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VRMMOのトッププレイヤーはリアルでも最強になりました  作者: 陽月純
第1章 黒死竜討伐編

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29.輝の覚醒と最悪の事態

力也との邂逅をし別れた後、道場の中に戻った賢也は、道場内が騒然としていることに驚いた。


「何を騒いでいるんですか?」


 賢也が皆に問いかけると、


「いや、皆でいつものように三調をしていたら、輝くんが突然大きな声を出して」

(大きな声くらいでこんなに騒ぐのか?)

「そうしたら、輝くんの前に光の球が浮かんでたんですよ。輝くんの大声の後に消えたんですけど」

「え?輝、本当かい?」


 賢也は、輝に問いかけた。光の球といえば、輝が怪物化した時に使っていた能力だ。


「うん。何か体が熱くなって、熱いの嫌だから出ていけって思ったら、目の前に光の球が出て来たの。びっくりして、叫んじゃった」


 ノッコもそうだったが、怪物を無理矢理追い出したら、力が宿主に残るのか?賢也は力を使うのに、最初の頃は怪物の素材に触れていないと使えなかったのに、二人はそれを必要とせず、すぐに使えるみたいだ。


「輝、お前のその力は使い方を間違えたら、人を傷付けてしまう。気を付けるんだよ。しっかりコントロール出来るように、練習しような」

「うん。もう驚かないよ」


 賢也は、輝の頭を撫でる。


「さあ、皆さんも落ち着いてください。輝には、力の制御が出来るように別メニューを増やします。ノッコ、君もね」


 賢也は、全員を落ち着かせると稽古の続きを再開させた。


「まさかとは思うけど、ここにいる全員が力を持ってしまったとかないよな」


 皆が異能を持つとなると、どんな事になるか、下手をするとその力を使って犯罪に手を出す人も出るかもしれない。


「様子見て、事前に怪物を退治するのは考えよう」


 まずは、輝の力を制御出来るようにしないといけない。


「輝、ノッコはこっちに」


 輝とノッコが賢也の元へとやってくる。


「二人にはさっきも言ったけど、力の制御をしっかりやってもらう。そのために、三調の時間を増やすよ。でも、ただやるんじゃない。自分の中にある力をしっかり感じ取るように、気を練るんだ」


 輝とノッコは頷く。


「きっと楽しくないと思うけど、真面目にやること。いいね」


 輝は若干嫌そうな顔をするが、


「力がうまく使えるようになったら、他の稽古もする?」

「そうだな。しっかりコントロール出来るようになったら、パパの稽古の相手をしてもらおうかな」

「やったー。僕、頑張る」


 賢也の相手をさせて貰えるかもというのを聞いた輝は元気を取り戻す。

 二人は三調を始めた。


「よし、その調子だよ。しっかりと自分の中に眠る力と向き合うんだ」


 賢也は、次に優の元へ向かった。


「ごめんな。何をすればいいか分からなかっただろう」


 賢也は、優に説明をすると、優も稽古を始めた。


 輝の覚醒から1週間が経つ。輝は子供だからなのか、力の制御をほぼ出来るようになっていた。


「パパ、ほら、光の剣だよ」


 輝は、怪物が使っていた光の球だけではなく、剣や盾と色々な形に変化させ、操ることが出来るようになっていた。


「凄いな、輝は。力をしっかり使いこなせているじゃないか」


 輝が光の剣で木人を斬ってみる。綺麗な切断面で真っ二つに割れた。


「おぉ!」


 斬った本人が一番驚いている。それを見た賢也は、輝に剣を教えるか悩んだ。教えれば、怪物と戦うと言い出しかねない。


「輝、お前は力を十分に使えるようになったな」


 賢也が輝を誉めると、


「パパ、僕もパパみたいになれる?」


 やっぱりか。賢也は輝の質問の答えを考えた。


「そうだな。きっとなれるよ。でも、それには輝がもっと大きくならないとね。輝はまだこれから、どんどん大きくなっていくから、今から少しずつ強くなろう。パパが良いと言うまでは、力を使ったり、戦おうなんてしたらダメだよ。分かったかい?」

「うん!約束するよ」


 輝は元気よく返事をする。


「よし、じゃあ、素振りからはじめようか」


 賢也は、輝に基本だけ教えて、戦闘はさせないようにする事にした。


 稽古をしていると、賢也の電話が鳴った。電話の相手は、センだった。


「もしもし、セン、どうした?」

「賢也、済まない」

「どうしたんだ一体?」


 センの声は今にも事切れそうな位、弱々しかった。


「師匠が、師匠が、」

「セン、落ち着け。師匠がどうしたんだ?」

「師匠が俺達を庇って、怪物になっちまった」

「何だって!詳しく教えろ!」


 センは、賢也に状況を説明した。センの話しによれば、女が突然現れ、弟子達を襲い始めた所を剣十郎が助けに入り、怪物化させられてしまい、そのまま消えていったという事だった。


