33.最強タッグバトル 3
女達は賢也達が8体の怪物との戦いの間に逃げてしまっていた。そして、道場の壁を破壊し、中から剣十郎と出雲が出て来た。二人は、かなり苛ついているのが分かる。
「忌々しい能力だ。やっと外に出れたぞ」
「これで中の霧も無くなれば、あいつから先に片付けるとしよう」
剣十郎と出雲が話している。
「誰を片付けるって?」
力也が二人に声をかけた。
「うん?お前は誰だ?」
剣十郎が力也に逆に尋ねた。
「本当に怪物化してしまったのか…。龍崎、やるぞ!」
賢也は、道場の中から出てくる黒い霧が気になったが、それどころではないと判断し、【紅蓮】の力を解くと異空間に収納し、【銀狼】に持ち換える。
「力也さん、殺さないでくださいよ。隙が出来れば、怪物を体から剥がします」
「本当に出来るんだろうな」
「出来る、出来ないじゃない。やるしかないんです!」
出雲が力也に向かって斬りかかってきた。力也は剣を受け止める。
「鋭い!人型はこうも違うのか。殺さずに無力化するのは中々しんどいぞ」
「何をつべこべ言っている。おしゃべりしている暇は無いぞ。ほら!」
出雲の剣から雷が発生する。
「うわっ」
何とか雷が直撃する前に離れる。出雲から離れた力也に、剣十郎が力也に斬りかかってきた。それを賢也が受け止めた。
「2対1じゃないですよ。2対2です」
賢也は、剣十郎に蹴りを入れた。剣十郎は、後ろに飛ばされたが、ダメージ自体はなさそうだ。
「そんな攻撃は効かないぞ」
そんなことは分かっている。だが、剣で斬ってしまっては、怪物から取り戻した時、出血で死んでしまう可能性だってある。
「これなら、本気で戦うしか無いだろう」
剣十郎がニヤリと笑みを浮かべ、
「飛燕!」
「何!飛燕!」
剣十郎の放った飛燕に賢也の飛燕がぶつかる。
「まさか、師匠の技を使えるのか?」
「うん?俺がお前と同じ技が使えて不思議か?それはそうだろう。お前に技を教えたのはこいつだろ。体を乗っ取った時に、戦闘経験なんかは、参考になるからな。この体を使っている間はな」
そう言うと剣十郎は、賢也に向かって突進してきた。あの構えは、氷雨か。
「いくぞ。氷雨!」
賢也は横に回り込み、高速三段突きの氷雨を躱すと、拳に気を込め、顔面を殴り飛ばす。剣十郎は、吹っ飛ぶと、出雲にぶつかった。
「おい、邪魔するな」
「うるさい。あいつ、自分の師匠の体を問答無用で攻撃してくるんだ」
力也は、賢也の攻撃を見て、成る程と思った。剣は防御のみに使用し、あとは、素手で攻撃を叩き込む。素手で攻撃する際は、怪物がいる頭に気を流し込む。
剣十郎と出雲が言い争っている所に、賢也が追い討ちをかけて、剣十郎の顔面を強打する。
「来た!」
あの怪物自身にダメージが入った時の手応えを感じた。
「ぐぅっ」
一瞬だったが、怪物の姿が見えた。
「こいつの攻撃はまずい。受け続けたら、体から追い出されてしまいそうだ」
剣十郎は、逃げ出そうと背中を賢也達に見せた。
「逃がさない!」
賢也が剣十郎を追いかけようと走り出した所を出雲が狙い、斬りつけた。
「お前の相手はこっちだ!」
力也が出雲の剣を受け止め、出雲の顔面を狙って殴りつけるが、出雲はこれを軽々と躱す。
「お前の鈍い攻撃など当たらんよ」
出雲がニヤリと笑うと、力也も笑い返す。
「そんなのは百も承知さ」
出雲は気が付くと、力也の顔が逆さまになっていた。力也はパンチと同時に足払いをしていたのだ。力也の剛力で払われた出雲はその場で一回転していた。空中で何も出来ない所を、力也は思いっきり顔面を殴り飛ばした。出雲は凄い勢いで吹っ飛んでいく。
「一発じゃあ無理か」
力也は出雲を追いかけていった。
賢也は、逃げ出そうとしている剣十郎に重力操作で、その場から動けないようにする。
「この程度!」
剣十郎が剣を振ると、重力操作が解除されたようだ。怪物の能力か?
