35.最強タッグバトル 5
賢也は、剣十郎から出て来た竜の元へ走って行った。
「さぁ、出雲さんも元に戻った。後はお前達を斬るだけだ!」
「笑わせるな。お前ごときが俺達の相手を出来ると思うな」
賢也は、焔と雷を発動し、今の自分の最大火力で挑む。
賢也が竜に向かった後、力也と剣十郎は、深手を負った出雲を道場の中へ連れて行った。
「誰!?」
綾乃と優が叫ぶ。綾乃の姿に気付いた剣十郎が、
「賢也の奥さんか。すまん。救急用品を貸して貰えるか?」
「剣十郎さん?」
綾乃は、恐る恐る剣十郎に問いかける。
「あぁ、すまなかったな。賢也が私の中の怪物を追い出してくれたよ」
「先生!知り合いなら、早く救急用品を!」
力也が大声を出すと、優が走って来た。
「酷い傷。こっちへ早く」
優が皆が座っている隅へ出雲を連れていく。見ると輝とノッコが気を失っていた。
優は、すぐに救急箱から、包帯と針金を取り出すと、出雲の傷口を手際良く固定する。
「ぐぅっ」
「痛いでしょうが、我慢して下さい。すぐに楽になりますから」
「???」
優の言葉に、力也、剣十郎はこの子は何を言っているんだ?とキョトンとしていると、
「ノッコさん、力を借ります」
優は、気を失っているノッコの手を握り、もう片方の手を出雲の傷口に当てた。優は、目を瞑り集中し始めると、出雲の傷口に当てた手が光り始めた。
「何だ?この子は何をしているんだ?」
力也が聞くと、集中している優の代わりに綾乃が答える。
「痛みを和らげているんです。さっき、急に出来るようになったみたいで」
「どういう事だ?」
綾乃は、ノッコが力尽き倒れ、優が介抱していたら、手が光り出し、ノッコを癒し始めた事を話す。
「そんな力が…」
「多分、頭の中の怪物を主人が退治してくれた時に、目覚めたんだと思います。それより救急車を早く!」
綾乃の声に、ハッと周りの人達は我に返り、地区長が救急車の手配をした。
「10分で来るそうです。それまでに外の怪物をお願いします」
「任せておけ!先生、ここは任せます。俺は龍崎を手伝いに」
「ああ。力也、気を付けろよ」
「はい!」
力也は、その場を後にし、賢也の元へと向かった。
「はっ!」
賢也は、竜に斬りかかった。自分の防御力に自信のある竜は、賢也の攻撃を避けようともせず、剣を掴もうとする。焔と雷で強化された【紅蓮】の切れ味は凄まじく、竜の右腕を容易く斬り落とした。
「イギャァァ。俺の腕がぁ!」
「人を舐めるから、こうなるんだよ!」
賢也は更に追い討ちをかける。下段からの斬り上げをするが、今度はさすがに躱された。
「調子に乗るな!」
竜が尻尾で、賢也を薙ぎ払うが賢也は、跳んで躱した。
賢也は、着地すると同時に竜に向かって飛び込む。一瞬で間合いを詰めると竜に斬りかかった。
「何だと!」
竜は左手に持った蒼い炎の剣?で賢也の剣を受け止める。
「言ったろう。舐めるなと」
竜が構えを取った。この構えは!
「氷雨」
この至近距離で、三連突きを放つのか。竜の放った氷雨は、本来の、上段、中段、下段の三連突きではなく、下から上へと突き上げる三連突きだった。賢也は、剣で弾きながら凌ぐが、蒼い炎の高温に、左頬を軽く火傷した。
「あの男の戦い方は、覚えているからな。これ位の事は出来るぞ」
蒼い炎の剣?は、あの竜の能力として、本来の姿に戻っても、四候闘剣術を使って来るとは思ってもいなかった。
「龍崎!10分でそいつらを片付けるぞ!」
力也が、叫びながら賢也の元へ走って来る。
「どうしたんですか?10分って」
「救急車を呼んだ。あと10分で到着する。こいつらが居たら出雲を運べないだろ」
「なるほど。分かりました」
「?、ところで、もう一匹は何処にいるんだ?」
力也は、周囲を見渡すがもう一匹の竜の姿が見えない。気配は、うっすらとあるのだが。
「まぁいいか、まずはそいつから片付けるぞ」
賢也と力也は、二人で竜に攻撃し始める。二人からの連続攻撃に竜は、傷が増えていった。
「くっ。片腕では、二人の攻撃を凌ぎきれん。同胞は、一体何をしているんだ」
竜は、火を吹き賢也達を牽制すると、力也に向かって飛燕を放つ。
「させるか!」
賢也も飛燕を放ち、竜の飛燕を相殺すると、力也が竜に近付き、左腕を斬った。
「ガァァァ!」
両腕を斬り落とされた竜が叫ぶ。その時、もう一匹の竜が地面から現れた。
「良し。俺の糧となれ!」
現れた竜は、両腕を無くした竜に喰らいついた。
「貴様!」
喰らいつかれた竜が噛みつき返す。
「おいおい、互いに喰い争い始めたぞ」
これは、さすがに…
賢也と力也は、その光景をただ呆然と見ていた。竜同士の喰い争いが終わった時、邪悪な気が一気に膨れ上がり、賢也達の目の前には、双頭の竜と化した一匹の竜が現れた。
「あれは、結局何なんだ?」
「たぶん、相討ちになって、結果的に二体が一体に纏まったんでしょうね。でも、今までとは段違いに強くなっていると思います」
双頭竜は、顔を見合わせている。あれは、それぞれの頭に意思があるのだろうか?
