36.最強タッグバトル 6
賢也は、象型に踏まれ地面に埋まってしまった力也の剣の元へ向かっていた。
「確か、この辺りのはず」
地面を見ていると、地面にしっかりと埋まって掴む事も出来ない力也の剣を見つけた。
「あった!」
賢也は、人差し指で剣の柄を触ると、重で浮かせてみようと試みたが、しっかりと食い込んだ剣は、浮かんで来なかった。
「駄目か。なら、これだ」
今度は、空を発動する。力也の剣と周囲のコンクリートを異空間へと閉じ込める。
「お、いけたかな?」
閉じ込めた剣を取り出して見ると、剣はコンクリートに包まれたままだった。賢也は、コンクリートを【紅蓮】の柄で叩き壊した。
「良し!後は力也さんに」
力也の剣を異空間に再び、収納すると、力也に向かって叫んだ。
一方、力也は地面に埋まった自分の剣を取りに行った賢也の邪魔をされないように、双頭竜の元へ向かっていた。
「あいつはお前を残して逃げ出したぞ。残念だったな」
後ろに走って行った賢也が逃げ出したと双頭竜は笑い出した。
「あいつが逃げる訳無いだろう!」
力也は双頭竜に斬りかかった。双頭竜は、右手の蒼い炎の剣で受け止め、尻尾を叩きつけてきた。
「それは、さっきと同じだ!」
力也は、尻尾を躱し、そのまま斬る。斬り落とすまでは行かなかったが、傷を付けられ、双頭竜が怒る。
「くっ。やってくれる!」
さっきより硬い。左腕を食べたからか?
力也と双頭竜が斬り結んでいた時、賢也の叫び声が聞こえてきた。
「力也さん、左手を上に!」
力也は、賢也の言う通りに左手を上げた時、賢也の出した異空間の入り口が左手を包んだ。
「何だ?させるか!」
双頭竜が力也の左手を狙うが、異空間の中で、剣を掴んだ力也がその攻撃を弾く。
「よし!」
力也は、二本の剣を組み換えると、双刃の大鎌へと変えた。
「龍崎!重を解除しろ!」
力也が今度は賢也に叫ぶ。賢也は、力也の元へ向かいながら重を解き、焔と雷を発動する。
「うぉぉぉ」
力也は、咆哮を上げながら大鎌を振る。双頭竜は、後ろに跳び避けようとするが、大鎌は双頭竜の胸を掠める。
「ぐぅっ」
双頭竜の胸から血が滲んでいる。力也の予想通り、大鎌を振る時の遠心力で、威力が上がったようだ。
「いけるぞ!」
力也は、大鎌を後ろに構えると、大きく振り上げ、そのまま双頭竜を真っ二つにする勢いで振り下ろす。
「そんな大振りが当たる訳無いだろう」
双頭竜が大鎌を躱すと、力也の後ろから、賢也が飛び上がり、斬りかかった。
「むぅ」
双頭竜は、賢也の攻撃を剣で受け止めたが、賢也は回し蹴りを双頭竜に喰らわし、吹き飛ばされる。
賢也達は、吹き飛んでいった双頭竜を追いかけると、更に攻撃を続ける。双頭竜は、蒼い炎の剣で受け凌ごうとするが、二人の攻撃を凌ぎきる事が出来ない。攻撃に耐えかねた双頭竜は、自分の周囲に蒼い炎の柱を地面から噴出させた。
「舐めるな!」
突然の火柱に賢也と力也は、双頭竜から離れる。
「危ない、危ない。もう少しで黒焦げになる所だった」
「それより、力也さん。気が付きましたか?あいつ左腕も左の頭も動かないみたいです」
「そういえば、そうだな。喋っているのもずっと右の頭だけだな」
力也に斬り落とされた左腕を食べてから、どうも左半身が思うように動いていないようだ。
「チャンスだな。俺は左を徹底的に攻撃する。援護を頼むぞ」
そう言うと、力也は双頭竜の左側に走り出す。
賢也は、その動きに合わせるように攻撃をした。
「飛燕・焔雷!」
双頭竜は、飛燕を放ち相殺したが、力也の攻撃が左頭を斬り落とした。
「グワァァァァ」
「やったぞ」
力也が勝ちを確信した時、双頭竜が大声で笑い出した。
「ハッハッハッハッ!」
「首を斬られて笑っている?」
「礼を言うぞ!」
双頭竜は、そう言った瞬間、今まで動かすことの無かった左腕で力也を殴った。
「あいつの意識が無くなって漸く、左半身を動かせるようになった。さて…」
双頭竜は、斬り落とされた左頭を掴み上げると、当然のように食べた。
斬られた左頭が再生する。
「ふむ。頭が再生したが、俺の管理下にあるな。良いぞ」
双頭竜は、左手にも蒼い炎の剣を出す。
「さあ、俺の糧となれ!」
双頭竜は、力也に突進する。力也は、大鎌を振り牽制をするが、躱され、懐深く入り込まれてしまった。
「しまった」
大鎌では、至近距離は攻撃出来ない。双頭竜の攻撃を持ち手の部分で受け止め凌ぐ。そこに、賢也が力也の救助に斬り込んできた。双頭竜は、二本の剣で、賢也の攻撃を凌ぐ。その間に力也は、大鎌の間合いに離れ、攻撃をすると、また地面から火柱が上がった。
「くそ、手強くなりやがった」
救急車のサイレンが少しずつ大きくなって来ている。余り時間が無い。
「力也さん、すみません。どうなるか分かりませんが、ちょっと、いや、かなり無理をしてみるんで、援護お願いします」
賢也は、【紅蓮】を後ろに構え、低い姿勢を取る。