「だが、追い付いたぞ」
賢也は剣十郎の前に立ちはだかる。
「面倒な奴だ。なら、こいつを喰らえ。風雅満月!」
剣十郎が円を描こうとする所を、賢也が剣で受け止め、技を止める。
「技が使えても、技にキレが無い。お前には使いこなせないのさ」
技を止められ、隙の出来た剣十郎を賢也はまた殴り飛ばす。
「ちっ。ずれたか」
「くそが。ボコボコ、ボコボコ殴りやがって。なら、これなら躱せないだろう」
剣十郎が構える。賢也も合わせて構える。
「「桜華連斬!」」
二人の声が重なり、剣のぶつかり合う音が響く。
最後の八連撃目を繰り出した後に、賢也は蹴りを入れた。
「だから、技にキレが無いんだよ!師匠を愚弄するな!」
「うるさい奴だ。なら、これはどうだ。雪月風花」
何だ?聞いた事が無いぞ?
剣十郎が高く飛び上がる。ジャンプ斬り?違う!突きか!
剣十郎は、賢也の頭上から無数の突きを放ちながら着地する。賢也は、何とかこれを凌ぐが、着地した瞬間に剣十郎がしゃがんだまま、足元を回転斬りしてきた。これを賢也は飛び上がって躱すと、剣十郎が跳ね上がり、高速の斬り下ろしをしてきた。飛び上がっていた賢也は、空中で体を捻り躱すが、これでバランスを崩した所に、剣十郎が最後に桜華連斬を放つ。空中でバランスを崩されながらも賢也は、剣で受けるが、初撃を左腕に受けてしまった。
「ぐっ、今のは?」
「こいつの記憶通りならお前の知らない技だったんだが、まさか凌がれるとは」
四候闘剣術、免許皆伝の俺が知らない技があったのか。継承者のみに伝える秘奥義といった所か。師匠本人が使っていたら、左腕どころの話しじゃなかったな。
「ほら、次行くぞ。雪月風花」
同じ技か。だが。
剣十郎が飛び上がる。
賢也は、前に出て剣十郎の落下点から離れ、背後にまわる。
「その技は、一撃必殺なんだろう。初撃を躱せば、後はどうとでも…」
次の瞬間、剣十郎は賢也の方を向くと同時に、飛燕を連射する。
賢也は、これを何とか躱すが体勢を崩された。剣十郎は、着地すると、賢也に向かって、低いジャンプで縦回転の回転斬りで飛び込んで来た。横に回り躱すと、剣十郎は横回転に切り替える。
「ちぃっ」
賢也は慌てて後ろに跳んだが、剣十郎の剣が腹を掠める。剣十郎は、着地すると十文字に飛燕を飛ばし、それを追いかけるように、突進してくる。賢也は、左腕と腹の痛みを堪えながら、同じように十文字で飛燕を放ち、これを防いだ瞬間に剣十郎が賢也の目の前に現れ、下からの斬り上げを放つ。賢也は、斬り上げを剣で受け止めると、背筋がゾクッとし、すぐに体を捻った。その横を剣十郎の斬り降ろしが空を斬る。体を捻らなければ、斬られていただろう。賢也はすぐに距離を取った。
「これも凌ぐのか」
どうやら雪月風花には攻撃パターンが幾つかあるようだ。近付くのを待っても、すぐに距離を取っても、流れるような連続攻撃が襲ってくる。
「さぁ、次こそ終わりだ。雪月風花」
剣十郎がまた飛び上がる。
どうする?離れるか?待つか?賢也は悩んだ末、その場で待つことにした。玉砕覚悟でカウンターを仕掛ける。
剣十郎が賢也の頭上に迫った時、ただ着地をしただけだった。様子がおかしい。
「馬鹿な…、体が動かない…、まさか、貴様!なぜ出てこれる…」
「賢也!今だ!私を斬れ!」
まさか!
「師匠!今すぐ助けます!」
「いいから早く斬れ!長くはもたない!早く…」
このチャンスを逃してたまるか!
賢也は、右手に全ての力を集中させる。
「師匠、すみません」
剣十郎の顔に手を当て、更に集中する。
「だ、め、だ…。も、う…」
「ふははは。残念だったな!もう奴は出てこれんぞ」
「いや、お前に戻る瞬間を待っていた。師匠の中から出て行きやがれぇ!」
右手に集めていた力を剣十郎の頭部に一気に放った。
「ぐわぁぁっ」
叫び声と共に、剣十郎の中から竜が出ていった。
「はぁっ、はぁっ、やったぞ」
賢也は膝を突くと、剣十郎が賢也の肩を支えた。
「すまん。迷惑をかけたな」
「いえ、師匠が元に戻って良かったです。あとは、出雲さんとあの竜を何とかしないと」
賢也は、力也達の戦いがどうなったのか気にしながら、剣十郎から出て来た竜を睨み付けていた。
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