力だ。
「何でこんな奴に。宝の持ち腐れじゃないか!」
大河が櫻翔に向かって怒鳴る。
「俺の能力と交換しろよ」
無理な話しをしている。
「流石にそれは無理ですよ。それぞれの体に潜んでいた怪物の能力が使えるようになっているはずですから」
むしろ、櫻翔が怪物化しなくて良かったと賢也は思っていた。
「はぁっ?あんたは、力が次々と増えてるって言うじゃないか!俺にも教えろよ!増やし方を」
大河はかなり興奮して、口調がかなり乱暴になっていた。櫻翔はおどおどしている。
「無理ですよ。俺の能力が吸収だから出来るだけです」
賢也は、大河に対しあくまでも冷静に話し掛ける。ノッコがまずかった?と言わんばかりの顔で賢也を見ている。
「さあ、落ち着いて。特訓始めますよ」
賢也は、【黒鉄】を大河と櫻翔の二人の間に置くと、
「櫻翔さん、これに触れて覚醒の特訓をしてくださいね。慣れたら、俺達みたいに何も無くても覚醒出来るようになります。それが出来るようになったら、能力の検証しますから」
大河が櫻翔を睨み付けながら特訓をしている。
「やれやれ。さてと俺は今日は合成をまたチャレンジしてみよう」
やり方が分からないから、昨日と同じく、焔と雷の2種類を発動してから合成しようとするが、何も起きない。やっぱり具現化する前に合わさった物を具現化させるのか?炎と雷が合成したら、どんな物になる?赤い雷?バチバチと燃える炎?
「成功してくれ…」
右手に集中する。すると、焔とも雷とも違う。オレンジ色に近い赤い炎?が右手を覆った。
「成功したのか?」
いつもとは違う確かな手応えがある。そして、2種類同時発動よりも力の消耗が早い感じがする。炎と雷の特性を持っているのなら。賢也は、右手を高く掲げると離れた木人に狙いをすまし、腕を振り下ろす。すると、木人の頭上に赤い雷がまっすぐ落ちる。木人に命中した赤い雷は、大爆発を起こし、木人を木っ端微塵に吹き飛ばした。今までの雷だけならこんな大爆発は起きない。炎だけなら、離れた木人の上に落とせない。間違いない。合成に成功だ!
「出来たー!合成に成功した!」
2種類が合成されることで、威力も格段に上がったようだ。手加減した威力であの威力。本気で放ったらどうなるのだろう。周囲一帯が焼け野はらになるかもしれない。
「何なんだよ。あいつは」
大河が賢也の放った一撃に驚いていた。
「凄いなぁ」
櫻翔は感動している。周囲の様子を他所に、賢也は一人で合成について分析していた。
「成る程。合成は、あくまでも一回きりで、永続じゃないんだな」
賢也は合成によって、焔と雷が一つになり、別の力として常に在り続けるのかと思っていたが、焔と雷の能力は残ったまま。また、同じ攻撃をしようと思ったら、再度合成する必要がある。
道場の方が騒がしい。賢也は、道場の気配を確認すると、こっちに大勢の人がやって来るようだ。
一番に剣十郎がやって来た。
「何だ!?今の爆発は!」
やはり、賢也の放った一撃に驚いた皆が急いで様子を見に来たようだ。
「師匠、すみません。俺です」
賢也は剣十郎に事情を説明すると、剣十郎は少し驚いた顔を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、
「つくづく、お前には驚かされてばかりだな。能力の合成か…」
剣十郎は木人があったはずの爆発跡を見ると、
「お前は私の自慢の弟子だよ。お前なら、黒死竜とやらも倒すことが出来るだろう」
「ありがとうございます」
「今日の修行が終わったら道場に来なさい」
「?。はい。分かりました」
剣十郎は、賢也に後で道場に寄るように話すと、戻って行った。そして、次々と門下生達がやって来ては、戻っていくのだった。
「師匠、何だろう。もうここから出ていけとか言わないよな…」
剣十郎の道場に来いと言った時の表情は、何か思い詰めたような印象があった。どこか嬉しいようなそれでいて、寂しいような。
そして、その日の特訓を終わらせた後、賢也は剣十郎の待つ道場へと向かうのだった。