「ふぅぅぅっ」
肺の中にある酸素を全て吐き出し、大きく息を吸った。賢也は、今まで能力は最大で同時に3つまで発動していた。武器が壊れないように鋼、火力アップに焔、雷。そして、今、更にもう1つ、旋を発動させる。体が強大な力に悲鳴を上げ始めた。思った以上に負荷が大きい。だが、ここで無理をしなければ、救急車がこっちに来れない。来れなければ、出雲が助かる確率が下がる。
「行くぞ…」
力也は、賢也の呟きに合わせ、大鎌を円月輪へと切り替え、双頭竜に思いっきり投げ付け、走り出した。
双頭竜は、投げ付けられた円月輪を剣で弾くが、力也の剛力で投げられた円月輪の威力に押され、体勢を崩す。力也は、弾かれた円月輪を飛び上がり掴むと、瞬時に大鎌へ切り替えると、大きく横に振り回す。
「おらぁっ!」
双頭竜は大鎌を剣で受け止め、更に不安定な体勢となった。
「今だ!行けぇ!」
力也は、横に跳ぶ。その瞬間、賢也は、双頭竜に向かって突進する。その時、賢也の踏み込みでドーンッ!とけたたましい音が鳴ったかと思うと、賢也が双頭竜の目の前に現れていた。双頭竜は、突然目の前に現れた賢也に反応し、不安定な体勢から、賢也に斬りかかる。
「鳴神!」
双頭竜が賢也に向かって鳴神を放つが、
「風雅満月!」
賢也は、突進の勢いのまま、超高速回転の風雅満月を放つ。全方位斬りの風雅満月で双頭竜の鳴神を弾きながら、胴を斬る。双頭竜の正面に向き直った瞬間に、更に、
「鳴神!」
これも超高速の上段斬りで、双頭竜を十文字に斬り、四分割に斬った。
余りにも斬るスピードが速すぎたため、双頭竜は自分が斬られた事すら分かっていなかった。賢也をもう一度攻撃しようと腕を上げると、体が分かれていく。
「馬鹿な…。ありえなぃ…」
ドサッ。双頭竜の4つに割れた体が地面に落ちる。
「はぁ、はぁ、やったぞ…」
賢也もその場に倒れ込んだ。力の使い過ぎで意識が朦朧としている賢也は、到着してくる救急車の音をうっすらと聞きながら、そのまま意識が途切れてしまった。
「やはり、奴らが勝ったか…」
「まぁ、あの程度の奴に負けるようでは、主を倒すなど到底無理な話だ…」
「もっと強くなって貰わねばな…」
消えたあの女達の声が聞こえたような気がした。
賢也が目を覚ますと病院のベッドの上だった。半端ない疲労感と倦怠感に起き上がるのも一苦労だ。
「もっと強くならないといけないな」
部屋は個室で、賢也以外誰も居なかった。賢也は、怠い体を何とか動かし、部屋を出る。
「あれ?」
部屋の外にも誰も居なかった。気配のする方へ歩いていくと、診察室の前に道場生が全員並んで待っていた。
「良かった。皆、無事だったんだな」
「あ、龍崎さん!気が付いたんですね」
地区長が賢也が現れた事に気が付く。
その声に皆が、賢也の方を一斉に見る。
「良かった。気が付いたのね」
綾乃が賢也の元へと歩いてきた。
「ああ、体が怠いけど。皆、無事だったんだな。良かった」
「ノッコさんと輝のおかげで皆助かったの。二人共、凄かったんだから」
「そっか。師匠達は?」
「出雲さんは、手術中。剣十郎さんと甲斐さんは、今診察を受けているわ」
賢也は、剣十郎達の診察が終わる迄の間に、綾乃から輝とノッコ、優の話を聞いた。
「優も能力に目覚め、ノッコは能力が増えた?いや、本来の力に目覚めたのか…。ママ達を護ってくれてありがとうな、輝」
そう言うと、診察待ちで疲れて眠っている輝の頭を優しく撫でた。
暫くすると診察室から剣十郎と力也が出て来た。
「賢也、目が覚めたのか」
「龍崎、起きたか」
剣十郎と力也が賢也に気付き、声を掛けてきた。
「はい。お二人も無事で何よりです。診察は、どうだったんですか?」
「問題無い」
剣十郎と力也は、椅子に座ると、賢也と話を始めた。
「お前達、本当に強くなったな」
「いえ、まだまだです。師匠」
「俺もです。先生。それについて、先生に相談があるんですが」
力也は、続けて話す。
「途中で辞めた修行を再開させて下さい。俺にも四候闘剣術の技を教えて下さい」
「別に構わんが、どうしたんだ?一体?」
「今回の戦いで痛感しました。俺の我流の戦い方では、あの怪物以上の力を持った奴を相手には出来ない。もっと強くならないと」
力也は、真剣だった。
「よし、では、明日にでも道場に帰るとしよう」
「よろしくお願いします!」
賢也達が話をしている間に、他の人達の診察も終わっていた。あとは、出雲の手術が無事に終わるのを待つばかりだ。
綾乃達を除いて、道場生達が帰った後、出雲の手術中のランプが消えた。
中から執刀医達が出てくる。
「先生、出雲さんは?」
「何とか一命は取留めました。あの女性の力が無かったら無理だったでしょう。彼は運が良い。では私は失礼します」
賢也達は、一安心した。出雲は、ICUに運ばれたため、その日は、皆、病院を後に帰宅した。