「まさか、師匠が…」


 センの話しを聞くと、輝の時と同じだった。あの女が師匠の所まで行ったのか?いや、そんな事はどうだっていい。師匠を取り戻さなければ。


「セン、そっちに何か手掛かりとかないか?何でもいい!」

「手掛かりって言われても、師匠は女の出した黒い穴に入って消えたから、何も…、いや、待て。女が何か言ってたぞ。そうだ。次は忍者だとか言ってた」

「忍者だって?どういう事だ?」

「さあ、俺には分からないさ。大体、今時、忍者なんて」

「いや、居る。出雲さんだ。どういう事だ。俺に関わった人を狙っている?」


 強制的に怪物にされた人間、次に狙われている人間が、自分と関わりのある人間ばかりというのが賢也は気になった。


「セン、ありがとう。すぐに出雲さんに連絡してみる。お前達も気を付けろ。また、襲ってこないとも限らないんだからな」

「ああ。済まない。頼れるのがお前しかいなくて」

「任せろ。必ず師匠は取り戻す!」


 賢也は、センとの電話を切ると、出雲に連絡を取った。


「出雲さん、お久しぶりです。龍崎です」

「龍崎か。久しぶりだな。どうしたんだ?」

「実は、人間を強制的に怪物化する女が出雲さんを狙っている可能性が高いんです」

「どういうことだい?」


 出雲は、賢也の突然の話しに信じられないといった感じで聞き返した。


「俺の師匠が、その女に怪物化させられてしまったんです。その後に次は忍者だと言っていたそうです」

「お前のお師匠さんが。何て言えば。でも、忍者と言っていたからって、俺とは限らないんじゃないか?他にもいるだろう?」

「他の忍者を知らないというのもありますけど、師匠の前に俺の息子も怪物化されたんです。俺と関わりを持った人が狙われている気がするんですよ。出雲さんなら簡単にやられないと思いますけど、十分、気を付けてください」

