32.最強タッグバトル 2
女の出現させた怪物8体の最後の1体である象型が一歩歩く度に地響きが起きる。象型が歩いた時、力也が叫び声を上げた。
「あぁぁぁぁっ!」
「どうしたんです?」
力也の叫び声に驚き、賢也は尋ねた。
「あいつ、俺の剣、踏みつけやがった!」
賢也は、地面に刺さっていた場所を見てみると、確かに刺さっていた筈の剣が無い。足が上がった後にも見当たらない。
「龍崎、援護頼む!」
力也が剣の刺さっていた場所、象型に向かって走り出した。
「援護って、しょうがない!飛燕!」
賢也は、象型に向け両手で飛燕を放つ。バチッと飛燕の命中した音がするが、全くの無傷だった。だが、象型の意識は賢也に向けられた。
「飛燕!」
更に飛燕を放ち、走り出した。象型を別の方向へと誘導する。その間に力也は剣の刺さっていた場所に辿り着いた。
「嘘だろ…」
力也は愕然とした。力也の剣は、象型に踏まれ地面に柄の先までしっかりと埋まっており、取り出す事が出来なかった。
「これ、どうすれば取れるんだ?仕方ない。後で考えよう」
力也は、剣の回収を諦め象型へ向かって走り出した。
「これならどうだ!氷牙突・ニ連!」
賢也は、象型に近付き、腹の下に潜り込むと、両手の【風刃】、【雷刃】で腹に連続で強烈な突きを放つ。しかし、象型の分厚い皮膚を貫く事は出来なかった。
「硬いな。氷牙突で穴が空かないとは」
力也が追い付き、象型の足を斬りつけた。
「喰らえ!」
ガチッ。力也の剛力でも象型の分厚い皮膚に傷をつけることが出来ない。
「おいおい、こんなのどうやって斬るんだよ。硬すぎだろ」
「ブォォォォ!」
急に象型が叫び声を上げると、鼻が伸びて賢也を襲う。しかも、かなり速い。賢也は、剣で弾き、攻撃をなんとか凌ぐ。後方では、力也が何度も後ろ足を斬り続けていたため、苛ついたのか、鼻は力也の方に伸びていった。
「うおっ」
力也もこれを剣で弾き防ぐが、鼻を鞭のように叩きつけてくる攻撃を捌けなくなってきて、後退する。賢也も腹の下から出ていた。
「伸びる鼻も厄介ですね」
「あいつの攻撃速度が速くて捌ききれないぞ」
賢也達は、どう戦うか考えていると、象型が後ろ足2本で立ち上がり、賢也達を踏みつけてきた。ドスーン!轟音と共に地震が起こる。あんなの喰らったら一撃で死んでしまう。モーションが大きい分、躱すのは簡単だが…。
「どうする?どうすれば…」
賢也が悩んでいると、再び鼻が伸びてきた。だが、鼻は賢也達の横を通り過ぎていく。
「何だ?わざと外した?」
鼻はそのまま元に戻っていく。鼻先には、ライオン型の死体を掴んで。
「しまった!」
象型は、ライオン型の死体を一口で食べてしまう。賢也は、ハッと周りを見てみると、今までに倒した怪物達の死体が見当たらない。
「あいつ、死体を全部食ったのか!」
賢也が焦るように叫ぶのを見て、力也が尋ねる。
「死体を食ったからって、何を焦っているんだ?」
「知らないんですか?あいつらは、仲間を食うと力の増し方が尋常じゃないんです」
「そうなのか?知らなかった」
その時、象型の姿が消える。
「消えた!」
「上!逃げて!」
賢也が力也を横に飛ばす。賢也もその反動を使って反対側に逃げる。次の瞬間、象型が賢也達の居た場所に落下してきた。その巨体が地面に埋まってしまう。
「おい!今のは」
「豹型の瞬間移動です。食べた怪物の能力を引き継ぐ事もあるんですよ」
象型は埋まって、動けなくなっていた。
「こいつ動けなくなってるぞ」
力也は、象型の背に乗ると剣を突き立てる。
「嘘だろ。こいつ、倒せるのか」
力也はすぐに飛び退き、賢也の元へと向かった。
「どうしたんですか?」
「あいつ、皮膚が分厚いくせに、あのライオン型の能力も使いやがった。剣が全く通じない」
「そんな…」
何か対抗出来る力は無いか?今使える力で効果が期待出来る力は?炎はライオン型の時には通じなかった。後は、雷と風、爪による斬れ味強化だが、斬れ味強化した所で、あの空気の壁と分厚い皮膚は破れないだろう。ならば、雷と風を試すしかない。
「力也さん、離れていてください」
賢也は、【雷刃】に雷を、【風刃】に風を纏わせると、
「これならどうだ!飛燕・雷!、飛燕・旋!」
(うん?やっぱり雷の力が上がっている。風も上がったぞ。何でだ?)