「「さて、待たせたな。どっちから先に死にたい?」」
右手に蒼い炎の剣、左手に石?の剣を出現させ、二刀流になった双頭竜が動き出す。賢也と力也は、互いに逆方向に走り出すと、双頭竜を挟み込むように同時に突進した。
賢也の攻撃を右手の剣で受け止め、力也の攻撃を左手の剣で受け止める。
「俺の剣を左手一本で受け止めただと」
力也は、自分の剛力を簡単に受け止められ驚いた。剣を受け止めた双頭竜は、炎を吐こうとそれぞれの口を開く。力也は離れ、賢也はしゃがんで炎を躱す。炎を躱された竜は、ジャンプした。
「飛燕」
「雪月風花」
左手が飛燕を力也に、右手が雪月風花を賢也に放つ。やはり、それぞれの頭が意思を持っているのか。力也は、何とか飛燕を躱していた。賢也は、すぐに後ろに下がると、右手は連続で飛燕を放ち始めた。
「ちっ。だが!」
賢也は、次に来る回転斬りに備えるため、無数の飛燕を躱しながら、移動する。双頭竜が着地し、飛び込み回転斬りを放つ瞬間を狙う。
「飛燕・焔雷!」
雷を纏った炎の刃が双頭竜に直撃し、回転斬りを止めた。
「何!」
双頭竜は、雪月風花を止められ驚愕した。自分は力が上がっているのに、何故止められたのかと。
動きが止まった双頭竜を背後から力也が斬りつける。だが、双頭竜の皮膚が硬く、力也の剛力でも、傷を付けることが出来なかった。
「何て硬いんだ。象型並みの硬さだぞ」
左の頭が力也を睨み付け、ニヤリと笑う。剣を振り上げ、力也を斬りつけた。力也は剣を受け止めるが、少しずつ双頭竜の力に押され、膝をつく。
「力も俺より上か」
「力也さん!」
賢也は、焔と雷を解き、重を使い双頭竜を浮かせ、力也の剣の重量を3倍にする。
「「何だ?体が浮いただと?」」
「龍崎!済まない!」
力也は、双頭竜の体が浮き力が抜けた隙をついて、左腕を狙う。双頭竜は、蒼い炎の剣で力也の剣を受け止めようとしたが、賢也の重の力で破壊力の上がった剣を止める事が出来ず、左腕を斬り落とされた。
「「ギャァァァァァァ」」
双頭が叫び声を上げる。力也は剣を切り返し、右腕を狙うが、尻尾による薙ぎ払いを受け、吹き飛ばされてしまった。
「左腕をよくも。許さん。絶対に許さん」
「お前が鈍いからだ。全く、俺に任せておけば良いものを」
「うるさい。お前は俺で、俺はお前なんだ。お前も同じようなものだ」
二つの頭が言い争っている。右の頭が斬られた左腕を拾い上げたかと思うと一呑みで食べた。
「これでいいだろう」
左腕が生えて、元に戻ってしまった。
「嘘だろう。折角、斬り落としてやったのに…」
だが、双頭竜を見ていると少し様子がおかしい。左頭の動きがぎこちなくなったような。
「それより、不味いですね。あいつを斬るには、力也さんだと、剣の重さを3倍にして何とか斬れますが、俺の力では無理です。俺が斬れるようにするには、焔と雷の同時発動が必要ですが、そうすると力也さんに重を掛けられない。一人しか、攻撃が出来ない」
賢也が力也に相談する。力也は、少し考えると、
「俺の埋まってるもう一本の剣をどうにか出来ないか?」
「何か考えがあるんですか?」
「ああ、ちょっとな」
「なら、少し時間を下さい。取って来ます」
「頼む」
力也は双頭竜に賢也は地面に埋まった力也の剣の元にそれぞれ走り出した。