「分かった。何かあったら連絡するよ。じゃあな」

 出雲との電話が終わると、賢也は力也にも連絡を入れた。

「力也さん、師匠が」

「龍崎か。先生の話は、千志郎から俺も聞いたよ」

「それで、次はランキング2位の出雲さんが狙われている可能性が高いんです。俺は今から出雲さんの所に行こうと思っているんですけど、力也さんも行きますか?」

「行くってどうやって?すぐに行ける距離じゃないだろう。あいつは、東京で活動していただろう。飛行機の手配とか考えたら、間に合わないとおもうが」

「それなら大丈夫です。今からでもすぐに向かえます。もし、行くなら一緒に送ります」

「なら、頼む。俺も先生は気になるし、女も追っている奴か確認したい」


 賢也は力也にライセンスの位置情報を送ってもらうと外に飛び出し、飛び上がっていった。


 賢也は、力也の位置情報のポイントに到着すると降下した。

 力也が空から降りてくる賢也に気付く。


「おいおい、マジかよ」

「力也さん、お待たせしました。行きましょうか」


 賢也が力也に声をかけると、力也は首を横に振った。


「いや、ちょっと待て。何で、空を飛んでるんだ?行くって、俺は飛べないぞ」


 賢也は力也に向けて手を翳すと、力也の体が宙に浮いた。


「これで大丈夫でしょう?」

「うわ。浮いてるぞ。嘘だろ」


 さすがにハンターランキング1位の力也でも、自分が宙に浮くという経験は無かったため、焦っていた。


「大丈夫ですよ。落ちたりしません」


 賢也も合わせて宙に浮く。


「行きますよ!」


 賢也は自分と力也の高度を上げると、全力で出雲の元へと飛んで行った。


 その頃、出雲の住んでいるマンションの前に、異空間の黒い穴が現れた。その中から女が現れる。


「ここか」


 女は自分の力を隠すこともなく、マンションの入り口へと歩いていく。出雲は、女の気配を感じ取っていた。


「この気配は!まさか、龍崎の言った事が本当だったのか」


 この異様な気配は、あの武闘会の時に感じた人型の怪物と同じ。いや、それ以上の力を感じる。


「まずいな。ここだと、被害が大きくなってしまう」


 気配はどんどん近付いてくる。やはり、自分が狙いなのか、出雲は、マンションの窓から外に飛び出した。


「せめて、人気の無いところに」


 出雲は、走りながら人気のない場所を探した。女は、出雲の部屋に着く。


「おや?気配がない。気が付いて逃げたか?」


 女が右手を上げると異空間の入り口が現れる。


「さて、何処に逃げたかな?ふふふ」


 呟きながら、女は異空間の中へと消えていった。


「凄いな」


 力也は、賢也には聞こえない程度の声で呟いた。どうしたら、こんな力が手に入るんだろう?そんな事を考えていた。

 出雲の元へ向かい始めて、1時間以上が経過した。


「この速度ならもう少しで着くんじゃないか?」


 力也は、賢也に尋ねた。


「そうですね。あと、1時間もかからないと思います。うん?出雲さんからメールが入ってきた」


 賢也は、メールを確認する。


「まずい。出雲さんの所に女が現れたそうです。被害が拡大しないように、移動しているって」

「何だって!おい、もっと急げないのか!」


 力也は賢也に問いかけるが、


「これ以上は今の俺には無理です。間に合ってくれ!」


 賢也は、祈りながら出雲の元へと向かっていった。


 出雲は、走りながらなかなか人気の無い場所がなくて、焦っていた。


「くそ!これだから都会は!」


 人の多い通りばかりで焦っていた時、目の前に黒い穴が現れる。中から女が現れた。


「こんにちは。もう鬼ごっこは終わりかな?」

「くそ!こんな所で!」


 出雲は女に対し、構えを取る。周りにいた人達は、何が起きたのか分からず、二人を見ていた。


「逃げないか!あの女は、人型の怪物だ!」


 出雲の叫び声を聞いて悲鳴を上げながら、やっと逃げ始めたが、すぐには全員がその場から離れることが出来なかった。逃げ遅れた人の前に女が向かう。


「狙いは俺だろう!他の人に手を出すな!」


 出雲は、女に向かって走り出す。


「ふふふ。つくづくお前達人間は馬鹿だな。他の人間を庇うから、こういう事になる」


 女は走ってきた出雲の顔を掴み持ち上げた。


「早く逃げろ!くそ、離せ!」


 出雲は、女の手を離そうとするが、微動だにしなかった。


 賢也達は、漸く出雲のマンションへと辿り着いた。


「どこに行ったんだろう」


「あいつ、移動したのなら場所を連絡しろよな」


 賢也はライセンスを確認するが、出雲からのメールは無かった。


「駄目ですね。出雲さんからの連絡は入っていない」


 賢也は焦りながら、周辺に出雲や女の気配が無いか探っていると、


「おい、あっちだ!ライセンスに怪物の襲撃情報があった」


 力也のライセンスに怪物発生時の情報が入っていた。


「そうか。力也さんも元々はこっちで活動していたから」

「行くぞ!急げ!」


 賢也と力也は急いで出雲の元へと走り出した。


「離せぇ!」


 出雲は、引き剥がすのをやめ、苦無を取り出すと女の腕に刺す。ガチンと音が鳴るだけで、苦無は刺さらなかった。


「無駄だよ。お前の力では、私に傷一つ付ける事は出来ないさ。さあ、諦めろ!」


 女の手から黒い霧のようなものが現れた。それは、出雲の頭を包み込んだ。


「何だ。何をした!」


 出雲は、変わらず腕を払おうと必死に足掻くが振り払う事は出来なかった。その時、漸く賢也達がその場に辿り着いた。


「出雲さん!」


 賢也は、出雲を掴んでいる女を蹴り飛ばす。


「大丈夫ですか?」


 女の手が離れ、出雲の顔の周りにあった黒い霧が消えた。


「何なんだ。あの女」


 出雲は頭を押さえながら、賢也に尋ねる。


「あれは、俺の知っている人型じゃない…」


 賢也は女を見て答えた。力也はそれを聞くと、


「そうなのか?人を怪物化させる奴は複数いるのか?出雲、お前は大丈夫なのか?」


 力也が出雲に尋ねた時、女が大声を上げて笑い出した。


「あっはっは。まさか、お前が現れるとは。そこの忍者はもう手遅れさ。ほら、もう始まるよ」


 女が出雲を指差した。賢也と力也は出雲を見ると、出雲は頭を抱えていた。


「何だ?何なんだ?く、頭の中で声が!」


 出雲は、輝の時と同じで頭の中の声に苦しんでいた。


「まずい!」

 賢也は、気を練り、出雲の頭に放とうとするが、出雲は異空間の穴の中に消えてしまった。


「お前か!」


 女の方を向くと、女も異空間の中に入ろうとしていた。


「ふふふ。お前はこんな所に居ていいのか?」

「どういう事だ?」

「お前の家族達は、無事なのかねぇ」


 そういえば、女だけで怪物化してしまった剣十郎の姿が見当たらない。


「師匠は。師匠はどこだ?」

「師匠?ああ、あの男かい?さて、何処と思う?くくくっ」


 女は微笑しながら異空間へと消えていった。


「まずい。あいつの口振りだと、師匠は俺の道場に向かったかもしれない。急いで戻らないと」


 賢也は、慌てて引き返そうとしている所を力也が引き留める。


「待て。俺も一緒に戻るぞ。多分、出雲もそっちに送られる可能性が高い。流石にお前一人で、先生と出雲の二人を相手には無理だろう」

「ありがとうございます。お願いします」


 賢也と力也は、急いで引き返して行った。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


今後もよろしくお願いします。


良ければ、感想や評価もよろしくお願いします。

今後の励みになるので。

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