象型に雷の刃、風の刃が命中するが、やはり空気の壁を破る事は出来なかった。
「くそ、これも駄目か。こうなったら、埋まって動けないこいつは放っておいて、皆を助けに…」
動けない象型を無視して、道場に向かおうとした時、背後に違和感を感じ、飛び退いた。賢也が飛び退いた後には、象型の鼻がその場を穿つ。
「こいつ、瞬間移動で穴から抜け出したのか」
「龍崎!お前はあとどんな力が残っているんだ?」
象型の攻撃をいなしながら、力也は尋ねた。
「戦闘に使ってない力は、異空間の穴に物を収納するのと、重力操作ですよ。重力操作は、サポートならともかく、攻撃には向かない能力です。異空間はサポートにも不向きな便利収納スキルといった所です」
「そうか。なぁ、重力操作で俺の剣の重量を倍に出来るか?」
「出来ますけど、俺が重の力を使っている間だけですよ。常時発動というのは無理です」
空を飛ぶ時も、重、旋の力を同時に使い続けている。今回は更に、焔も使って3つを同時に使ったが。うん?待てよ。戦う時は、鋼で武器の強度を上げ、今、更に雷、旋の3つ同時に使ったけど、一本の武器に3つ載せたらどうなるんだ?その前に力也の依頼を聞いてみる。
「やりますよ」
賢也は、力也の持っている剣の重量を倍にした。
「お、ズシッと来るな。でも、まだいける。よし、3倍、いや4倍を頼む」
賢也は、言われた通りに力也の剣の重量を4倍にする。
「さすが、4倍…、すまん。3倍に落としてもらえるか」
3倍に変更した剣をブン、ブンと振りながら、
「よし、これなら振れる」
力也は象型に向かって走りながら叫んだ。
「俺の合図と同時に、10倍にしてくれ!」
力也は、象型の足に斬りかかった。重量の上がった剣は、空気の壁を破り、皮膚に傷を付けた。
「3倍なら、こんなものか」
剣の重量を上げて、単純に破壊力を上げたのか。剛力を持つ力也ならではの戦法だ。
象型は、少しずつとはいえ傷を付けられていく事に腹を立てた。斬りかかってくる力也を鼻で掴み上に放り投げる。
「今だ!10倍にしろ!」
力也の叫び声で狙いを理解したのか、象型が瞬間移動で力也の上に現れた。
「しまった。瞬間移動された!」
あれはまずい。賢也は、瞬時に象型の重力を反転させ、空中に留めた。その間に力也は着地する。
「くそ、いい狙いだと思ったんだがな」
空中に留まっている象型の頭の前に何か靄がかかったような丸い何かが見える。その何かが力也に向かって飛ばされた。
「力也さん!そこから離れて!」
遅かった。力也は直撃を受ける。
「がはっ」
更に象型が追い討ちをかける。消防のホースのように鼻から水を放出してきた。水の勢いは、消防の放水よりも水圧は高い。力也はさっきのダメージで動きが鈍くなっていたが、なんとか横に転がり躱した。力也のいた場所には、水圧で地面が抉れていた。
賢也は、すぐに、力也の元へと駆け付け、起こすと力也を連れ、その場から離れる。
「危なかったですね。大丈夫ですか?」
賢也は象型にかけていた重力操作を解除すると、象型が落下してきた。ズドン!とまた地面に埋まる。
「ダメージで体がまだ思うように動かないが、まだいけるぞ」
「でも、力也さんのおかげであの空気の壁も無理矢理こじ開けられるのが分かりました」
賢也は、ライオン型に弾き飛ばされた【紅蓮】を拾ってきた。
「ちょっと思い付いた事があるんで、試してみます。少し休んでいてください」
「すまん」
【風刃】、【雷刃】を異空間に収納すると、【紅蓮】に焔で炎を纏わせる。
「やっぱり」
炎の力が上がっている。武器と能力の相性があるようだ。
これに更に雷を纏わせてみる。賢也の中で、自分の持つ能力の内、攻撃に適した能力2つを組み合わせてみた。
「出来たぞ」
【紅蓮】の刀身には、炎がガスバーナーのように勢いよく燃え上がり、その周りを雷がバチバチと弾けていた。
「ふぅっ」
大きく息を吐くと、地面に埋まっている象型の元へ走っていく。足元から殺気を感じ、横に飛ぶと、水の刃が地面から噴出してきた。
「当たるかよ!」
象型の元へ着くと、瞬間移動で地面から脱出し、賢也の背後に現れた。だが、これは賢也の想定内だった。
「ワンパターンなんだよ!」
賢也は振り返ると、力也が傷を付けていた前足を横に斬りつけた。
炎と雷で強化された【紅蓮】は、空気の壁を破り、足を切断した。
「やった!まだまだぁ!」
賢也は、そのまま鼻を斬りつけにいくが、瞬間移動で躱されてしまった。
離れた位置に出現した象型は、前足が一本無くなり、体重を支えられず、前に倒れ込む。斬られた足は、切断面から炎が上がっており、少しずつ燃え広がっていた。
賢也は、更に畳み掛けるように象型に向かって突進する。
象型は、それを嫌がるように鼻を伸ばし薙ぎ払ってきた。
ジャンプして、鼻を躱すと鼻を切断した。
「ギャァァァァァァ」
象型が叫び声を上げた。
賢也は、そのまま象型の元へと辿り着き、側面へ回ると、ジャンプした。
「これで終わりだ!鳴神・焔雷!」
賢也の鳴神が、象型の首を斬る。さすがに巨体の首を斬り落とす事は出来なかったが、その場に崩れ落ちた。
「やったぞ」
ダメージが抜け、動けるようになった力也が賢也の元へと駆けて来た。
「本当に凄いな。お前は。こいつを倒すとは」
倒れた象型を見て、力也は賢也に感心した。
「ありがとうございます。でも、今は道場の方が」
「そうだな。よし、女達は俺に任せて、今度こそ行ってこい」
力也が女達の立っていた場所を見るとそこには誰も居なかった。
「あいつら、逃げやがった!くそっ。また探さないといけないじゃないか!」
力也が悔しがっていた時、道場の壁が破壊され、中から黒い霧が溢れだしてきた。
「何だ?あの霧は?中はどうなっているんだ?」
賢也達が道場に向かっていくと、壁に空いた穴から剣十郎と出雲が現れたのだった。
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